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Yogee New Waves in GREENROOM FESTIVAL.-カルチャーを越境する人と空間

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Yogee New Waves(ヨギーニューウェーブス)
Kengo Kakudate (Gt.Vo)、Tetsushi Maeda (Dr)、Naoki Yazawa (Ba)

東京を中心に活動する音楽集団。都会におけるPOPの進化をテーマに活動中。はっぴいえんど、松任谷由実、山下達郎、サニーデイサービス。これらの偉大なるポップミュージックの恩恵を受けた僕らの世代にしかできない僕らのポップミュージック。

服をつくることも、歌をうたうことも、全部表現だ。

-角舘くんにとって、バンドってどんなものですか?

角舘:僕は小中高ってバンドしか聴いてなくて。Ken Yokoyama、ミッシェルガンエレファント、ザ・バースデイ、みんな濃い色があるんですよ。それこそKen Yokoyamaなんて、スケートカルチャーと密接につながっているじゃないですか。そういうのが自然だと思っていて。アーティストって音楽だけをやっていればいいってわけじゃないんだなと。

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-今は、音楽とその他のカルチャーが分断されていますよね。健悟くんは、スケボーに乗っていたりとか、服のデザインをしていたりとか、音楽の真ん中を担いながら、いろんな側面を持っていて良いな、と。

角舘:たぶん、アーティストかミュージシャンか、ってタイプが分かれるんですよ。自分はアーティストのほうに立ちたい。プレイヤーとして音楽だけをやるんじゃなくて。こないだ遊びでフリースタイルのラップをやったんですよ。そしたら「お前は服とかつくってなにやりたいの?」みたいなことを言われて。でも僕は「服をつくることも、歌をうたうことも、全部表現だ。」って言い返せたんですよ。表現するって行為は、いろんな手段や方法をとっていいはずなんです。

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-Yogeeの楽曲を聴いていると、情景の中に繊細な感情が宿っていると感じますが、どんな意図がありますか?

角舘:やっぱり日本人の美的センスは、奥ゆかしさだと思うんですよ。ちょっと恥ずかしいけど出す、みたいな。だから僕は「会いたい。」みたいな、ありきたりな言葉を書き連ねたくなくて。情景だったり、ちょっとした感情だったり、気持ちをそのままの形で表現するわけではない、さまざまな言葉の羅列によって伝わるものが好きで。

-日本語は独特ですよね。表現の幅が広すぎて、ビジネスには向かない。

角舘:そうですね。でも、糸井重里さんの言葉づかいはすごいと思います。消費者を愛して、包み込むような言葉になっている。愛情表現としての日本語は美しいですよ。

人間の知的好奇心をなめちゃいけないですよ。

-愛について以前も語られていましたね。

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角舘:これは仮説なんですけど、全ては愛につながっているんじゃないかって。無償の愛っていうのがキリスト教の根底にあるんですよ。与えられたいものを与えなさい、という。けれど、もちろんそんなに簡単にはいかなくて、そこで地団駄を踏むっていう過程、突き詰めようとする姿勢が美しいと思うんです。恋愛の初期衝動は、5年間、どれだけ長くても7年間しか持続しないらしいんですけど。その先に何があるのか知りたいなって最近考えています。

-そういうことが言える若い男って、なかなかいないですよ。

角舘:ワンナイトラブとか、無意味だと思いますもん(笑)。

—いいですね。すごく。最近、「バンドが盛り上がっているよね。」というムードがありますが、まだ一部のものでしかないとも思います。そこに対する当事者としての考えを教えてください。

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角舘:日本の音楽のキャパシティは増えないんじゃないかな。人がどれだけ音楽を聴くのか。実際、これ以上増えないと思う。ただ、脈々と受け継がれるJ-ROCKの魂みたいなものはちゃんとありますよ。ボーディーズ、サカナクション、ザ・テレフォンズ。すばらしいバンドたちがいて、そのあとに来るのが僕らだって信じています。何かの焼き直しみたいなことは、僕はやりたくないんです。人間の知的好奇心をなめちゃいけないですよ。

-使命感に近いものもあるのかもしれない。

角舘:勝手に背負っているだけかもしれないです。なんだろうな。今の東京インディーシーンには、それぞれいろんな人たちがいて。なんか学校のクラスみたいなんですよね。おれらはクラスのバカだけど運動会でがんばる奴ら、みたいな。やるときはやる。

-青春群像劇の世界ですね。

角舘:そうそう。全員で泣いたりもしますよ。メンバーひとり抜けたときも、もう終わりだー!みたいに。けど、それはそれでいいんですよ。いろんなことを経験しながら進んでいければいい。

ドラマーに霊を憑依させて、トレーニングするっていう研究をしています(笑)。

-思春期より前の幼い頃は、どんな子どもでした?

