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HIROSHI FUJIWARA meets YOICHIRO UCHIDA Orchid and Graffiti 藤原ヒロシと内田洋一朗、初顔合わせのコラボレーションのカタチ。

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「まさか、仕事をご一緒させていただくとは思わなかったです」(内田)

−今回のコラボレーションが始まったきっかけを教えてください。

藤原:「the POOL aoyama」のメンバーから内田さんのことを紹介されたのがきっかけですね。最初に内田さんのグラフィティのような文字を拝見して、是非ご一緒できたらと思ったのが始まりです。

内田:僕はもう「よろこんで!」という感じで(笑)。藤原さんのご活躍を目の当たりにしていて、さまざまな影響を受けていたドンピシャの世代ですから、僕にとっては目の前にいること自体にすごく違和感がありますし(笑)、ましてやお仕事をご一緒させていただくとは想像もしていませんでした。まさかのコラボレーションです(笑)。

藤原:あははは(笑)。

−藤原さんは内田さんの作品に対してどのような印象をお持ちですか?

藤原:手書きでしっかりと文字を書ける人はなかなかいないので、貴重な存在ですね。内田さんはファッション的なシーンで文字を書くお仕事はずっと継続されていたのですよね?

内田:そうです。でも、その活動と藤原さんがまさか繋がるなんて思いもしなかったです。

藤原:内田さんはお店を始める以前からお花が好きだったのですか?

内田:特にそういうわけではないですね。僕が蘭の花を好きになったのはこの仕事に就いてからしばらく経ってからですね。18歳~22歳までアメリカのボストンに留学していたのですが、そのときに無茶苦茶遊び過ぎてしまって、父親に「お前、いい加減働けよ」と言われまして。当時、父親はレストランに出てくるおしぼりを作る仕事と同時に、蘭のお店もやっていたんです。蘭と一口に言っても、女優さんの楽屋に置かれるような、お祝い向けの豪華絢爛な雰囲気の蘭ですね。父親の仕事を継ぐ流れで蘭の仕事を始めたので、最初はすごくつまらないなぁと思っていました。

藤原:じゃあ、特別に蘭が好きだったわけではないんだ。

内田:全然違いますね。「いつ辞めてやろうか」ってずっと思っていましたから。

藤原:本当は文字やデザインのほうが好きだったの?

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内田:どちらかというと文字を書くのは昔から好きでしたね。アメリカにいるときに目覚めました。向こうの人が書く字は決して上手ではないですけれども、なんとも言えない格好良さがあると思って。当時は週末になれば、ボストンからクルマを飛ばしてNYまで遊びに行っていました。まだそれほどNYが安全じゃない時代だったので、変な場所にいっぱい遊びに行ってカルチャーに触れていましたね。

藤原:それでグラフィティのようなことをやり始めたの?

内田:そうですね。NYでさまざまなグラフィティを見て感化されたのがきっかけで、自分でもやるようになりました。特別に誰かに見せることはなく、趣味の範疇でやっていました。ふと頭に思い浮かんだものを書きなぐる感じで。そういったことをやりながら蘭のお店を父から引き継いで、自分で内装をリノベーションして壁を真っ白にしたりしていました。時間のあるときに、壁にちょこちょこ頭に思い浮かんだことをグラフィティで書いていたら楽しくなってしまって。思いのままにどんどん書いて、結局壁一面に書きました。それでも書き足らず、天井にも書いて最終的には床にも書いていましたね。藤原さんは蘭を育てたことはありますか?

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「蘭はマニアックで極端。結構“エグい”花ですね」(藤原)

藤原:ないですね。僕は蘭に関して全然見識がなかったので、蘭の花に対してもうまく想像ができなくて。見せてもらったら、内田さんが扱っている蘭は一般的な胡蝶蘭とはちょっと違って、“エグいタイプの蘭”なのだとわかりました。

−そうですよね。西洋の原生種の蘭をメインにしたラインナップで、蘭の固定観念を覆されるルックスのものをたくさん取り扱っていますよね。

内田:そうですね。

藤原:内田さんにお会いする前にグラフィティを拝見して、「どんな人なのかな?」と想像していたんです。人とは違う特殊な能力を持っていたり、何かをひらめいた瞬間にガリレオみたいに文字をバァーッと書いてしまう人なのかな、とか。

内田:あははは(笑)。

藤原:そういう雰囲気の文字じゃないですか。ちょっと狂気が入っているような。それと蘭は近いのかなと思いましたね。蘭って結構、極端でマニアックな花という印象で。

内田:マニアックですね。本当に。

−内田さんはマニアックな蘭の世界にどんどん魅了されたそうですが、内田さんが感じる蘭の魅力はどんなところでしょうか?

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「人間に媚びてこない蘭が好き」(内田)

内田:いろいろとあるのですが、蘭を見ていていつも思うのは卑猥だな、と。なんとも言えないセクシャルな佇まいや表情の豊かさ。人間に媚びてこないところも好きですね。

藤原:人間に媚びてくる植物ってあるんですか?(笑)。

内田:水をかけたら「わー!」って元気になる植物があるじゃないですか。蘭は水をあげるだけじゃ全然元気にならなくて、すごく手がかかるんです。水をかけたらまず乾かす。そしてまた水をあげるというプロセスを踏まないといけない。蘭はもともと樹木にくっついて生活する着生植物なので、常に湿った環境下にあると根っこが腐ってしまうんです。そういった特性上お水は必要ですが、多めは嫌いだったりして、いろいろと配慮が必要な植物なんです。だから、いつも蘭を飼っているというよりも、飼われているような、ちょっと試されているような気持ちになります。2~3年経てお互いの関係が良くなってくるようなところがありますね。お店に来てくださるお客さんは、そういった目線で蘭を見てくれている方が多い気がします。きれいな花が咲くものを選ぶ方もいれば、グロテスクなものしか選ばない方もいますし。花が咲かなくても良くて、フォルムとして変なものに着眼して選ぶ方もいらっしゃったりしますね。

−今回のコラボレーションでは、内田さんの蘭の写真とグラフィティをコラージュしたTシャツなど、グラフィティを生かしたラインナップとなっていますが、どのようなプロセスを経て制作されたのを教えてください。

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→YOICHIROUCHIDA×the POOL aoyama ¥10,000+TAX(トートバッグとセットになります)

藤原:最初の取っ掛かりとしては、80年代のフォトプリントのTシャツがイメージにありました。内田さんの蘭の花の写真を使用させてもらい、グラフィティを書いてもらいました。

−グラフィティにはどのようなメッセージが込められているのでしょうか。

内田:蘭の花の写真の上には属名と品種名が書いています。その他には蘭の分布域や育て方。そして「花は咲くけれどいつかは終わる」みたいな内容を書いています。

藤原:人情的なことを(笑)。

内田:こんな感じかなと(笑)。

藤原:写真は一見、花に見えないですよね。

内田:確かに、そうですね。今回、フォトプリントは数種類ありますが、花が枯れそうなギリギリのタイミングの写真を使用したものと、もう一種類は、花が元気に咲いている状態の写真を使用しています。