アカデミー賞を占う賞レースでもある、ゴールデン・グローブ賞。つい先日、各賞の発表行われましたが、今年最多の4部門で授賞したのがこの『スリービルボード』。アカデミー賞の前哨戦とされるトロント国際映画祭でも観客賞を受賞した話題作で、日本では2月1日（木）から全国公開されます。
本作において、主演女優賞（ドラマ部門）を獲得したのが、フランシス・マクドーマンド。そう、映画『ファーゴ』のあの警官役です。
〜STORY〜
最愛の娘が殺されて既に数ヶ月が経過したにもかかわらず、犯人が逮捕される気配がないことに憤るミルドレッドは、無能な警察に抗議するために町はずれに3枚の巨大な広告板を設置する。それを不快に思う警察とミルドレッドの間の諍いが、事態を予想外の方向に向かわせる。
この作品は、脚本、美術などもさることながら、なんと言っても俳優がすばらしいのです。
たとえば、主演のフランシス・マクドーマンド。劇中では、戦闘服であるジャンプスーツに終始身を包み、骨の髄まで頑固な女性を演じています。強さ、しぶとさ、不敵さを放つ一方で、時折見せる殺された娘への愛慕と喪失感。そんな繊細な演技も含めて、その振り幅の大きさに唸らされます。
そのほか、署長役のウディ・ハレルソン、暴力的な巡査役のサム・ロックウェルの演技も実に見事。というか、出演するみながみな、演技というよりも実際にそういう人物がいるかのような感覚にさせてくれます。
娘を殺された殺人事件にまつわる話であり、黒人への差別、性暴力などさまざまなタブーが、ストーリーやだれかの言葉など、さまざまな形で登場します。しかし、随所にユーモアとおかしみが散りばめられ、ただただハードなだけではなく、観るものをしっかりと楽しませてくれます。
今作では、善悪とは簡単に分けられない、人間のさまざまな面を描き分けています。最初はこうだと思ったひとが、ストーリーが進むに連れて新しい一面を見せ、そのひとへの印象が次第に変わっていきます。そんな複雑なキャラクター造詣も凡百の映画とは一線を画すところ。
圧倒的な人間ドラマを見たいのであれば、この作品にかなうものはなかなか見当たりません。2月1日（木）公開です。重厚かつ軽妙な２時間をお楽しみください。
Text_Shinri Kobayashi
『スリー・ビルボード』
スタッフ：監督・脚本・製作：マーティン・マクドナー『セブン・サイコパス』
出演：フランシス・マクドーマンド『ファーゴ』、ウディ・ハレルソン『猿の惑星：聖戦記（グレート・ウォー）』、サム・ロックウェル『コンフェッション』、アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ、ルーカス・ヘッジズ
配給：20世紀フォックス映画
コピーライト：(C)2017 Twentieth Century Fox
2月1日（木） 全国ロードショー
