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『ラ・ラ・ランド』などを抑えてのアカデミー作品賞受賞『ムーンライト』。抑えきれない感情を美しく描き出す。

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『ラ・ラ・ランド』などを抑え、アカデミー作品賞を含む3部門受賞となった『ムーンライト』。この受賞を受け、当初の予定から公開日を繰り上げて、3月31日(金)より全国公開することが決定しました。

〜STORY〜
名前はシャロン、あだ名はリトル。内気な性格で、学校では“オカマ”とからかわれ、いじめっ子たちから標的にされる日々。その言葉の意味すらわからないシャロンにとって、同級生のケヴィンだけが唯一の友達だった。高校生になっても何も変わらない日常の中、ある日の夜、月明かりが輝く浜辺で、シャロンとケヴィンは初めて お互いの心に触れることに…。

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本作品は幼少期、少年期、青年期という3つの時代に分けて主人公を描いていきます。とくに幼少期、少年期はまわりの同級生にいじめられ、ドラッグ中毒の母親に虐げられるという苦しい状況に置かれる一方で、幼少期に出てくるドラッグの元締めや唯一の友達・ケヴィンとのふれあい、少年期でのケヴィンとの心を通い合わせるところなどは非常に心温まるシーンになっています。

印象的だったのは、ドラッグの元締めによる「自分の道は自分で決めろよ」というセリフと、主人公が劇中で繰り返す「おれのことをわかりもしないくせに!」というセリフ。

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社会やまわりのひとたちは(ときに自分自身もですが)、ひとに対して何かしらのラベル付けとカテゴリー分けをして安心しようとします。繊細な差分…でも本人にとっては決してわずかではない違いを乱暴に無視してしまいます。そんな状況が積もり積もっていくと、社会の主流とはちがう自分を出すことは非常に難しく、ときに恐怖のように感じてしまうはず。そんな見えない暴力のようなものにあがらう勇気をくれる言葉が前者のセリフ、そして当事者の心の叫びが後者のセリフなんだろうと感じた次第です。こんなところはまさに、今の時代を描いているといえるでしょう。

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そのほか、評価の高い繊細かつ色彩豊かな詩的な映像はもちろん、ドラッグの元締めを演じてアカデミー助演男優賞を獲得したマハーシャラ・アリとヤク中の母を演じるナオミ・ハリスの演技力、緊迫感を常に画面にはりつけたカメラワークなども秀逸です。

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ちなみにこの映画のエグゼクティブプロデューサーにはブラッド・ピットの名が。映画界では有名ですが、これまでにも『それでも夜は明ける』(アカデミー作品賞受賞)『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(アカデミー作品賞ノミネート)などのプロデューサーとして名を連ねるなど、ブラッド・ピットのプロデュース能力は非常に卓越しています。そんなところからもこの作品の意義と魅力が伺いしれるというもの。

この映像の美しさを、ぜひ映画館で堪能してください。

Text_Shinri Kobayashi


『ムーンライト』
3月31日(金)、TOHOシネマズシャンテ他にて全国公開。
配給:ファントム・フィルム
© 2016 A24 Distribution, LLC
moonlight-movie.jp

監督・脚本:バリー・ジェンキンス
エグゼクティブプロデューサー:ブラッド・ピット
キャスト:トレバンテ・ローズ、アッシュトン・サンダース、アレックス・ヒバート、マハーシャラ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホーランド
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ/朝日新聞社
配給:ファントム・フィルム
【2016/アメリカ/ 111 分/シネマスコープ/5.1ch/R15+】

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