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フイナムテレビ ドラマのものさし

2014 JAN~MAR VOL.01

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2014 JAN~MAR VOL.01
通常、テレビドラマは3カ月に一度入れ替わるが、新ドラマの初回を見逃すと、次回以降見る気が失せるのはよくある話。ということで、2014年1月スタートの新ドラマの中から、「とりあえず初回だけでも予約録画しておいたほうがいいドラマ」をセレクトしておく。もちろん、リアルタイムで見ることが可能であればなるべく録画せずに見るべし。録画が溜まるとだんだん見るのが億劫になるものだ。
フタを開けてみないと何とも言えないのがドラマの面白さであり怖さでもあるのだが、事前情報や過去のデータなどから読み解くと、こんな感じになる。
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公式HPより
『なぞの転校生』テレビ東京 1/10スタート 金曜24:12~
原作は1967年発表の眉村卓によるSFジュブナイル小説。1975年、NHKがウイークデイの夕方放送していた帯番組「少年ドラマシリーズ」枠でドラマ化され人気を博した作品なのだが、そんな昔の話をなぜ今? と、まさにクラスに突然なぞの転校生がやってきたかのごとく不思議がっていたら、企画プロデュースと脚本を映画監督の岩井俊二が手掛けると知り、ははーんと腑に落ちた。
岩井俊二はまさにこのドラマをリアルタイムで見ている世代だし、しかも、「高度に進んだ文明を築いたがゆえに核戦争を引き起こし別次元の世界から避難してきた民」という設定は、福島の原発事故とそこから避難した人たちをどうしたって想起する。岩井は宮城県の出身で、NHKの東日本大震災復興支援ソング『花は咲く』の作詞も手掛けている。当然、今この話をやる上で、核に対する危惧を込めるであろうことは想像に難くない。
もちろん原作小説もNHKのドラマも、あからさまな反核思想などではなく、ある日突然やってきた異能者が日常に揺さぶりをかけるという、基本的にはSFやサスペンスのかたちを取りつつ、行き過ぎた現代文明に警鐘を鳴らすというメッセージが背後に置かれている。実は、まさに今描くべきテーマが内包された話だといえる。
主人公・岩田広一に中村蒼、なぞの転校生・山沢典夫に本郷奏多という若いけれどキャリアのある2人を配しているが、注目は岩田と幼なじみの香川みどりを演じる桜井美南(みなみ)。これがドラマ初出演となる桜井は、鈴木杏、北乃きい、南沢奈央を輩出したキットカット受験生応援キャラクターの5代目にあたる16歳(ちなみに4代目は2013年注目を集めた刈谷友衣子)。
しかも岩井俊二といえば、自身の映画で奥菜惠や蒼井優をブレイクさせた「女の子を見る目が確かな」監督。予告動画以外、動いている姿をまともに見たことがないうちからこんなことを言うのもナンだが、おそらく逸材に違いない。
とはいえ、岩井はプロデュースと脚本のみで、演出は『夜のピクニック』などで知られる映画監督の長澤雅彦が手掛ける。これまで大根仁監督の『モテキ』、園子温監督の『みんな!エスパーだよ!』などを放映してきたテレ東深夜の「ドラマ24」枠で岩井俊二&長澤雅彦とくれば映画好きも必見だ。
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公式HPより
『失恋ショコラティエ』 フジテレビ 1/13スタート 月曜21:00~
いわゆる月9。と言っても、最近の月9はかつてのトレンディドラマの流れを汲む王道の恋愛ドラマを放映する枠では既になくなっていて、『鍵のかかった部屋』『ビブリア古書堂の事件手帖』などライトなミステリィ物も多く、バラエティに富んでいる。
2012年夏、この枠で放映された『リッチマン、プアウーマン』(小栗旬、石原さとみ出演)も一見王道の恋愛物のようでいて、「就職が決まらない高学歴女子とIT企業を起ち上げ成功を手にした若き経営者との格差恋愛」を題材にした、恋愛+起業物というあたらしい手触りのドラマだった。Facebookの創業者、マーク・ザッカーバーグをモデルにした映画『ソーシャル・ネットワーク』に韓流ドラマをプラスしたような、と言ってもいい。
とりわけ、一筋縄ではいかない安達奈緒子の脚本が秀逸だったのが、『失恋ショコラティエ』は、その安達が脚本を手掛けていることからも要注目。原作は累計100万部を記録する水城せとなの人気コミックだが、こういう場合、何かと原作ファンからは厳しい声が上がるものと想像される。むしろ原作を未読のひとのほうがすんなり入れるかもしれない。
ある意味ストーカー的な妄想恋愛に邁進する主人公・爽太を嵐の松本潤がどう体現するのか。『リッチマン~』では子犬のような愛らしさ全開だった石原さとみが爽太を思わせぶりに振り回す「性格悪子ちゃん」のサエコをどうリアルに演じるのか。20代男子の4割が恋愛経験ナシといわれる現代において、あからさまにベタな恋愛ドラマをつくるとは思えず、かなりヒネリや毒のある展開になるものと思われる。
