ボストンバッグのサイズについて
続いては、デイパックと同じくらいブランドを象徴するアイテムであるボストンバッグについてのMTGが行われた。こちらもまず全体のサイズ感から話はスタートした。
「デイパック同様、もう少し大きくしたほうがいいかなと思っています。インラインのサイズ感は、日本ではユニセックスなものとして受け入れられるかもしれませんが、ドイツではレディース用とみなされると思います。一回りくらい大きくてもいいかもしれません」。
アトリエにあった〈バッグジャック〉のボストンバッグを例に、サイズ感の確認をしあう。実際に測ってみると、インラインの横幅が約45センチ。〈バッグジャック〉のバッグは53センチ。結局、50センチくらいのサイズ感が妥当なのではということになった。ピーターの「リュックとしても使えるようにしてもいいよね」という何気ない一言が心に残った。
外側のポケットについて
「インラインでは、外側にポケットの類はないけれど、今回はアーミーパンツのようなカーゴポケットを付けるのはどうだろう? フラップというよりは、ジップで開閉するような作りがいいかなと思っています」。
底面のストラップについて
ボストンバッグの底面には、スケートボートが格納できるストラップが付くことになった。ボストンバッグとしては、定番の収納アイデアのひとつ。さらに、〈アウトドアプロダクツ〉からの提案で、スケートボートだけではなく、ジャケットやブランケットなども入るように、ストラップのサイズ感をベルクロによって調整できるようになった。
トラベル用のバックパックに見られるようなディテールでもある。これ以上ないくらいシンプルなボストンバッグに、少しずつ彩りが加わっていく。
バックジャックの素材・付属について
〈バッグジャック〉を〈バッグジャック〉たらしめている理由の一つに、テクニカルで美しい付属の存在がある。どことなく温もりのあるデザインで、抜群の使い勝手を誇る各種のパーツは、プロダクトの表情に大きく関わってくる。無造作に投げ出されたちょっとしたパーツすら、美しく見えてくる。簡単に使うべき言葉ではないが、〈バッグジャック〉にこそ“機能美”というフレーズはふさわしい。
3WAYバッグとしての使い方について
元々このボストンバッグは、ショルダーバッグとしても使えるので、2WAYバッグとしての利用が可能だった。ただ、ピーターはもう一つの使用方法、すなわちリュックとしての用途も付け足すという。“手で持つ”、“肩にかける”、“背負う”。この3つの使用用途において、ピーターは高い快適性を求めている。
「ただ、リュックになるだけではいけません。あくまでも使い勝手と利便性が両立している必要があります。知っている人もいるかもしれないけれど、僕らは〈アクロニウム(ACRONYM)〉のバッグも作っています。そこで使っていたような、ループ、D管を使おうと思っています」。
こればかりは写真を見ないことには非常にイメージがしづらいのだが、片方のサイドの中央にD管を1つ、もう片方には2つのD管を付けて、ショルダーストラップを通していくことで、リュックとして背負えるようなメカニズムをピーターは提案してきた。このアイデアには一同が驚嘆し、〈アウトドアプロダクツ〉サイドからもすぐにGOサインが出たのだった。こうしたアイデアの引き出しがピーターはとにかくずば抜けている。
サイドのギミックについて
ボストンバッグの両サイドの面の部分には、2種類のギミックが付くこととなった。
まずひとつはバッグ自体の幅がエキスパンド、つまり拡張する仕組みが組み込まれるというもの。ジップを開けると、中からマチが出てくる、というようなイメージだ。これにより、リュックとして背負った時に内容量を増加させることに成功した。
そしてもう一つは、デイパックでも採用された、靴や衣類などの汚れ物を入れられるコンパートメントをつけるというもの。ボストンバッグだけに、ジムに行く時などにはこのバッグ内バッグはかなり役立つのではないだろうか。
