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FEATURE|GQ meets UNITED ARROWS GQと日本屈指のセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」の邂逅。

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最初は受賞することに戸惑いがあった。

今回の受賞に至った経緯と率直な感想をお聞かせください。

小木今年の1月にミラノファッションウィークに行ったときに、GQに30年以上勤めるジム・ムーアさんから話を受けたのが最初です。そこで、「いままでアメリカをベースに、ベスト・ニュー・メンズウエア・デザイナーという企画をやってきたんだけど、10年を機にその舞台を世界に広げたい。そこでユナイテッドアローズを選びたいんだ」と言われました。正直最初は、自分たちはデザイナーではないので、嬉しいけど難しいと返事しました。でも、ジムさんが東京に何度も来てくれて、鴨志田さんのブランドや自分たちのお店、そこでつくっているオリジナル商品を見て、「すべてを評価してユナイテッドアローズを選びたいんだ」と熱く語って頂いて。それで鴨志田さんとも相談して、引き受けることになりました。

たしかにデザイナーではなくリテーラーという立場での受賞となると違和感を覚えるかもしれないですね。鴨志田さんはご自身の〈Camoshita UNITED ARROWS〉のデザインをされているということもあって、より受賞の喜びも一入なのでは?

鴨志田あまりないですね。ないというか僕自身デザイナーっていう自覚はなくて、あくまでリテーラーで小売のプロではあるけど、ものづくりのプロとは立ち位置が違いますから。〈Camoshita UNITED ARROWS〉は総合的なプロデュースをしていく中で関わっているので、そういう点ではデザイナーとして本当に受けていいのかなっていう。クリエイションに命をかけてやってらっしゃる方々に対してちょっと気が引ける部分が正直ありました。ただジムの熱い思いも理解できるし、これをきっかけに「ユナイテッドアローズ」がより世界と繋がっていくことを考えると、その期待に応えられるように頑張っていかないと、と捉えています。

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なるほど。実際、受賞を引き受けるまでに、お二人の間でどんな会話をされていたのでしょうか?

小木「ユナイテッドアローズ」を知ってくださっているアメリカの方達も少なからずいるんですけど、本格的に取り上げてもらえる初めてのチャンスだったので、ここは社としても前に進むべきだと。それも、僕みたいな存在がいきなり「ユナイテッドアローズ」として行くのではなく、鴨志田さんプラス自分みたいな、いまのアメリカに響く可能性のあるテイストとセットで「ユナイテッドアローズ」、というものを紹介するべきじゃないかって話になって。鴨志田さんが持つ部分と自分の持つ部分をミックスしてお互い協力してやっていきましょうとなりました。

たしかに〈ギャップ〉とのカプセルコレクションでは、お二人のテイストがいいバランスでプロダクトに落とし込まれているように感じました。

小木鴨志田さんはもう鴨志田さんのテイストを存分に発揮して、僕は鴨志田さんのスタイルにこういうのを合わせたらおもしろいだろうなっていうものをつくりました。「UNITED ARROWS & SONS」オリジナルの刺し子デニムもそのひとつです。グラフィックモノは「ユナイテッドアローズ」ではあまり展開がないということもあり、「UNITED ARROWS & SONS」で今年の春夏にコラボーションして、僕もすごく好きなアーティストのバロン・ボン・ファンシーに文字を描いてもらって、それをパーカーとTシャツに落とし込みました。バロン・ボン・ファンシーは、ユニークで少し皮肉めいた感じが得意の人なんですけど、彼が最初に出してきたアイデアは〈ギャップ〉が1969年創業なんで、“69”っていうグラフィックを出してきて、おもしろいって思ったんですけど、案の定〈ギャップ〉からNGが出てしまいました(笑)。

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まったく違う土壌でのものづくり。

リテーラーであるということが逆に功を奏したというか、鴨志田さんと小木さんのように、ひとつのカラーだけでなくいろんな要素をミックスして提案できるというのはおもしろいですね。

鴨志田世界に比べて日本のファッションというのは、ミックスっていうものが“らしさ”のひとつと言えます。ドレスダウンしたりカジュアルアップしたりっていうところにおもしろさを感じてもらう。それを素直にやればいいかなと。丁度自分のドレススタイルと小木のストリートテイストのスタイルが合えばそんな感じになるのかなって。自分は自分なりのモノをつくりつつ、自分にはできないグラフィックといったようなストリートテイストな部分を小木に任せればスタイリングとしておもしろいなと。ただ、それ以前に〈ギャップ〉の店頭で僕たちのアイテムが置かれることを考えると、どこに焦点を合わせたらいいのかがすごく難しかったですね。〈ギャップ〉と「ユナイテッドアローズ」では客層がまったく違うので。ドレスに寄りすぎずカジュアルに、足元はスニーカーに合わせられるアイテムにするなど、いろいろ考えました。あまりニッチでこだわったモノをつくっても違うし、かといって平凡なモノをつくっても意味がないし。どのくらいのテイストに落とし込めばいいのかが肝でした。

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実際、〈ギャップ〉のエッセンスはどれくらい入ってるんですか?

