FEATURE |
フイナムテレビ ドラマのものさし SEASON6 PROLOGUE

logo
01_kokoro.jpg
画像は公式HPより引用
『心がポキッとね』 フジテレビ 水曜22時~ 4月8日スタート
脚本・岡田惠和、メイン演出・宮本理江子といえば、小泉今日子と中井貴一の『最後から二番目の恋』および『続・最後から二番目の恋』のコンビであるからして、「間違いなくこの店、何食べてもウマいでしょ」と約束されたようなものだ。

阿部サダヲ演じるエリートサラリーマンの春太はオーバーワークから心を病んでしまい、ホームレスに転落したところを雑貨店店主・心(藤木直人)に拾われ住み込みで働くことになる。ところが心の現在の彼女は、春太の元嫁、静(山口智子)だった! そこに直情型でストーカー体質の女・みやこ(水原希子)も絡んできて…というのが物語の導入らしい。

どうしたって『最後から二番目~』や同じ岡田脚本の『さよなら私』あたりを連想するが、春太が心を病んで社会の前線から離脱した男だというのが本作のポイントだろう。しかもそれを演じるのが阿部サダヲなのだ。フジで阿部といえば、大ヒットした『マルモのおきて』があるが、あの主人公とはまるで異なる心を病んだ男を阿部がどう演じるか。そして、主要登場人物がすべて「めんどくさいひとたち」であることから、見る者にうっとうしいと思わせずにいかに感情移入させるのかがカギになるのだろう。主題歌は星野源の新曲『SUN』。食材は揃った。あとはそれをどうおいしく料理してくれるか、だ。
02_dr.jpg
画像は公式HPより引用
『Dr.倫太郎』 日本テレビ 水曜22時~ 4月15日スタート
『リーガル・ハイ』で金に目がない弁護士を演じた堺雅人が精神科医に。脚本は『ドクターX 外科医・大門未知子』『花子とアン』とヒット作を連発する中園ミホ。脇を固めるのは蒼井優、吉瀬美智子、内田有紀、遠藤憲一、松重豊、石橋蓮司、高畑淳子、小日向文世など錚々たるメンツ。さらに『Mother』『Woman』のリリカルかつエモーショナルな映像で知られる水田伸生が演出となれば、これは見ておくべきだろう。

心を病んだひとたちの話に耳を傾け、寄り添うことで精神を解きほぐしていく精神科医・倫太郎は、しかし自身の恋愛に関しては消極的だ。「恋愛とは一過性の精神疾患のような状態である」が持論の倫太郎は、ある日、大学理事長との会食の席で新橋のナンバー1芸者・夢乃(蒼井優)と出会う…らしい(公式サイトによれば)。「心を病んだひとの話」という意味では、放送時間が真裏の『心がポキッとね』とカブるが、こちらはそれを治癒していく側の物語であり、精神科医が患者の心に寄り添うことで自らの心のなかにあるこわばりをもほぐしていくことになる(はずだ)。

たとえ盤石の布陣で固めても、フタを開けてみなければ分からないのがドラマだが、堺が『リーガル・ハイ』におけるクレイジーかつ魅力的な弁護士・古美門に匹敵するキャラクターを創造できるか否か、あるいは全く異なるベクトルの人物像に舵を切るのか、まずは初回をチェックしたい。
03_syoku.jpg
画像は公式HPより引用
『食の軍師』 TOKYO MX 水曜 23時30分~
『孤独のグルメ』の原作者として知られる久住昌之とマンガ家・泉晴紀によるコンビ「泉昌之」といえば、トレンチコートを着たハードボイルド気取りの男が「駅弁の幕内弁当をどの順番で食べるべきか」逡巡する情けなくもおかしい短編マンガ『夜行』(1981年発表、単行本『かっこいいスキヤキ』に収録)が有名だが、そのトレンチ男が本郷播(ほんごうばん)の名で登場するのが『週刊漫画ゴラク』で2009年から連載中の『食の軍師』だ。「何をどの順番で注文し、食べるべきか」と苦悶する主人公の姿は、『夜行』となんら変わりがないのだが、「ハードボイルド」や「通」に憧れながら一向になりきれない男の悲哀は、作者らの重ねた歳月とともによりコクのある味わいとなって醸し出されている。

すでに4月1日にドラマの初回は放送済みだが、『深夜食堂』『孤独のグルメ』以降の深夜枠における「食」ものの乱立に、正直「またか」と文字通り食傷気味だったことを「すみませんでした!」と、本郷の脳内に存在する「蜀=食の軍師」たる諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)に謝りたい。面白いです、これ。

脚本・田口佳宏、演出・宝来忠昭は『孤独のグルメ』『めしばな刑事 タチバナ』コンビなのだが、ドラマ版『孤独のグルメ』では井之頭五郎が飲食店に行くまでの前半のドラマ部分が冗漫に感じられたのに対し、『食の軍師』では食のシーンに大半が割かれ、本郷が脳内で軍師からの指令を得ながら、おのれの兵法によって食の陣立てをしていくバカバカしさが、ライバル力石(本郷が勝手にライバル視している通でスマートな客)との対決で炸裂する。本郷を演じる津田寛治のハードボイルドになりきれない軽さと卑近なエロさがいい。やはり『孤独のグルメ』の井之頭五郎=松重豊は歳を取り過ぎていたのではないかと、これを見ていると実感する。

※三つとも放送日がすべて水曜日なのは偶然です。