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Vol.1 英国のストリートが生んだ、モッズカルチャー。永遠のファッションアイコン、モッズパーカ

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ブリティッシュの薫りを色濃く放ち、モッズファッションの代名詞的存在でもある〈フレッドペリー〉。定番としてリリースされる「モッズパーカ」は、長年多くの人々に愛され続けてきた、モッズカルチャーのアイコニックなアイテムだ。現代のリアルなスタイルを探りつつ、モッズという英国のユースカルチャーについて今一度深く掘り下げてみたい。第一回は、モッズとは何か? そのスタイルはどんなものだったのか? をテーマに、音楽を中心とした当時のユースカルチャー、その生き方や哲学などを交えながらそのスタイルの本質へと迫る。

Photo_Kengo Shimizu[STUH]
Text_Shuhei Tohyama
Edit_Shinri Kobayashi

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1963年当時のモッズファッション 写真:Newscom/アフロ

モッズカルチャーの誕生とそのバックグラウンド

ジョン・レノンなど著名なロックスターのスーツを仕立てたテーラーにいた人物と、昨年ロンドンで話をする機会に恵まれた。「シックスティーズのサブカルチャーはぼくの人生を決めてしまったよ。あの時代は毎日がジェットコースターのように刺激的だったんだ」

スウィンギングロンドンと呼ばれた1960年代は、保守的だった英国のイメージをひっくりかえすように、モッズ、ロッカーズなど次々に新しいストリート文化が花開いた時代。なかでもモッズはジャズやR&B、ダンスとファッションが結びついた最初のユースカルチャー。そのムーブメントは、現在のコレクションブランドが最新コレクションのテーマに取り上げるほど現代にも刺激を与え続けている。

モッズの芽生えは1958年頃。彼らがめざしたのはテディ・ボーイのアンチテーゼだった。エドワード調の長い上着とは正反対のアイビーリーグ風細身スーツ。リーゼントの代わりに髪を前に流したモッズヘア。若者のファッションがメジャーでなかった時代に、稼いだ金のすべてを服装に費して存在感を主張した彼らの着こなしは、すごく目立ったと想像できるだろう。

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ザ・フー『レディ ステディ ゴー』出演 写真:Rex Features/アフロ

1960年代のロンドンは雨後のタケノコのようにクラブやバンドが出現。TV番組『レディ ステディ ゴー』ではフェイス(顔役の意味。モッズのファッションリーダー)の着こなしやニューステップを放映したためにモッズの人気は全英に広がった。

しかしモッズはコマーシャリズムを嫌う側面がある。なにしろ彼らはビートルズやローリング・ストーンズをR&Bのコピーバンドと考えていたほど。彼らが認めたのは初期のザ・フーやスモール・フェイセス。モッズはクールな外観でキメた反面、自分たちが愛したR&Bのオリジナルにこだわるという純粋さも内に秘めていたのである。

そんなモッズが生んだファッション遺産はスーツや髪型以外にもたくさん存在する。フレッドペリーのポロシャツ、細いブラックニットタイ、ポークパイハット、デザートブーツ、パーマネントプレス加工のジーンズなど。なかでもフレッドペリーのポロシャツは、スポーツウエアとファッションの境界を初めて打ち破る画期的なアイテムとなった。このポロシャツの機能性は、夜通しお洒落なスーツで踊りまくるモッズにとって不可欠なものとなったのである。

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