角舘:親を困らせっぱなしでしたね。落ち着きがなかったと思います。やっと最近になってしっかりしてきたかな。

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-脳みその機能が上のレベルに行っている人って、社会との折り合いの悪い期間を抱えてきたというか、生きづらさを感じてきた経験が必ずあるんじゃないかと思うんですよ。

角舘:あーなるほどなあ。そうかもしれないです。僕は大学院で、物をつくるにあたってどういう組織を構築すべきか、というような研究もしているんですが、今の社会に必要なのは空気を読まない人だって言われていて。団塊の世代が上の方で膠着しちゃっているから、それを誰かが全く違う価値観で壊したほうがおもしろくなるんじゃないかって。

-ああ。今も大学院に通っているんですね。他にはどんな研究を?

角舘:ドラマーに霊を憑依させて、トレーニングするっていう研究をしています(笑)。

-すごく興味ありますね(笑)。

角舘:ドラムって、トレーニングが難しいんですよ。もともと持って生まれたリズム感は鍛えにくい。じゃあ上達させるためにどうするかってことで、すでに亡くなったドラマーの霊魂を、遺された音源をもとに電気信号という形をとって、人に憑依させるんです。たとえばリンゴスターのドラムの音をとってきて、電気信号に変換して、筋肉に流す。体にグルーヴを記憶させるんです。

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-めちゃめちゃおもしろい。

角舘:自分の筋肉で実験してるから、帯電しちゃってやばいんですよ(笑)。

-科学的なアプローチまでするんですか?

角舘:本当はコンセプトだけでやりたいんですけど、イノベーションをおこすためには、すべてのプロセスをぜんぶ自分でやらなくちゃいけない。ぜんぶ自分でコミットしないといけないなと思います。

-責任感が強いんですね。きっと。

角舘:やるって決めたことへの責任感はあるかもしれない。音楽に対しては、愛情を持ちすぎて苦しくなります。全ての曲をやりたいんだけど、ライブには時間の制約があるからそうもいかない。ミスしたら、せっかく大好きな曲なのにって落ち込む。だから苦しい。制作物を愛しすぎちゃいけないって言われるんですけどね。そこがアーティストとクリエーターの違いなのかもしれない。

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バンドにはそれぞれモンスターみたいに属性があって、僕らはぜったい野外の、特に海に強いタイプ。

-広告におけるクリエーティブと呼ばれる作業は、愛情だけではできなかったりしますね。色んな物差しが関わってきますから。

角舘:僕も一度その世界に入ってみたいんですよ。アーティストは怠け者だから、それゆえに自分の手で、自分のやり方でやりきるってことを編み出した人だと思うんですけど。一度はタフなプロフェッショナルの環境でビシバシ鍛えられたいなと。

-たしかに鍛えられるとは思います。でも、自分の名前と自分の思いで仕事ができるのってすごいですよ。

角舘:それは本当に気持ちいいです。ようやくここまで来られたなって思うときもあるけど、でもまだまだ。もっといろいろやりたいし、いろんなところに出て行きたい。

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-フェスは、いろんな人に届けるきっかけになりそうですね。

角舘:フェス、めちゃめちゃ好きなんですよ。バンドにはそれぞれモンスターみたいに属性があって、僕らはぜったい野外の、特に海に強いタイプ。ライブハウスより外がいいです。

-グリーンルームは海も近いし、けれど都会だし、音楽、ファッション、スケートと、いろいろなカルチャーが混じっているところもYogeeにぴったりだと思います。

角舘:速攻で決めました。すぐ出るって。「海が近い!OK出よう!」って笑。

僕は、シティポップというのは、都会に生まれ育った人の、都会に対するニヒリズムだと思っています。

-自然を求めているんですね。

角舘:そうなんです。その感覚こそがシティポップだと思うんですよ。僕ら、シティポップって言ってもらえることが、めちゃくちゃ嬉しいんですよね。

-シティポップの定義って?

角舘:シティポップ論争って一部で言われているんですけど。僕は、シティポップというのは、都会に生まれ育った人の、都会に対するニヒリズムだと思っています。東京ってすごく雑然としていて、クサいし、息苦しいんだけど、でもどうしてもそこから逃れられないという、その混沌とした気持ち。わけわかんない感覚があるんですよ。たまに虚無感もあったりして。だから、地方から東京にきて音楽をやっている人がシティポップっていうのは違うと思うんです。

-東京で生まれ育った角舘くんが言うと、説得力ありますね。

角舘:僕はずっと都会育ちで、コンクリートジャングルの中にいて、どこかに行ってしまいたいという願望を持っているんです。自然に対する飢えもあります。超都会人と超田舎人は真逆なんだけど近い気持ちを持っているんですよ。ここから逃げたい。けれどどうしようもない。そういう感覚。

