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映画『友罪』と対峙した26歳の夏帆の挑戦。

映画『友罪』と対峙した26歳の夏帆の挑戦。

心を許した友人が17年前、連続児童殺害事件を犯した元・少年Aと知った時、一体どうするのか。衝撃的な題材でベストセラーを記録した薬丸岳原作の『友罪』を『64-ロクヨン-』などの瀬々敬久監督が映画化。本作で、瑛太が演じる主人公の鈴木にとって特別な存在となるヒロインの美代子を演じた夏帆さん。この作品へかけた想いや、26歳となった現在、映画、舞台、ドラマと様々なステージを踏み、女優として次々と新しい表情をみせていく彼女の本音を聞きました。

  • Photo_Keta Tamamura
  • Text_Kana Umehara
  • Styling_Natsuko Kaneko
  • Hair & Make_Sayuri Yamashita
  • Edit_Shinri Kobayashi
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夏帆

1991年6月30日生まれ、東京都出身。04年女優デビュー。07年公開初主演映画『天然コケッコー』での透明感溢れるヒロイン役が高く評価され、日本アカデミー賞新人俳優賞はじめ、数々の映画新人賞に輝き、以降もドラマ、舞台と活躍の場を広げている。主な出演作に映画『東京少女』『うた魂(たま)♪』『砂時計』(共に08)、『任侠ヘルパー』(12)、『箱入り息子の恋』『劇場版タイムスクープハンター』(共に13)、『海街diary』(15)、『ピンクとグレー』『高台家の人々』(共に16)、『22年目の告白-私が殺人犯です-』『予兆 散歩する侵略者 劇場版』(共に17)、『伊藤くんA to E』 (18)などがある。

STORY

ジャーナリストの夢に破れて町工場で働き始める益田(生田斗真)と、同じタイミングで工場勤務につく鈴木(瑛太)。鈴木は周囲との交流を避け、過去を語りたがらない影のある人物だが、同い年の二人は次第に打ち解け心を通わせていく。だが、あるきっかけと行動で、益田は鈴木が17年前の連続児童殺傷事件の犯人ではないかと疑い始める――。

瀬々監督は以前から一緒にお仕事してみたかった。

許されない罪を犯した元・少年Aと彼をめぐる人々を描いた骨太のヒューマンサスペンス。人間の深い闇や本質に迫る『64-ロクヨン-』の瀬々敬久監督だからこそ描けた作品だと思いました。

夏帆瀬々監督は以前から一緒にお仕事してみたいと思っていた監督のお一人でした。まず作品が素晴らしいですし、それに過去、瀬々組に参加したスタッフやキャストの方々が口々に瀬々組は良いとおっしゃっていて。どうしてみなさん、そこまで監督の現場に惚れ込むのだろうととても興味がありました。

夏帆さんが演じられたのは、かつて14歳で児童殺傷事件を起こした元少年犯の鈴木と出会う、ひとりの女性・美代子。彼女もまた昔の恋人に無理強いされAVに出てしまったという、拭い去りたい過去を持っています。

夏帆瀬々組に参加できると率直にうれしかった気持ちがある反面、台本を読んでこの役を私ができるのかと、とても悩んだのも事実です。性的な場面とどうしても切り離せない役柄でありますし、どうしても最初は、同じ女性として、この美代子という人物であるとか、彼女の生き方みたいなところが理解できない、共感したくないという反発もありました。

人間は誰しもそういう類の弱さを抱えている。

美代子は過去の影に怯えながら、かといってそれに立ち向かうことも逃げ出すこともできず、罪の呪縛にがんじがらめになっているように見えます。

夏帆流されるままに取り返しのつかないところまでいってしまった美代子の選択がひとつひとつそれは違うでしょうと同じ女性の視点からみると言いたくなってしまうんです。ただ、そこで嫌悪を抱くというのは、やはり自分の中にもそういう部分があるからなんだろうなと気づきました。自分では認めたくないけれど、人間は誰しもそういう類の弱さを抱えている。この作品全体に流れていることですが、そういう人間の本質を問いただすような役柄のひとつだからこそ、すごく悩んで、考えながら取り組みました。

現場に入ってからも苦労はされたんですか?

夏帆そうですね。ただ、現場は噂通りすごく熱量が高くて。瀬々監督の作品に懸ける想いだとか、真摯に向き合って戦っている姿に圧倒されました。そうすると自ずと周りのスタッフたちも一緒に戦おう、という空気になる。私も、そこにすごくいい影響をもらって役にたちむかえたと思っています。

元少年A、鈴木を演じた瑛太さんとの撮影はいかがでした?

