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MARK ONG(SBTG)×SHIGEYUKI KUNII(mita sneakers) シンガポールと東京。それぞれのスニーカー事情、そしてプーマについて。

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マーク・ウォン
シンガポールのグラフィックアーティスト集団〈SBTG(サボタージュ)〉主宰。これまで数々のスニーカーカスタムを手掛けてきた。またの名を“ミスター・サボタージュ”。

国井栄之
東京・上野のスニーカーショップ〈ミタスニーカーズ〉クリエイティブディレクター。別注やコラボレーションを数多く手掛け、世界中のスニーカーフリークから注目を集めている。

ーまずはマークにお聞きします。〈サボタージュ〉がどういった集団で、どういった活動をしているのか、教えてもらえますか。

マーク・ウォン(以下マーク) - 「〈サボタージュ〉は、シンガポールを拠点に活動するグラフィックアーティスト集団です。私が12年前に設立しました。グラフィックデザインやアートワークのほか、スニーカーのカスタマイズも手掛けています。クルーは私“ミスター・サボタージュ”のほか、妻の“ミセス・サボタージュ”ことスーと、彼女のアシスタントの計3名。今回は〈プーマ〉と〈ミタスニーカーズ〉とのコラボレーションのリリースにあわせて、3人揃って来日しました」

ーマークと国井さんは、以前から交友関係があったそうですが、いつ、どういった経緯で知り合ったのでしょうか??

国井栄之(以下国井) - 「もう10年近く前になるのかな。シンガポールの〈サボタージュ〉のオフィスでマークと初めて会ったときに、スニーカーという共通の話題で盛り上がって。それ以来、マークが東京に来たときはいっしょに食事に行ったり、僕がシンガポールに行ったときは飲みに誘ってもらったり。そうこうするうちに、とあるスニーカーのプロジェクトを共同で手掛けることにもなって。友人として、そして仕事のパートナーとして、公私に渡って付き合いが続いています」

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ー今回、〈プーマ〉とのコラボレーションモデルをリリースしたわけですが、このプロジェクトがスタートしたきっかけは?

国井 - 「ある日、マークから、『プーマ バスケット』をベースにしたカスタムスニーカーの写真がフェイスブックのDMで送られてきたんです。『これ、どう思う?』って。それがめちゃくちゃかっこよかったので、「すげえいいじゃん」ってすぐに返事をしました。その後、何度かDMをやり取りした末に、これを実際にかたちにできないかという話になり、じゃあ〈プーマ〉に相談してみようと」

マーク - 「そう、最初のきっかけは、僕がカスタムした『プーマ バスケット』でしたね。その後、ミーティングを重ねているなかで、僕が初めて履いた〈プーマ〉が何かという話になって。僕にとっての最初の〈プーマ〉、それは、『クライド』のアッパーに“コンタクトソール”を搭載した『C807』というモデルでした。20年ほど前のことになりますが、僕は小さいころ、宮崎にホームステイしていた時期があり、そこで出会ったスニーカーです。当時、喉から手が出るほど欲しかったのですが、お金がなくて買えずにいたところ、友人たちがお金を集めて、僕にプレゼントしてくれたんです。本当にうれしかったですね。そのときのみんなの友情は、20年経ったいまも忘れることができません」

国井 - 「マークからその話を聞いて、だったらその『C807』を復刻させようよ、ということになって。〈プーマ〉に確認したところ、『C807』に搭載されていた“コンタクトソール”の金型が奇跡的にいまでも残っていることがわかりました。そのような経緯を経てようやくかたちになったのが、今回のコラボレーションモデルなんです」

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ー“コンタクトソール”とはどういったソールなのでしょうか?

国井 - 「もともと“コンタクトソール”は、『プーマ スウェード』よりも後に出てきたバスケットボールシューズに搭載されていたソール。軽くて履き心地がいいという特徴があります。最近、多くのスニーカーブランドがライトウェイトを追求しているなか、かつて日本企画として開発された派生モデルではありますが、いまの感覚にもフィットすると思います」

マーク - 「僕自身、昔からスニーカーのディテールへのこだわりが強く、それこそ友だちに『C807』をプレゼントされたときから、コンタクトソールに注目していました。しかし、そのとき以来、コンタクトソールを搭載した〈プーマ〉のスニーカーに出会うことはありませんでした。今回、コラボレーションプロジェクトを進めているなかで、コンタクトソールの金型がいまも残っていたことは本当に驚きでした」

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ー“コンタクト”と言えば、今回のプロジェクトは“ファーストコンタクト”と名付けられていますよね。

