メンズウェアに惹かれる理由。
ーアイテムは全体的にトラディショナルな佇まいですね。
デボラ:きれいなシャツに、仕立てのしっかりとしたジャケットを羽織るスタイルがフランスの伝統で、その伝統に対して敬意を払っているんです。
ーどうしてトラディショナルなスタイルに惹かれるのですか?
デボラ:父からの影響が強いかもしれません。私の父はワードローブを頻繁に入れ替えることがなく、ひとつのアイテムを長く愛用する人だったんです。そういったスタイルに惹かれて、「長く使い続けられるものはどういったものか?」ということを考えた結果、いまの表現方法に至りました。
ー〈デ・ボン・ファクチュール〉のアイテムはベーシックなのに、クリーンで洗練されたニュアンスを感じます。そういった要素をどのようにしてデザインで表現しているのですか?
デボラ:私にとって、エレガンス、モダン、といったニュアンスはとても大事なファクターなんです。ふたつの要素のバランスを、生地選びやパターンでコントロールして、あるときはエレガントなニュアンスを濃くしたり、こんどはモダンに寄せてみたり、またはその中間にしてみたりして表現しています。
ー女性デザイナーとしてメンズウェアのみを作り続けるのも、先程お話ししていたお父様からの影響が大きいのでしょうか?
デボラ:はっきりとした理由は自分でもよくわからないんですが、もしかしたら育ってきた環境による影響が大きいかもしれません。私にはふたりの兄がいて、父や兄のファッションを見て男性的な感覚が養われたのかもしれないですね。でも理由云々は関係なく、とにかくメンズのウェアに惹かれるんです。これはもう感覚的なものですね。自分でもメンズウェアを着ることが多いですし。
ーメンズウェアの中でもとくに好きなアイテムはなんですか?
デボラ:メンズのニットが大好きです。女性でも簡単に着こなしやすいですし。
ーでは、ブランドの中でも特にオススメはニットですか?
デボラ:すべてのアイテムがオススメですよ(笑)。でも、ニットはアイコニックなアイテムかもしれないですね。肩にボタンのついたセーラーニットは、ブランドスタートからずっと作り続けているアイテムなので。
日本はモダンとクラシックが共存している。
ー日本のファッションに対してどのような印象をお持ちですか?
デボラ:とてもダイナミックですね。いろんなテイストのお店が点在していて、フランスでは見ることができない洗練されたお店が多いのも魅力的だと思います。街を歩いていても、様々な装いを見ることができて、とても刺激を受けていますよ。
ー文化に対して感じることはありますか?
デボラ:日本の人間国宝や、重要無形文化財などに興味があります。「技術を持つ」というところに、私のブランドのアイデンティティーと通じるものを感じるんです。それと、日本は伝統的なものと現代的なものがうまく共存していて、そこにもシンパシーを感じます。例えば京都のような伝統的な街があれば、東京のように最先端の都市もある。昔のものを大切にすることと、新しく進化していくことを同時に行なっていて、そこに魅力を感じます。
ー今回インスタレーションを行なった「BLOOM&BRANCH」も、モダンな洋服を取り揃えていながら、伝統的な技術が詰まった生活雑貨や道具が置いてあります。
デボラ:職人気質なものをセレクトして、良いものを紹介していると思います。快適さを追求したものや、ナチュラルなものが多くて、素敵なお店ですよね。
ー最後に、今後のブランドの展望についてどんなことを考えているか教えてください。
デボラ:いまは限られた商品ラインナップのコレクションですが、将来的にはシューズやカットソーなどもリリースして、トータルで提案するコレクションを作っていきたいと考えています。もちろんそこには“クラフトマンシップ”というキーワードは欠かせないので、自分で納得できる工場を地道に探すつもりです。あとは、ウィメンズの洋服も展開したいと思っているんです。でも、メンズ、ウィメンズという区切りは意識せず、ユニセックスで着用できるアイテムを作りたいと思っています。そのような自由にファッションを楽しめる洋服をデザインして、いろんな人に愛されるブランドへ成長できれば最高ですね。パリにお店を出そうとも考えているので、それが実現したらぜひ遊びに来てください!
デボラ・ニューバーグ
〈デ・ボン・ファクチュール(DE BONNE FACTURE)〉デザイナー。1983年生まれ、パリ出身。〈エルメス〉にてシルクアクセサリー部門のプロダクトマネージャーを務め、アートディレクターとアトリエのあいだに立ち、すばらしいクラフトマンシップを体験。アトリエの生産者たちを世間に紹介したいという思いを強め、2013年より自身のブランドをスタートさせる。
BLOOM&BRANCH AOYAMA
住所:東京都港区南青山5-10-5 第1九曜ビル101
電話:03-6892-2014
営業:11:00~20:00