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-ああ、わかる気がします。

角舘:あと、渋谷系をリアルタイムで見ている人からすると、当時のムーブメントの流れと似てるらしいんですよね。僕はオザケンのような立ち位置かな。(サチモスの)YONCEは絶対田島貴男なんですよ(笑)。エロいかんじ。けれど、D.A.Nのベースが「東京インディーをなめるな。」って言ってて。それはそれですごくかっこいいなと思いました。

-グリーンルームにはSuchmosもD.A.Nもnever young beachも出るし、個々のバンドとしてはもちろん、シーン全体の存在感が示されそうですね。

角舘:そうですね。単純にみんな仲が良いので、すごく楽しみです。

いろんな条件がリンクした瞬間、その曲は、その場所、その時間を記録したものとして一生忘れられないものになる。

-Yogeeの音楽についていくつか話を聞かせてください。まず、言葉の選び方が良いですよね。どういう意志で言葉を選んでいるんですか?

角舘:僕は誰かに問いかけているんです。それは仲間、親、女の子なのかもしれない。常にその曲を通して1対1でいたいんです。

-Like sixteen candlesの「この曲は君の曲になるんだろう」というフレーズはその象徴ですね。それぞれの記憶と、それぞれの映像とともに、音楽が思い出を形作ってゆく。ポップスの偉大な力だと思います。

角舘:ゆーみん(松任谷由美)とかヤマタツ(山下達郎)とか、一枚の写真のような曲があって、例えば旅行先で、いろんな条件がリンクした瞬間、その曲は、その場所、その時間を記録したものとして一生忘れられないものになる。それが大好きなんです。

-それこそがシティポップなのかもしれないですね。

角舘:そうなんです。シティポップっていうのはそうあるべきなんですよ。クラブで酔っ払って楽しめちゃってる人にはできない音楽なんです。

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-クラブって、たしかに本当に都会の人は行かないかも(笑)。Yogeeを好きになるのって、いろいろ知っている人だと思います。僕は尊敬する編集者の先輩に教えてもらったんですけど。音楽をちゃんと聴いてきたからこそ、真価がわかる類のバンドというか。

角舘:嬉しいな。Likesixteen candlesって曲は、都会をサバイブしている人じゃないと感銘を受けない曲なんです。あれをバカにするやつは逆に寒いし、好きって言ってくれる人のことは間違いなく僕も好きなんですよ。

-タイトルの由来は?

角舘:人間というのは一本のろうそくとおなじで、溶けきる前に吹き消される。決して溶け合うことはできない。生物って一個になることを望んでいるんです。細胞と細胞は放っておくとひとつにくっつく。そのとき細胞は喜ぶんですよ。人間もおなじ。だからキスもセックスもハグも最高なんです。でも溶け合うことはできないっていう人間のジレンマ。それはロウソクといっしょだなという意味です。

わけわからなくなって泣いちゃってる男とか。それでいい、それでいいって思いながら演奏してるんですけど。

-解釈の余白を残している部分と、的確で叙景的な描写。そのバランスが絶妙ですよね。Yogeeのファンって、どんな人たちなんですか?

角舘:僕らのファンには、男が多いんです。わけわからなくなって泣いちゃってる男とか。それでいい、それでいいって思いながら演奏してるんですけど。僕らのライブのときには、「かくだてさ〜ん!」じゃなくて、野太い声で「カクダテー!!」って叫んでもらえるんです。嬉しいんですよ。それって僕の求めていた銀杏ボーイズの世界だなって。最高ですよね。どれだけの男が救われてきたのか。

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-抱擁力があるんですよね。ひとつ違うレイヤーから見ているというか。

角舘:嬉しいです。でも、若いうちはもっと盲目的に中指立てていったほうがいいのかも、とも思います。尖って、喧嘩売って、ガンガン行くべきなんです。意外といろんなことを気にしていたりもして。・・・俺、何になるんだろうなあ。

-発言ではなくて、音楽に説得力があるからいいんですよ。

角舘:そうですね。自分をここに連れてきてくれたのは自分の音楽だから。補完し合うんじゃないかな。音楽と発言は。

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-Yogeeと音楽のこれからについて教えてください。

角舘:やっぱりスケートを愛している人は、いろんな人にスケートに乗って欲しいと考えるし、映画好きはいろんなひとに映画を観て欲しいと願う。僕はやっぱりもっといろんなひとに音楽を聴いてほしいし、観てほしい。音楽の価値がこれ以上下がらないように、自分たちはいい音楽を作り続けていきますよ。

GREENROOM FESTIVALʼ16

場所:横浜・赤レンガ地区野外特設会場
日程:5月21日(土)、22日(日)
主催:GREENROOM FESTIVAL実行委員会
http://greenroom.jp

撮影協力:RedBook ( http://www.caferedbook.com/