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HIP THINGS VOL_3 古着屋「デプト トウキョウ」が復活。

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いち古着屋という枠を超え、1980年代以降の東京カルチャーを牽引する存在といっても過言ではなかった名店「DEPT TOKYO」。2011年に一旦幕を下ろしたものの、創設者・永井誠治の娘であるeriさんのブログにてその復活がアナウンスされたのは記憶に新しいところ。それから首を長くして待ち続けること1ヶ月弱、ついに待望の再オープンを果たした。


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「従来のDEPTをそのまま作り直すという意識はありませんでした。」

復活のきっかけは、今年で15周年を迎えたeriさん自身が手掛けるブランド〈マザー(mother)〉の転機にあったそう。

「2011年のクローズ時に『まだ閉じるべきじゃない』と漠然と感じていて、リスタート自体はいつか実現したいと考えていたんですけど、自分のスケジュールを考えるとどうしても難しかった。でも少し前に、〈マザー〉を従来のコレクション形式で発表することをやめたんですよね。それで『今ならできるじゃん!』と(笑)。古着は自分で買い付けてずっとお店に置いていたので、やるならこのタイミングが一番よかったんです」。

中目黒にある彼女のブティック「mother River Side BOUTIQUE」の1Fを改装したということもあり、店舗そのものが大きかった以前のDEPTと比べると趣は若干異なるが、そのスピリットは脈々と受け継がれているようだ。

「私も父も、従来のDEPTをそっくりそのまま作り直すという意識はありませんでした。彼はアメリカに造詣が深く、もちろん私もそういった環境で育ったんですが、なぜだか自分が惹かれるのは昔からヨーロッパのものが多くて、積極的に学んだのもアールデコやヌーボーといったカルチャーだったので。でも、国籍や人種を超えて父がやってきたことにはシンパシーを感じていましたし、そういうところは残していきたいと思っています。趣味は似ていないんですけど(笑)」


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新たに挑戦する、メンズの買い付け。

店頭に並んでいるアイテムは、“DEPTらしい”アメリカ古着とeriさんの感性で買い付けられたヨーロッパ古着がほぼ50:50の構成になっている。いわば、「DEPT」と「マザー」の間の子といったところか。そして今回新たに挑戦したのが、メンズアイテムの買い付けである。

「メンズの買い付けってすごく楽しいんですよ。レディースだと、『こんな女の子にこんな風に着てほしい』『自分だったらこう着たい』という目線でつい選んじゃうんですけど、メンズだとそれがない。だって自分が着ないから(笑)。だから『相当無責任だよな…』と思いつつ、おもしろがって選んでいるところはありますね。あとは基本的にユニセックスで捉えていて、大きめのブルゾンやデニムのように男女で共有できるアイテムを意識的に多めに入れています。店頭のトルソーが穿いているデニムもウエストが40インチのデブパンツで、それをベルトで絞ってるんですけど、男の子がやってみてもかわいいと思います。そうやって視点を変えて選べるとより楽しいじゃないですか」。


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デニムパンツはあえて38インチ以上の物をセレクト。ベルトでギュッと絞って穿くのがeriさん流。そしてトップスに合わせたのは、以前から好評だったオリジナルプリントを載せたリメイクTシャツだ。今回のためにプリントを一新し、全7種で展開される。


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これからの時期に重宝するTシャツは、〈マイクロソフト〉や〈コカコーラ〉といった企業物からアニマルプリント、はたまたスパイスガールズやスヌープ・ドッグのアーティストTまで、かなりマニアックなセレクトが光る。


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リオープンを記念して制作された、“DEPT”のネーム入りソックス。ブラックとレッドの2色展開で、各¥2000+TAXで販売されている。

また、これらのアイテムを使用したルックも、eriさん自身でスタイリングしたもの。


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「『自分が男だったら』という意識はなくて、どちらかというと女の子の目線で組んでいるんだと思います。だから、本当に無責任なんですよ。リアリティがなくてもおしゃれじゃなくてもいいと思うし、きっとそれが自分がやろうとしていることなのかなって。あと男の子はみんな、もっと滅茶苦茶な格好をした方がいい(笑)。 『そのトップスにそのボトムス合わせるの?!』みたいな人をたまに見かけると、やっぱり楽しいですよね。古着だとそれをもっと面白くできると思うんです」。

こうして一通り見た上で最も印象的なのは、いわゆる古着的価値のある“王道の”アイテムが少ないこと。ブランドや年代、希少性に左右されないのは、女性ならではの感覚とも言えるだろう。色眼鏡をかけないフラットな目線で選ばれたこれらのアイテムからは、純粋にファッションを楽しんでいることが存分に伝わってくる。

「例えば、デニムって最もベーシックなアイテムだから、買い付けに行ってもみんな501を探しているんですよね。でも私は全然そういうのに興味がないんです。『ブランドがどこでいつ頃のタグがついていて』というのも古着のひとつの楽しみ方なんですけど、私にはそれ以上の価値が見出せないし、誰にでも語れる事は面白くないなと。その人が切り取った“目線”が面白くさせるんです。別に王道を避けようとしているのではなく、小さい頃ずっと古着に囲まれながら倉庫で遊んでいて、子供ながらに面白い物を探そうとしていたんですよね。変な柄のTシャツとか、すごく丈が長いとか、大きいとか。『誰が着ていくの?』みたいな服を探すのが好きだったので、その影響というか名残はかなりあるのかな。今回買い付けてきた中に、80sのシャツでピンクのムラ染めになっているものがあるんですけど、〈ナイキ〉のロゴが入っているのに中には他のブランドのタグが付いているんですよ。そういうわけわからないアイテムの方が気になっちゃう(笑)」。


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とはいえ“DEPT”という看板を背負う以上、相応のクオリティーを求められるのもまた事実である。その根幹ともいうべき買い付けについて、父親である永井さんからレクチャーを受けたことはあるのだろうか。

「実際に父が買い付けに行っていたのは私がまだ小さい頃なので、直接教わったことはないですね。今一緒に行くと、隣で私の買い付けを見ながら『なんやそれ?わからんわー』と笑っていますし(笑)でも父は、自分がわかる買い付けをしているようではダメだと言っていて、そうじゃないと多分私にやらせてくれないと思います。私は女で、当時とは時代も変わっているから彼と選ぶものが違うのはある意味当然。そして何より、自分が本当に楽しいと思ってやっていないと、それを手にするお客さんも絶対つまらないから」。


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気になるDEPTの今後。

すでに2号店のオープンも決定しており、順調なリスタートを切ったといえる「デプト トウキョウ」。最後に、今後の展望について尋ねてみた。

「2号店のオープンは8月を予定しているんですが、詳細はこれから詰めていくので正確なことは言えないんですけど、メンズないしユニセックスのアイテムを中心に置こうとは思っています。でも結局やりたいことをやって、尚且つビジネス的に回すことも考えると、小さい規模でいいかな。自分の手が届く範囲で、楽しみながらやっていきたいです」。

DEPT TOKYO

住所:東京都目黒区青葉台1-13-12 mother River Side BOUTIQUE 1F
電話:03-3780-4455
時間:13:00~20:00(平日)、12:00~20:00(土日祝)