カラバリについて
言わずもがな〈アウトドアプロダクツ〉のバッグは様々なカラーバリーションが揃う。対照的に〈バッグジャック〉のバッグはそのほとんどがブラックだ。結論から言うと、今回はブラック一色での展開となった。黒・紺・グレーあたりが候補に挙がっていたらしいが、ピーターと話をすすめるなかで、今回のプロダクトを独占販売する某ショップの方も、ブラック一色での展開に踏み切ったようだ。
ボストンバッグのまとめについて
サイズ:インラインのものより、横幅を5センチほど大きく。
ストラップ:〈バックジャック〉で使われているクイックリリースのパーツを使用。
底面のストラップ:スケートボード用のストラップが2本付く。トローリーループや、衣類、ブランケットなどが格納できるようなサイズ感に。
ポケット:フラップ付きのカーゴポケットポケットを配置。
3WAY:手持ち、肩掛けに加え、リュックとして背負えるように大きめのD管を複数配置。
サイド:ジップ内に新たなマチが格納されており、エクスパンドが可能に。逆サイドの面には、柔らかい生地でできた収納があり、シューズとか汚れ物を入れておけるように。
販売価格について
〈アウトドアプロダクツ〉の多くのアイテムは、1万円を切るようなプライス。そして〈バッグジャック〉は平気で5万円くらいするような、高価格帯の商品が揃うブランドである。これらを踏まえた上で、議論が重ねられ、今回のコラボレーションプロダクトは、 2万円を切るぐらいが落とし所としてよいのでは、という話になった。これには、普段〈アウトドアプロダクツ〉を買うような人が、少し背伸びすれば届くような価格帯でありたいという、強い想いが込められている。
ミーティングを終えて
デイパック、ボストンバッグ双方について、かなり細かい点に至るまでMTGを重ね、ひとまずはファーストサンプルの完成を待つばかりとなった。ピーターもかなり満足そうな表情を見せていた。
「細かいディティールやデザインに関しては、何度も構成を練ったりしないといけないから、少し時間がかかるかもしれません。おそらく3回から4回ぐらいサンプルを作ることになると思います。発売が夏ぐらいということなので、十分間に合うとは思いますが」。
〈アウトドアプロダクツ〉のこれまでのコラボレーションでは、素材やカラーを変更するなど、表面的なアレンジにとどまっていた。それだけに、サイズやディテールなど、あらゆるところに手を入れる今回の取り組みは、〈アウトドアプロダクツ〉にとっては大きな一歩なのである。
ブランド側がここまでのアレンジを許容したのは、〈バッグジャック〉ひいては、ピーター・ブルンスバーグの能力を高く評価している証でもある。ドイツ政府や、軍隊の仕事を請け負うような極めてレベルの高いクリエイティブと組んで生まれるシナジーに期待するところは大きい。
今回のプロダクトが成功すれば、今後もしかしたら、ちょっとハイエンドラインのようなシリーズが生まれるかもしれない、そんな話も飛び出した。
今回のMTGでは、普段メディアがあまり踏み込むことのない、いわゆる商談に立ち会わせてもらった。プロダクトの概要がおぼろげながらも少しつづ見えて来るその様は、実にエキサイティングであった。貴重な機会を与えてくれた〈アウトドアプロダクツ〉に感謝。とにかく完成品が楽しみで仕方がない。
次回の更新では、仕上がってきたサンプルを紹介していこうと思う。いよいよ今回のプロダクトの輪郭が見えて来るわけだ。7月下旬公開予定。乞うご期待。
ベルリンの街並みについて
最後にほんのすこしだけベルリンの市街地の様子を紹介したい。1月ということもあり、毎日1℃くらいしかなく、東京の冬よりもかなり寒い印象だ。〈バッグジャック〉のアトリエに向かう道すがら、現地のメッセンジャーと多くすれ違った。彼らは皆一様にミニマルでスタイリッシュなスタイルをしていた。〈バッグジャック〉のプロダクトが持つ、ストイックな雰囲気はこうした土壌から生まれたものなのだ。