鴨志田何も入れてません(笑)

小木そうなんです。ジムさんからも、〈ギャップ〉ということを気にせず全力でやってくれって言われて。最初は結構尖ったものを出していたんですけど、やっぱりアメリカにはウケないからって修正が入ったものもありましたね(笑)。でも今回のカプセルコレクションの生産背景はすべて〈ギャップ〉だったんですけど、やっぱり上手いというか、このクオリティでこの価格帯は流石だなって感じました。と同時に、日本の素材の良さやていねいなモノづくりの在り方について改めて気づかされた部分もありますね。

こうして海外に向けて何かを発信することは、自身を客観的に振り返るいい機会になりますよね。

鴨志田そうですね。あらためて「ユナイテッドアローズ」のアイデンティティって何なのかを考えました。どう伝えたらいいか、アイテムを通して表現したらいいのか。いい勉強になりましたね。

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これから日本のファッションが目指すところ。

今回の受賞、カプセルコレクションの発表を経て感じたことや伝えたいことは何でしょうか?

小木メンズファッション誌の老舗であり、バイブル的な存在だったGQに評価されたのはすごく自分たちにとって喜ばしいことですね。〈ギャップ〉とカプセルコレクションも感慨深いというか。自分は99年に新宿のFlagsっていうビルに「ユナイテッドアローズ」ができて、そこのオープニングスタッフとして働いていたんですけど、〈ギャップ〉が下の階にあって、ちょうどその頃に〈ギャップ〉のモノと「ユナイテッドアローズ」のアイテムをミックスしながら着てましたね。今回展開しているカプセルコレクションの中にテーラードジャケットがあるんですけど、〈ギャップ〉からはウチじゃ売れないからやめてほしいと言われ続けて。でもやっぱりテーラードジャケットは「ユナイテッドアローズ」のアイデンティティなので絶対やってほしいと言い続けて。結果、初日にアメリカのオンラインストアでバルカラーコートが完売してたり、ジャケットも結構売れていたりとか。形は変わってもジャケットやコートを買ってくれる人がいるってことは、まだまだファッションも可能性があるなと感じました。そこをどう攻めてくのかが今後の課題かなと。

なるほど。ジムさんから最初にお話があったとき、返答に困ったとありますが、逆になぜジムさんは「ユナイテッドアローズ」を選んだのだと思いますか?

小木ジムさんが働いていた80年代、90年代のGQってまだちゃんとジャケットスタイルが中心だったと思います。でもいまのGQってその感じが少なくなってきていますよね。ジムさんは鴨志田さんや自分、お店を見て、ジャケットを違う形で楽しく伝えられる現代の手段のひとつかもしれないと感じでくれたのかなって思います。

鴨志田いまアメリカのファッション業界が低迷してる中、そこに刺激になる要素を取り入れたいっていう想いが強かったんじゃないでしょうか。70年代、80年代ってアメリカントラッドの移り変わりが過渡期だったんですよ。そこに〈ラルフローレン〉が登場して、マンネリ化していたアメリカのメンズファッションにヨーロピアンテイストを加えて変えました。ブルックススタイルだったところに幅広のネクタイにバギーのパンツを合わせたら一気に花開いたみたいな。そのときに、ちょうどGQがそういう要素を取り入れたメンズファッションの特集をやっていて。いちばんかっこいい時代でした。70年代から80年代のGQで打ち出していたような少し先を行くアドバンスな男のかっこよさ、それが薄れているいまのアメリカに欲しいエッセンスのひとつとして、「ユナイテッドアローズ」をピックアップしてくれたのではと思います。カプセルコレクションもそうです。〈ギャップ〉っていうベクトルが違うところとコラボレーションすることによって、違うもの同士が混ざり合って新しいDNAをつくるみたいな。新しいモノが生まれてどんどん進化していくべきだと思います。そのきっかけをつくってくれたGQに感謝ですね。

ユナイテッドアローズ 原宿本店
住所:東京都渋谷区神宮前3-28-1 B1F-3F
電話:03-3479-8180
www.united-arrows.co.jp

Gapフラッグシップ原宿
住所:東京都渋谷区神宮前1-14-27
電話:03-5786-9200
www.gap.co.jp

「ユナイテッドアローズ」のオフィシャルサイトでも鴨志田さんと小木さんのインタビュー記事を掲載しています。フイナムとは異なる視点の内容になっているので、合わせてチェックしてみてください。
taisetsu.united-arrows.co.jp

鴨志田 康人(かもした やすと)
UNITED ARROWS Creative Director
1957年生まれ。
1981年 多摩美術大学 立体科を卒業後、セレクトショップの草分けBEAMS入社。 販売からスタートし、メンズクロージングの企画・バイイングを担当。
1989年 ユナイテッドアローズ入社。創業に参画し、メンズクロージングの企画・バイイング・店内意匠などクリエーション全般を広く担う。
2004年 UNITED ARROWS事業 クリエイティブ・ディレクターに就任。
2013年 自身の名を冠したレーベル「Camoshita UNITED ARROWS」が、アジア初となる「ピッティ・イマージネ・ウオモ賞」(*)を受賞。
(*)ピッティ・イマージネ協会がブランドの真の実力が正当に評価し、長年イタリア国内と世界的なファッション業界全体において重要な役割を担ってきた会社や人々に贈られる賞。

小木 POGGY 基史(こぎ ポギー もとふみ)
UNITED ARROWS & SONS Director
1976年生まれ。
1997年 ユナイテッドアローズ入社。販売の仕事を経て、プレスになる。
2006年 Liqour, woman&tearsをオープン。
2010年 新コンセプトブランドであるUNITED ARROWS & SONSを立ち上げ、ディレクターに就任。バイヤーとしても世界中を回る一方で、海外スナップでそのスタイルが世界中から注目を集める。
2015年 Style.comにて「メンズウェアで最も影響力のある25人」に選出。
2016年 ウェブマガジンHYPEBEASTが選ぶ100人にも選ばれる。

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