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フイナムテレビ ドラマのものさし

2014 JAN~MAR VOL.02

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2014 JAN~MAR VOL.02
前回、事前情報と勘でアタリをつけピックアップしたドラマが軒並み放送を開始した。もちろん、それ以外も初回はほぼすべて録画して見まくったのだが、結果的に採り上げたドラマに関してはハズレなし。レコメンドしたはいいが、実際に見たら「違った!」という事態にならずに正直ホッとしている。こればかりは見てみないことにはわからないわけで、そこがまた連続ドラマの面白さでもある。ちなみにここで言うアタリ・ハズレは視聴率とはあまり関係がない。あくまでも内容重視。
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公式HPより
『なぞの転校生』テレビ東京 1~2話 テレビ東京 金曜24:12~
映画『Love Letter』『リリイ・シュシュのすべて』などで知られる岩井俊二監督が企画プロデュースと脚本を、映画『夜のピクニック』の長澤雅彦監督が演出を手掛けるということで映画ファンからも注目が集まった本作。深夜枠のSFいうと、一歩間違えばチープなB級テイストになる可能性もあるが、フタを開けてみれば、まさしく岩井俊二の良さと長澤雅彦の良さの両方が掛け合わされた、みずみずしい青春SFドラマになっていた。
岩井俊二作品は独特のトーンの映像で知られ、特にやわらかい光の処理の仕方に定評がある。これは、岩井作品を初期から手掛けてきた撮影監督・篠田昇(2004年他界)の功績によるところが大きいのだが、本作ではその篠田の弟子筋にあたる神戸千木(かんべちぎ)が撮影を担当。AKB48の『桜の栞』(演出は岩井俊二)のMVやドキュメント映画『DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう?』でも、篠田昇直系というべき美麗な映像が印象的だった。
というように、思わず撮影の話から入りたくなるほど、冒頭から他のドラマとは明らかに一線を画す独特のトーンの映像が広がり、そこにショパンの『雨だれ』が流れるという、いかにも岩井俊二!な世界。「映画みたいな映像」だから良い、というわけではなく、映像自体が何かを雄弁に語るドラマを久しぶりに見た、という話。
今回はじめて連続ドラマを手掛ける岩井俊二の実験性と、映画『青空のゆくえ』や『夜のピクニック』で少年少女の群像劇を撮った経験をもつ長澤雅彦のバランスはかなり良いのではないか。
2話でついに登場したなぞの転校生・山沢典夫を演じる本郷奏多の透明感のある浮世離れぶりが見事だし、1975年に放送されたNHK「少年ドラマシリーズ」版で主人公・岩田広一を演じた高野浩幸が中村蒼演じる岩田の父親役として登場するのもオリジナル版のファンへの目配せを感じる。
そして前回、注目すべしと書いた桜井美南はいまのところまだ大きな見せ場はないものの、2話の花屋で山沢典夫とはじめて出会うシーンでさわやかな色気を覗かせるあたり、今後に期待がもてるというもの(ちなみにオープニング曲でもなかなかの美声を響かせている)。
伝説化しているドラマのアップデート版としては大成功といえるのではないか。
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公式HPより
『失恋ショコラティエ』1~2話 フジテレビ 月曜21:00~
2010年のドラマ版と2011年の映画版『モテキ』(大根仁監督)が恋愛物のリアリティを更新して以来、「そんな会話する?」というようなウソ臭いドラマや映画は急速に過去のものになっていった。とはいえ、生々しい現実的な設定や会話を採用するだけではあからさま過ぎるし、場合によってはゲンナリもする。それをどうコーティングして「恋愛の夢(あるいは悪夢)」を提示してくれるのかがカギになる。本作は片思いをこじらせて妄想恋愛へと突き進む男を『モテキ』以降のリアリティで描こうとしている。
「さあ、それじゃあ、ドロドロに汚れましょうか」