マーク - 「“ファーストコンタクト”には、私にとって最初のプーマとのコンタクトであることと、コンタクトソールを搭載していること、両方の意味が込められています」

ーアッパーにはカモフラージュ柄があしらわれていますが、この柄について詳しく教えていただけますか。

マーク - 「このカモフラージュ柄は、僕が〈サボタージュ〉を始めた12年前からずっと描き続けているオリジナルのパターンです。毎日描き続けているなかで、新しいストロークが生まれることがあったり、こっちのほうがいいなと思う瞬間があったり、描くたびに新しい発見があります。このパターンを描き続けることは、終わりのない旅のようなものかもしれません」

国井 - 「ちなみに、実物をよく見てもらえばわかるのですが、この柄は全面プリントではなく、カモフラージュの部分だけ抽出してペイントを施しています。最初はうまくプリントが乗らなくて苦労しましたが、最終的にはとても満足のいく仕上がりになりました。カラーリングはお互いが1型ずつデザインし、計2型を製作。販路もそれぞれ分けて、マークがデザインしたカラー(オリーブ)はグローバルのキーアカウントで展開し、僕がデザインカラーは日本ではミタスニーカーズのみ、海外ではシンガポールのキーアカウントのみに絞りました」

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ー話をうかがっていて、このスニーカーの背景には非常にマニアックかつ熱いストーリーが秘められていることがわかりました。

マーク - 「かけがえのない友情を通じて出会ったプロダクトが、20年の時を経て、いまこうして国井さんの友情とともに蘇る。このようなプロジェクトを実現できたことをうれしく思うし、ビジネスの枠を超えて感動すらおぼえます」

ー続いて、シンガポールのスニーカー事情について聞かせてください。最近は世界的にスニーカーブームと言われていますが、シンガポールも同様ですか?

マーク - 「ニューヨークや東京には及ばないかもしれませんが、人々のスニーカーに対するエネルギーはとても熱いものがあります。シンガポールは独立してからまだ50年しか経っていない若い国で、スニーカーに関しては90年代中期あたりから熱を帯びてきました。当時のトレンドを牽引していたのが日本のストリートファッション誌。『ブーン』や『ストリートジャック』といった雑誌はシンガポールでも強い影響力を持っていました。当時はみんなが同じものを求める傾向がありましたが、その後はランニング、バスケットボール、ヴィンテージなど好みが細分化していき、いまに至ります。そのあたりはニューヨークや東京と同じかもしれません」

ー〈ミタスニーカーズ〉および国井さんはシンガポールでも知名度が高いのでしょうか?

マーク - 「もちろんです。シンガポールに限らず、世界中でその名前が知られています。先週、ニューヨークに行っていたのですが、現地のスニーカーフリークとの会話のなかで、〈ミタスニーカーズ〉や国井さんの名前がよく出てきました」

ー国井さんも過去に何度かシンガポールを訪れたことがあるとか。

国井 - 「はい。つい先日も行ったばかり(笑)。僕の印象としては、シンガポールは東南アジアにおける情報の発信源。お洒落な人も多いし、大きなショッピングモールの近くにスケートパークやバスケットコートがあったりして、カルチャー面でも成熟している。日本も他の国のカルチャーを取り入れて、それらをミックスしながら現在に至りますが、シンガポールも形は違えど、日本やアメリカなど様々なカルチャーを取り入れながら洗練させてきたんだと思います」

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ー最後に、日本について。マークから見た日本のスニーカーシーンの印象は?

マーク - 「世界的に見ても、東京のスニーカーシーンは次元が違うと思います。様々なプロダクトが毎週のようにリリースされている状況は、ある意味クレイジーだなと。履きこなし方もスペシャルな印象ですし、スニーカーに込められたストーリーをよく理解している人たちも多いですよね」

ー日本のストリートカルチャーについてはいかがですか?

マーク - 「私は日本のストリートカルチャーに対して尊敬の念を抱いています。日本にはたくさんのサブカルチャーがありますが、それらはポッと出てきたものではなくて、それぞれが長い歴史を持っている。そういったサブカルチャーに携わっている人たちに会うと、気負っている感じがまったくなく、とても自然な感じがする。今後はシンガポールでもそのようにしてカルチャーが根付いていけばいいなと思います」

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PUMA CLYDE CONTACT "First Contact" "SBTG x mita sneakers" ¥15,000+tax

ブラックは国井栄之、オリーブはマーク・ウォンがデザインを担当。いずれも〈サボタージュ〉のオリジナルのカモフラージュ柄が特殊プリントであしらわれている。

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