夏帆役柄的に瑛太さんとご一緒するシーンが多かったんですが、瑛太さんは現場ではもうあの役そのものという感じでした。カメラが回ってないときも、どこか近づきがたい、映画そのままの独特の空気感をまとっていて、話しかけにくい感じ(笑)。でも、それが私にとっても役の気持ちのままでいられたので、正直に言うとありがたかったです。

完成された作品をご覧になった感想は?

夏帆まだ1度しか観られてないのでなかなか客観的にはなれないんです。もちろんこの作品はフィクションなんですが、工場の油の匂いだとか、夏の湿度みたいなものまで感じられるような、すごくリアルなドキュメンタリーのような作品だと思いました。美代子をはじめ、登場人物たちはそれぞれお互いの心を許し、距離を縮めていきます…でも、そのままのおだやかな関係でもいられない。彼らの出した答えに正解にあたるものはない、というのがすごく難しいなと思いました。観る人によって捉え方が違うと思いますし、本当にそれぞれの解釈でいいんだと思います。

そんなに器用なタイプでもないんです。

瀬々監督もそうですが、最近の夏帆さんは黒沢清監督や是枝裕和監督、園子温監督など日本を代表する監督たちと次々と良質の作品を生み出しています。出演する作品選びにこだわりはあるのでしょうか?

夏帆そうなんです。この1、2年は本当にいい出会いをたくさんいただいて自分でも驚いているくらいです。とくにこの監督だから出たい、出たくないというのはないですが、でも、けっこう決めるときは勘で決めているようなところはあります。脚本なり、企画書を読んで、あ、これは面白そうとか、やりたいと思うと即決する、みたいな。

即決が多いんですか?

夏帆うーん、そうでもないです。今回の『友罪』のように悩みに悩んで、でも、憧れの監督の作品だから、やってみようと決意することもあります。

即決できるときと、できないとき、どういう違いがあるのでしょう?

夏帆私は、基本的にすごく慎重なんです。なんでもポジティブにチャレンジしたいというよりは、自分がその役に対して責任がとれるのか、とれないのかがすごく重要で。そしてそんなに器用なタイプでもないんです。何かに挑戦して習得するだとか、理解して進むのにすごく時間がかかる。それでも、やってみたいと思えるものに応えていくという感じでしょうか。その答えがすぐでるときと、熟考しないとゴーが出せないときの差があるという感じです。

必ず、自分の中で一旦、消化させてから前に進みたい?

夏帆そうかもしれません。良くも悪くも正直なんです。納得しないでやってみても、もしかしたらできるかもしれない。でも、中途半端なままでやってるのは嫌だなっていうのが、絶対に現場で顔にでてしまう(笑)。女優なんですけど、嘘はつけないんです。

中途半端な26歳という年齢。

でも、そうやってひとつひとつのことに真面目に取り組む夏帆さんだからこそ、映画にしろ、舞台にしろ、TVドラマにしろ必要とされるんだと思います。

夏帆10代からこのお仕事をはじめて、20代の前半から演じることの幅を広げることをすごく大事に活動してきたんです。自分がかかわった作品が、その次につながっていくような仕事ですから。それが今、26歳になって少しずつ積み重ねてきたことの結果みたいなものを感じられるようになってきたように思います。あ、もちろん逆のことを感じることもあるんですけどね…。あれ? これだけやってきたのに、なんでこんなこともできないんだろう…、みたいに落ち込むことだって、もちろんあります。

どういう時に積み重ねた重さみたいなものを感じますか?

夏帆やはり、いろいろな監督の現場を知った経験値みたいなものが大きいと思います。一つ前の現場でのできなくて悔しかった経験が、次の現場ではできるようになっているとか。“あ、私成長しているじゃん!”って驚きます。

夏帆さんのキャリアを振り返ると、もう26歳というより、まだ26歳なんだという印象もあります。

夏帆今は、なかなか難しい年齢だと思います。学生役は到底できないし、新入社員でもないし、母親役にもまだ早いかなって(笑)。それでも、今の自分にできることは何かを考えて、これからも進んでいきたいです。まあ、でも自分で計画して、その通りに進められることでもないので、今更ながらこれは大変な仕事を選んじゃったなって思います(笑)。でも、そういう予期せぬ出会いも楽しみながら、覚悟を持って前を向いていけたらなと、今は思ってます。

映画『友罪』

監督・脚本:瀬々敬久(『64-ロクヨン-前編/後編』)
原作:「友罪」薬丸岳(集英社文庫刊)
出演:生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、佐藤浩市
配給:ギャガ
コピーライト:(c)薬丸 岳/集英社 (c)2018映画「友罪」製作委員会
公式サイト:gaga.ne.jp/yuzai/
2018年5月25日(金) 全国ロードショー

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