パリで修行してショコラティエとなった主人公の爽太(松本潤)は、こうモノローグで宣言する。ドロドロとはいえ、そこはチョコレートの海なので、甘美でほろ苦い。いわば甘い痛みの中へズブズブにはまり込んでいくのだが、ある種の男たちの中には、いい女に振り回されたいという欲求の強いひとがいる。
嘘か本気か分からない思わせぶりな態度に一喜一憂しながらも、それが仕事(爽太の場合チョコレートづくり)への情熱を増幅させていく。金持ちになりたいとか女にモテたいという漠然とした夢ではなく、「あのひとによろこんでもらいたい」というモチベーションのみで突き進めるひとはむしろ幸せだ。「あなたに褒められたくて」とは高倉健の著書のタイトルだが、爽太は紗絵子(石原さとみ)を笑顔にしたい一心でチョコづくりに励む。仕事というものの本質が、案外そこにあったりするのかもしれない。不特定多数に向けるのではなく、誰かのためにする何か。
紗絵子が爽太の学校の先輩だったという設定が思いのほか効いていて、手の届かないミューズを思いながらもつい身近な女に行ってしまうという構図には、夢と生活、アート(チョコづくり)と恋(生き方)の両立は可能かという問いが見え隠れする。
ふだん甘いものに関心のない男(自分のことです)ですら、見終ると無性にチョコレートが食べたくなるのも紗絵子の魔法なのか。 
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公式HPより
『明日、ママがいない』1話  日本テレビ 水曜22:00~
1話の放送直後、赤ちゃんポストを有する病院から「人権侵害」として局側に放送中止を求める物言いがついたことで思わぬ話題になってしまったドラマ。確かに「児童養護施設あたりからクレームが来なければいいが」と思いながら見ていたのだが、あんのじょう、という事態になってしまった。
が、ちょっと冷静に見れば、冒頭のホラー調の展開からして、かなり戯画化された寓話性の高い物語だということはすぐに分かるわけで、同じ枠で放送されていた『Mother』『Woman』のような現実に即したシリアスな路線でないことは一目瞭然なのだが。前回書いたように、親に捨てられた子どもたちが、「捨てられたほうも黙っちゃいないぜ、というタフな生き方」を見せるのがこのドラマのキモなのだからして、現実と乖離しているとか人権侵害といった指摘は当たらないのではないかというのが個人的な意見だ。
物語の設定から『家なき子』リターンズか!?などと前回も書いたのだが、なんと1話のエンドクレジットに「脚本監修・野島伸司」の文字が。そう、『家なき子』を手掛けた張本人が関わっていたのだ。公式サイトで事前に公表されていなかったこともあり、これには驚いた(実はネット上では噂されていたのだが)。あくまでも脚本は松田沙也で、野島は監修ということらしいが、かなり内容にコミットしているのではないかと思われる。
というのも、赤ちゃんポストに預けられていたから「ポスト」、家が貧乏だから「ボンビ」、母親が鈍器で男を殴ったから「ドンキ」というあだ名で子どもたちが呼び合う様子を見て、「昔の野島伸司ドラマみたい」とリアルタイムで放送を見ながらツイートしてしまったくらい、90年代の野島ドラマのフレイバーが濃厚だったからだ。もちろん、盛大なリバイバルというわけではなく、この設定なのに意外にも笑いの要素があったり、野島ドラマにあった、やたらとナイーブな「思いつめた感」のようなものはなく、サバサバとした印象(悪く言えば軽い)を受けるあたりが松田沙也テイストなのだろうか。
グループホーム「コガモの家」で、施設長を演じる三上博史が朝食を前に子どもたちに向かって「泣いてみろ。泣いたやつから食っていい」と鬼のようなことを言い放ち、子どもたちがうまく泣けずにいる中、芦田愛菜演じる「ポスト」が見事に泣いて見せる、というシーンは、明らかに現実の子役の世界を戯画化している。あるいは、理想的な里親に選んでもらえるかどうかを子どもたちが心配するくだりは、さながら「たくさんのオーディションの中からいかにおいしい仕事をゲットできるか」という過酷な子役の世界のメタファーだろう。
こうしたことからも分かるように、このドラマは「親に捨てられ施設で暮らす子どもたちの話」という設定を借りつつ、描こうとしているのは、ダメなオトナたちがつくったダメな社会を子どもたちがいかに自力でサヴァイヴしていくのか、という話なのだ。まさか放送中止などということはないと信じたいが、物言いがついたことで無難な脚本に書き直したりせずに初志貫徹してもらいたいと願うばかり。
