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BIG YANK The Third Edition 5人の好事家デザイナーがアレンジした、それぞれのビッグヤンク。 Case5_藤原 裕

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ラストを飾るのは、世界有数のヴィンテージショップと言っても過言ではない「ベルベルジン(BerBerJin)」のディレクターを務める藤原裕さん。昨年にはヴィンテージのリーバイス501に特化した書籍『THE 501®XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』の監修者のひとりを務め、話題となった。現在は「ベルベルジン」の店頭に立つ傍ら、ヴィンテージデニムアドバイザーとしても様々な企業とコミュニケーションを取っている。今回の〈ビッグヤンク〉の企画は、藤原さんのキャラクターのひとつであるT-Back仕様のデニムジャケットへのオマージュとなっている。

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—藤原さんと言えば、T-Back仕様の506XXが代名詞になっていますが、そもそもこれはどういうものなんでしょうか?

藤原:あっ、すいません。T-Backじゃなくてセパレートと呼んでもらっていいですか(笑)。誤解されることがすごく多いんですよ。T-Back好きの藤原さんって、わからない人から聞くとただの変態みたいでしょ(笑)。

—失礼しました(笑)。ではセパレートとはなんでしょうか?

藤原:両耳のセルビッジデニムは、生地幅が決まっていて、いろいろな諸説はありますが、‘40〜’50年代ごろは、27インチ前後だったようです。そうなるとデニムは縦で使われますから、背面を接がないと大きなサイズは作れません。個人的な見解ですが、戦前から40年代までは46以上、50年代は48以上がセパレート仕様になっています。生産性を求めて、どこかのタイミングで生地の幅を広げたのかもしれませんね。表記は506XXEEになります。自分はセパレートと呼んでいたのですが、ある雑誌の編集者が、背面がT字になっていることから、T-Backと謳ったんですよ。

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—なるほど。非常に数は少ないそうですが、507XXにもあるんですよね?

藤原:ありますね。セカンドから横に接ぎが入るので、サイズはおそらく52以上。作られている期間もファーストと比べると短いですし、46がXXLと考えると、52以上はとんでもないビッグサイズですから、本当に極少です。ある意味、ファーストよりも珍しいと言えるでしょう。

—ここ近年のセパレート仕様の盛り上がりはすごいですね。

藤原:昔はサイズが大きいから敬遠されていて、少し安く出ることもありましたが、今では逆に高くなっていますよね。ファッション的な流れも大きいかと思います。ビッグサイズで着ると悩みの種だった着丈の短さが解消されますし、丸みのあるシルエットになっておもしろいんですよ。

—今回の〈ビッグヤンク〉ではその要素を落とし込んでいるわけですが、今までにデザインの経験はあるんですか?

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藤原:コラボレーションとして「ユナイテッドアローズ」さんとリーバイス606などを作らせてもらったことはあるんですが、自分で一から作るのは初めてですね。いい経験になりました

—今回のデザインのポイントはなんですか?

藤原:一番大事にしたのが、ヴィンテージには存在しないものにするということ。うちはヴィンテージショップで、オリジナルを探すのが使命ですから、絶対にリプロダクトをしてはいけないと思ったんです。もちろんレアな〈ビッグヤンク〉を売った経験もありますし、アーカイブはいろいろと知っているのですが、そういうことではないかなと。

—だからデニムを使ったんですね。

藤原:そうですね。実は〈リーバイス〉のショートホーンでもセパレートの仕様が存在して。ライトオンスのデニムを使っているから当たり前なんですが。そこにヒントを得つつも、〈ビッグヤンク〉のアイコン的な存在になっているガチャポケやストームカフス、メタルボタンなどを取り込みました。サイズ感もヴィンテージを模倣するのではなく、少しタイトでほどよい着丈にしています。赤と黒のメタルボタンを交互に付けているのも、ポイントです。

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—そもそも藤原さんが〈ビッグヤンク〉を知ったきっかけはなんだったんですか?

藤原:今回デザインソースになったガチャポケで、うちの代表の山田が着ていたんです。かれこそ17年くらい前でしょうか。なんだこのおもしろいポケットは!というのが第一印象で、その後に柏の古着屋で1万円ちょっとで見つけたのはいい思い出です(笑)。当時は知る人ぞ知るワークウエアメーカーだったので、今みたいに高値ではなかったんです。逆に今はワークシャツだと一番高いかもしれませんね。ガチャポケで本当に珍しい生地や仕様であれば、50万を超えても不思議ではありませんから。

—それはすごいですね。

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藤原:だから今回は、そういったスペシャルなものを真似するのではなく、もっと気軽で普通に着られるものを作りたかったんです。タックインしないでも着られる長さですし、色落ちは〈リーバイス〉のデニムファミリーのような濃淡が強くない雰囲気になると思います。ヴィンテージのデニムジャケットでお馴染みのイエローステッチを使っているので、ジャケットとシャツの中間的なポジションでご愛用頂けると思います。ヨークはもちろんヴィンテージで人気の高い広い幅の仕様にしていますから、古着好きの人にも共感してもらえると嬉しいですね。

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SEPARATE SHIRT ¥26,000+TAX