オープン当時、フイナムにて取材をしたこともある、鎌倉のレストラン「GARDEN SHOUSE」。全体のコンセプトとして、「Northern California」、そして「Local&Craft」を掲げており、このエリアに新しい風を吹き込んでいる注目のスポットです。元々、レストラン以外にも雑貨、日用品を扱うセレクトショップ、そして庭先で「gardener」というガーデンショップを運営するなど、ただの飲食業には収まらない存在ではありましたが、この度また新しいファクターである「ギャラリー」的な要素が加わることになりました。
レストランにギャラリー的機能を持たせるという、興味深い試みにチャレンジしたのは、東京・南青山にデザインスタジオとギャラリーを構えるPARK./SUTHERLAND からなるキュレーションチーム「EATME」。今後、鎌倉「GARDEN HOUSE」と青山「EATME GALLERY」の2カ所を主な活動の場として、「ボーダレスにキュレート」をテーマに、さまざまなジャンルの物、事、人物を、「EATME」のフィルターにかけてディレクションし、アート作品の展示や販売をしていくとのこと。
その第一回目となるのが今回の、写真家・深水敬介氏による写真展「CISCO」です。
本展は「GARDEN HOUSE」のコンセプトである、サンフランシスコやバークレーといったエリアに息づく「Local&Craft」を具現化した内容となっております。具体的な被写体としては、パン、犬、海、レストランなどなど、毎日の生活に根付いた、たおやかな世界観が展開されています。ファッションのイメージが強かった深水氏の新境地とも言えるのではないでしょうか。
大判の写真は壁に飾られ、小さいサイズの写真はボードと一緒に展示され、それがセットでそのまま販売されています。額装して緊張感のあるようなアートではなく身近な存在としてのアートを、という「EATME」そして深水氏の想いが十二分に伝わるプレゼンテーション方法なのではないでしょうか。フイナム編集部がお邪魔したこの日は、オープニングレセプションということで、たくさんの人が訪れており、写真も次々に売れていたようでした。
撮影はサンフランシスコのミッションエリアで行われ、一週間弱の滞在の中で、彼の地に根付く“ものづくりの精神”に向き合い、触れ、それをそのままポートレートのように写真におさめたものだそう。決して難解ではない誰にも受け入れられるような、肩の力が抜けた写真郡は、どんな空間にも馴染みそうです。
ちなみに、このレセプションの前には、近しい友人たちを集めたディナー懇親会が開催されておりました。深水氏を始め、「EATME」の主催者、そして「GARDEN HOUSE」のオーナーなど、それぞれのコミュニティがゆるやかに繋がっていくさまは、いわゆるトラディショナルな観光地ではない顔の鎌倉が、着実に根付いていっていることを感じさせるに十分な催しだったのではないでしょうか。
また、ここ鎌倉だけではなく、青山にもギャラリーを持つ「EATME」。今後は鎌倉と青山を行ったり来たりしながら、ジャンルの垣根を超えたイベントが開催されるとか。継続的にチェックしていきたいギャラリーとして、名前をしっかり覚えたのでした。