そういえば、知人に言われて気がついたのだが、本作のキービジュアル(芦田愛菜たちが毛布にくるまっている写真)は、イギリスのロックバンド、The Whoのドキュメント映画『The Kids Are Alright』の引用だ。まさにこのタイトルが劇中の子どもたちへのメッセージになっているあたりがニクい。
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公式HPより
『紙の月』NHK 1~3話 火曜22時~
若い男に貢ぐために勤務先の銀行の金・1億円を着服する主婦を、いつまでも透明感を失わない原田知世46歳がどう演じるのか。本作への興味はほぼその一点にのみ集約されていたのだが、昼ドラ風の設定にも関わらず、生々しい性欲の話にならずに済んでいるのは(それが見たいというひとには物足りないだろうが)、やはり原田知世のたたずまいがあってこそだろう。
梨花(原田)の夫・正文(光石研)は、妻を傷つけることをポロっと口にするが、おそらく本人に自覚はない。暴力をふるうわけでも、浮気をしているわけでもない、ある意味ごく普通の商社マンなのだが(どうでもいいけど、こういう場合の夫は大抵商社マンだな)、梨花の中にオリのように少しずつ積み重なっていく疎外感が、自分を褒め、認めてくれた若い男・光太(満島真之介)へと向かわせる。
普段は見向きもしない高級化粧品を買おうとするとき、手持ちのお金が財布になかったため、顧客から預かった現金を「あとで返せばいいよね」と手をつけてしまうことから始まる転落。確かに、お金には持ち主の名前が書いてあるわけではいから、ひとから預かったお金を使っても、後で自分のお金で補てんすれば一見問題はないように思えるが、ひとのお金に手をつけ、それで何事もなかったという事実は、そのひとの何かを狂わせるのだろう。怖い。実に怖い。
「ちょっと無神経だけどごく普通の夫がいて、なんで若い男のために他人の金を1億も横領するのか理解できない」という声もあるだろう。それはごく自然な感情だと思うが、梨花は若い男にのめり込んだのでも、大金に目が眩んだのでもなく、「ここではないどこか」へ行くことを欲したのではないだろうか。いわば、遠い国への旅を夢見るように。

「ここではないどこか」への旅のチケットが、梨花にとってお金であり恋愛だったのかもしれない。
前回採り上げたドラマの中では、『ロストデイズ』(フジテレビ 土曜23:10~)が、やや展開がゆるく、いまひとつといった印象。演出は『古畑任三郎』『マルモのおきて』などを手掛けた河野圭太なのだが、サスペンスの演出は不得意なのか。山小屋に泊まる大学のテニスサークルの男女をめぐるサスペンスなのだが、ホラー映画ならば開始10分で殺されるような軽~いノリのリア充男女の恋のかけひきが描かれるのみで、2話の時点でメンバーのうちの誰も死んでいない。人気番組『テラスハウス』みたいなルームシェアドラマを見せられているような気分なのだが、屈託がなさそうに思えた面々の裏の顔が徐々に表れ出したので、これからどう物語が転がるか、もう少し様子を見よう。
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公式HPより
その代わりといっては何だが、期待せずに見た『私の嫌いな探偵』(テレビ朝日 金曜23:15~)が思いのほか楽しかった。原作は『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉による「烏賊川市(いかがわし)シリーズ」なのだが、安定感のある二枚目芝居も堂にいった玉木宏に剛力彩芽が「鳥みたいな顔」といじられたり、『33分探偵』『コドモ警察』を手掛けた福田雄一の脚本がふざけまくっていて痛快だ。これまで剛力ちゃんの代表作はランチパックだと思っていたが、これはハマり役ではなかろうか。
『ダークシステム 恋の王座決定戦』(TBS 月曜24:28~)については初回放送がギリギリ間に合わず、次回あらためて書くことにする。次回は2週間後くらいに更新予定。
では、いいドラマを。

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