憧れ続けたアメリカ。
—秋山さんにとっての、アメリカは?
秋山:俺はアメリカにいったのが実はすごく遅くて。中島さんと同じように、お店出すときに初めて行ったから。頭でっかちなアメリカで、イメージも偏ってて。だからこそ、ずーっと好きだったみたいなところがあったのかもしれない。
—たとえばどれぐらいな偏り方ですか?
秋山:もうその情報源は俺にとっては中島さんと内田さんでしかないから、そのスタイルをみて、こんなにいいんだ!と思って、ただそこに憧れてずっと思い描いてて、みたいな。行ってみたらそのときは古着やりたいとかではなかったから、雑貨とか見たらより面白かったし、だいぶモノ的には少なくなったのかもしれないけど、でもやっぱりまだまだアメリカってすごいなって。
—内田さんと中島さんがおっしゃってるアメリカってどういう感じなんですか?
中島:どういう感じっていうかまぁ、古着が好きだったからね。俺はもうそこしかなかったからね。
内田: 秋山さんはすごい古いお客さんですから。
秋山:だって僕、めちゃくちゃ買ってましたもん。
内田: ね。いつもいいの着てるし、いいの買ってくし。
秋山:給料もボーナスも全部古着につぎ込んでましたから。
—へぇ~!
内田: 安くていい古着が買えた時代を知ってるお客さん、ですよね。
中島:俺もアッキー(秋山さん)とは似てる部分がすごいあるんだけどさ。ウッチーはそうやって早い時期から仕事でアメリカに行ってたわけだけど、でも俺は別に高校生くらいからアメリカの情報って雑誌でも見られたし、意外とアメリカに行かなくてもアメリカを垣間見られてたよね。
秋山:たしかにたしかに。
中島:アメリカ古着もあったし、アメリカンカジュアル、アメリカの新品も入ってきてたりたしさ。
秋山:80年代のテレビドラマもいっぱいあったし。
中島:そうね!
秋山:「白バイ野郎ジョン&パンチ」とか。
中島:「ハンナ・バーベラ」のアニメなんて俺らが子供のころからやってたじゃん。そういった意味では、行かなくてもなんとなくは知ってる。すでにそういう世代ではありますよね。古着好きで古着屋まわってると、そうやってお店のひとたちから話も聞けたし。
パンチパーマからの、卒業。
内田: あのときさ、やっちん今はもう忘れちゃってるかもしれないけど、何をイメージしてたの?10代の頃。
秋山:ははは。
内田: えれぇかっこよかったんすよ。あれは何なんだろうね。
中島:なんなんだろうね。
内田:やっちんはね、すごかったですよ。
秋山:いやすっげぇお洒落でした。
—へぇ~!
内田:すっごいジャストだったよね。
中島:ああ、教科書?教科書はね、やっぱ『ワイルドワン』だったりしたな。
内田: ああそうなんだね。
—『ワイルドワン』ってなんですか?
中島:マーロン・ブランドの映画。
—映画!
中島:ジェームス・ディーンの『理由なき反抗』とかもそうだよ。やっぱり古いアメリカ映画だったかな。
—その古いアメリカ映画自体は、どこで知るんですか?
中島:本を見たりとか。アメリカの不良がまたかっこよくみえちゃってね。日本の不良をさんざんみてきて、もういいやって。中3くらいから、こいつらとはもうちょっと違う世界に行く!ってね。こっちはもういいです、パンチパーマの先輩とは遊びません、と。
—ははは!
中島:ジェームス・ディーンだったり、スカジャンとかライダースだったりね。デニムはいてエンジニアブーツ、スタッツベルトしてさ。
内田:マーロン・ブランドが「ワイルドワン」で、エンジニアブーツにダブルエックスにライダースっていうのを映画で初めて着て。
中島:いわばコスチュームなんですよね。
内田:いまだにそのスタイルって、ある程度根付いてる部分あるとおもうんですよ。シブカジブームってのはどっちかっていうと『アウトサイダー』のマット・ディロンからきてたり。
中島:ああそうだねあっちだね!『ワンダラーズ』とかね!
内田:『ヤングガン』とかでウエスタン入り、アメカジ入り、革入り…ちょっとそっちだよね?
秋山:ダブルエックスじゃなくなってますもんね。
内田:よりディープなほうに行ったんすよ。
—ディープ?
内田:ディープですね。
中島:なんかあの頃を思い出すと、上から下まで古着でいたかったよね。
秋山:それはまちがいないです。
内田:みんなアメカジ&シブカジになってくんだけど、ヴィンテージのほうが高いからよりディープにね。
—なるほどね。モノがちがったっていう。
内田:そうなんですよ。あの当時はレギュラーのネルシャツ、MA-1、〈バンソン(VANSON)〉、〈トニーラマ(Tony Lama)〉とか割と新品も絡みながらの古着をあわせてシブカジなんすよ。もっとすごい古いの着てたから。
秋山:でもシブカジは実際もう大人だから、そこは通んないんですよ。
中島:まぁそういう人もいたと思う。俺もたまに新品着たりもするけど、まわりみるとだいたい今ウッチーが言ったみたいな人が多いんですよ。じゃなくて本物。中古のエンジニアブーツ履いてさ。
内田:いや、シブカジのひとたちも本物なんすよ? 〈バンソン(VANSON)〉に〈ゴローズ(goro's)〉 。かっこいいじゃないですか。
中島:なんだけど、みんなと一緒になっちゃうんだよね。そこが嫌なのよ。
内田:たしかに、みんな一緒だった。
中島:そこかな。あの頃からみんな〈ゴローズ(goro's)〉してんですよ。それなりのひとたちは。かっこいいなっておもったけど、うーんでもちょっとなぁ、っていう。
内田:よくしてた。ヴィンテージに〈ゴローズ(goro's)〉してた。かっこいいんだわ。
中島:とりあえずは買っちゃうんだよやっぱり。流行ってるからさ。
秋山:だって並ばないで入れましたもんね。
内田:力強いものをつくってた時代はあの辺だったんじゃないですか。並ばないで入れたけど、なんか誰かの知り合いみたいな。
中島:入れてもさ、紹介じゃないと。いまでもそうよ。ゴローさん、機嫌がよくないとつくってくんないもん。ゴローさんに直接。ベルト欲しいっていうと、腰をこう引っ張られってさ。おらおらって。
—まじすか。すっげ!(笑)
中島:サイズいくつ!って、やられてたよ俺。
秋山:ほんとにお店にいましたもんね。
内田:いい時代でしたよ。なんか、「渋谷が疲れたから、ちょっと原宿いこうか」って言ってたんだ。俺も「サンタ」にいたときにそう言われた。渋谷たしかに疲れるよねって。あの時代、表参道はまだ大人だったんだよね。
中島:そう言われるとそうだね。センター街とか公園通り、通るの嫌だったよね。
内田:誰かしらに会うっていうのもなんかね。ちょっと原宿でお茶したらかぶんないし。
中島:最近は渋谷原宿まったくわからないですけど。
内田:一緒だよねみんな。
中島:あの頃は、そこで働いてたからね。
—それが、90年代?
内田:90年くらいまではそんな感じでしたよ。表参道になんかお店があるかっつったら、上のほうにデザイナーズの高いお店がいまだにあるじゃないですか。昔からあるんですけど。
ーああいうお店って昔からあるんですね。
内田:お茶するとこしかなかったよね。