原作では爽太のセフレとして描かれる加藤えれな役が水原希子というのもグッとくるし、爽太の妹・まつり役に有村架純が配されているあたりも抜かりがない。
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公式HPより
『明日、ママがいない』 日本テレビ 1/15スタート 水曜22:00~
日テレ水曜10時といえば、芦田愛菜が注目されるきっかけとなった『Mother』や満島ひかりがシングルマザーを演じた『Woman』(いずれも脚本は坂元裕二)など、母と子の葛藤の物語に象徴されるヘビーながらも見応えのあるドラマを放映してきた枠だ。この枠に、ふたたび芦田愛菜が降臨。そして、大河ドラマ『八重の桜』のチビ八重で人気を集め、『Woman』では満島ひかりの娘を演じた鈴木梨央も加わり、何やらまたしても見る者の涙を枯らそうという魂胆らしい。
親の虐待などによって児童養護施設に預けられた子どもたちがサヴァイヴしていく話と知り、安達祐実の『家なき子』リターンズか!? と思ったのだが、予告動画を見たら、「親なき子たちの物語」というフレーズを使っていて納得。施設の子どもたちが「ポスト」だの「ボンビ」だのとあだ名で呼び合うのは、親からもらったものは名前も含めてすべて捨てるためだというからすさまじい。
「親に虐待されてかわいそう」なんていう良識ある視聴者のうわべだけの感傷を吹っ飛ばし、捨てられたほうだって黙っちゃいないぜ、というタフな生き方を見せてもらいたい。はたして「同情するなら金をくれ」に匹敵するキラーフレーズは出るのだろうか。
今のところ公式サイトに脚本家のクレジットはない。普通に考えれば『Mother』『Woman』の坂元裕二なのだろうが、どうやら新海誠のアニメーションの脚本に参加している松田沙也の線が濃厚。未知数のひとだけに期待と不安が入り混じった状態で放映を待つしかなさそうだ。
他には、TBS深夜の「ドラマNEO」枠で放映される『ダークシステム 恋の王座決定戦』(TBS 1/20スタート 月曜24:28~)も、まさにダークホースとして押さえておきたい。何しろ、自主映画でありながら異例の高評価を得た幸修司の映画『ダークシステム』に惚れ込んだ映画監督の犬童一心(『ジョゼと虎と魚たち』『のぼうの城』)が演出を買って出たというのだ。
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公式HPより
好きな女の子を恋敵に奪われた男が手づくりマシンを駆使して反撃に出る...という恋愛バトルコメディだが、『失恋ショコラティエ』がフランスで修行してショコラティエになってあのコを見返してやるんだ!というシャレオツなリベンジであるのに対し、『ダークシステム』の主人公・加賀美はあくまで負のエネルギーをマシンに搭載してライバルに暑苦しく立ち向かう。
加賀美を演じるのは、これがドラマ単独初主演のHey! Say! JUMP・八乙女光。自分勝手で小心者というイケてない主人公をどう演じるのか見ものだが、加賀美が惚れ込むヒロイン・白石ユリを昨年のミスiDグランプリに輝いた玉城ティナが演じるのも大注目。すでにモデルとして各方面から引っ張りだこだが、ファムファタル(運命の女)と言うべき役柄をドラマ初出演の玉城がどう魅せるのか。低予算の自主映画だからこそ生まれる馬鹿馬鹿しい情熱のようなものが映画版の魅力だったが、ドラマ版にもその熱量が受け継がれていることを期待したい。
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公式HPより
他にも、瀬戸康史主演、石橋杏奈、小島藤子、三吉彩花など注目の若手女優が揃い、1日1話、10日間を10話で描くというミステリー『ロストデイズ』(フジテレビ 1/11スタート 土曜23:10~)あたりも初回は押さえておきたい。角田光代の小説のドラマ化で原田知世が主演を務める『紙の月』(NHK 1/7スタート 火曜22時~)も、全5話と短いが、巨額横領して男に貢ぐ女を原田知世がどう演じるのか興味をそそられる。
ということで、1月スタートのドラマをピックアップしてみたが、岩井俊二、長澤雅彦、犬童一心と、複数の映画監督が連続ドラマに進出しているのも今期の特徴のひとつ。ドラマ好きの間ではここしばらく「脚本家は誰か」でドラマを見る傾向があったが、それに加えて今度は「演出は誰か」に注目が集まるとすれば、さらに見方は多角的になる。
『医龍4』がないじゃないか!とか、向井理と綾野剛という当代人気イケメン共演の『S 最後の警官』はどうした!とか、各所からツッコミが聞こえてくるが、まあ気のせいだろう。人気シリーズや人気俳優のドラマは放っておいても見るひとは見るでしょ。というのがこのコーナーのスタンスだ。
次回は、新ドラマの初回が出そろったタイミングで更新する予定なので、ぜひそれまでにおのおの課題(?)をクリアしておいてほしい。
では、いいドラマを。

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