自分を見つめ直すということ。

-まず、モデルとして活躍されていたジュンさんが、自身の名を冠したブランド〈HAGAN Garment Poets〉を立ち上げたきっかけについて教えてください。

ジュン ヘイガン (以下 ジュン 敬称略):物心ついたときから、絵を描いたり、ギターを弾いたりと、とにかく表現することが好きだったんです。もともとモデルをきっかけに上京するまでは、大阪の友達とバンドをやっていました。そういった経験を経ていくうちに自分の中に多種多様な価値観が混在してきて。それはとても良い意味なんですが、改めて自分の根本にあるモノを表現したいと思ったんです。自分を表現するためには、同時に自分の根幹にあるものを見つめ直すという意味でもあり、自分の”人生の軌跡”を見つめる意味でブランドのテーマを”旅”に設定しました。それは肉体的な旅の経験ではなく、精神的な旅という意味です。自分が通ってきたものや考えてきたこと、これから向かう未来も含めて、ひとつの道筋としての”旅”なんです。ブランド名に自分の名前を採用したのも、自分という人間のルーツを見つめるうえでは、ある意味必然だったんです。

-洋服に興味を持ったそもそものキッカケはなんですか?

ジュン:もとを辿れば、家庭環境でしょうか。ぼくの母親は音楽好きで、父親がものすごく服好きでした。部屋のタンスには、シャツがびっしり敷き詰めてあって、そのどれもが非常に美しく畳んでありました。ぼくが触ろうもんなら、怒鳴り散らされる勢いでしたね(笑)。そんな父に洋服の面白さを学んで、歳を重ねるたびに夢中になっていきました。若い頃は、古着に父の服を混ぜて着たりもしていましたね。

-ジュンさんの手掛ける〈HAGAN Garment Poets〉は、リメイクを応用したデザインですよね。

ジュン:そうですね。最も自分らしいデザインが、過去のものをリメイクすることだったんです。生まれこそ、ニュージーランドなんですが幼少期には家族で大阪に移り、モデルをはじめて上京するまで、だから15歳くらいまでは大阪に住んでいたんです。当時は今以上に古着屋の数も多くて、古着を中心とした洋服が自分のファッションのベースになっていたんです。そういった意味で、自分のルーツの1つでもある古着をベースにしているんです。

-古着をベースに、リメイクを施して完成するわけですね。

ジュン:はい、ベースにあるのは古着であって、それに自分のアレンジを加えます。ぼくのルーツのひとつである古着に、”旅”の途中にいる今の自分やリスペクトする人や物をミックスさせることが、このブランドのアイデンティティなんです。ただ、リメイクといっても縫い合わせたりするだけでなく、シーズン毎のテーマに沿ったグラフィックを載せたりもするのでリメイクというよりカスタマイズという方がしっくりくるんですが。

-ちなみに今シーズンのテーマはなんですか?

ジュン:とくにないんですよ。ただ、Tシャツのグラフィックにも採用している言葉なんですが、結果的に”FRIENDS”というのが、キーワードになりました。仲間や家族という意味で使ってます。昨年から、モデル業を復帰させたりと自分のなかで色々考えることが多かったんです。本当に”FRIENDS”の大切さを噛み締めた1年だったので。

落ち着いた佇まいと遊び心のバランス。

-スタンスミスのスニーカーを愛用されているということですが、本日着用されている〈アディダス タイミング〉のスタンスミスの第一印象を教えてください。

ジュン:スタンスミスは昔から履いていて、とくに愛着のある一足です。そんなスタンスミスの時計モデルが、〈アディダス タイミング〉からリリースされて素直に嬉しいですね。これまで、〈アディダス タイミング〉はポップでカラフルな時計が多いという印象でしたが、このモデルはそれとは違いますよね。むしろ、クラシックで落ち着いた佇まい。今日のぼくのコーディネイトにもしっかりフィットします。アクセントとして使う時計というより、どんなコーディネイトにも合う汎用性の高い時計だと思います。シルバーとホワイトのシンプルでクリーンな配色も、老若男女問わずに使いやすいので、今後の定番になるような気がしますね。

-確かにこれまでのモデルに比べると落ち着いた印象ですよね。

ジュン:時計やアクセサリーで、スタイリングを遊ぶというのももちろん好きですが、実際は時計を多く所持することは難しいですよね。だからこそこういったデザインは固定のファンを生みだしそうですし、そういった存在がブランドの信頼にも繋がっていくと思うんです。

-ポイントでグリーンが使われているのも、〈アディダス タイミング〉らしいディテールですよね。

ジュン:そうですね。グリーンって、スタンスミスのイメージカラーだと思うし、ホワイトとの相性が抜群にいい。良い意味で慣れ親しんだカラーリングで、気分が上がりますね。でも、ぼくが最も気に入ったのは、12時のところのデザイン。ちょっと小さいんですが、”LOVE”って描いてあるんですよ。こういったデザインも気が利いていて嬉しいですね。こういったユニークな遊び心はシューズにはあり得なかったし、〈アディダス タイミング〉ならではの遊び心だと思います。

都会と自然を行き来する。刺激的な日々が理想。

-自身のブランド〈HAGAN Garment Poets〉の、今後の展望を聞かせてください。

ジュン:テーマである”旅”には、決して終わりがないので。本当に色んなことを表現し、チャレンジしていきたいですね。例えば先シーズンの秋冬では、一点物のアイテムだけで構成して、メンズとレディースの垣根を作らずにジェンダーレスに展開していました。ほとんど一点ものですけどね。

-なるほど。今考えている範囲で、これまでとは違うチャレンジをひとつ挙げるとしたらなんでしょうか。

ジュン:女の子の服を作ることですかね。もしかしたら、次のシーズンはワンピースだけの展開というのもあるかもしれないです(笑)。そうやって良い意味で皆さんの期待を裏切りつつ、ブランドを変化させていきたいと思っています。

-最後に、現在、大阪と東京を行き来してるジュンさんですが、理想とする将来のライフスタイルはあるのでしょうか。

ジュン:今の生活もとても刺激的なんですが、たとえば沖縄のような暖かい所に住みたいと考えています。時の流れもゆっくりですし、しっかり自分と向き合いながら服を作るのに最高の環境だと思います。そして、いつかは自然と都会を行き来して、自分のクリエーションを世の中に繋げていきたいですね。