【登場人物】
宇佐美陽平 スタイリスト
南井正弘 ライター/Runners Pulse編集長
榎本一生 ライター/SHOES MASTER編集長
〈サッカニー〉のシューズはかつて“高級品”だった!?
榎本:「〈サッカニー〉と言えばまず何のモデルを思い浮かべます? 僕は圧倒的にジャズなのですが」
宇佐美:「同じく、〈サッカニー〉と言えばジャズのイメージが強いかな。ネイビーのジャズがすごくかっこよかったのを思い出します」
南井:「自分のなかでは〈サッカニー〉と言えば高級品のイメージですね」
榎本:「高級品?」
南井:「昔はジャズやシャドーといったメイドインUSAのシューズは高機能で価格も高く、スポーツシューズのなかでも高級品というイメージがあったんです」
榎本:「へぇ、そうなんですね。昔というのはいつ頃ですか?」
南井:「1980〜1990年代の話です。渋谷のラブラドールリトリーバーなんかで〈サッカニー〉が取り扱われていました。当時は〈ラルフローレン(Ralph Lauren)〉や〈バナナ リパブリック(Banana Republic)〉といったアメリカ東海岸のカジュアルブランドが人気で、〈サッカニー〉のシューズはそのテイストにぴったり合っていたんだと思います」
榎本:「言われてみればたしかにそうですね。〈サッカニー〉のサイドのラインは30代後半以上の世代にはノスタルジーを掻き立てられるところがあります」
南井:「あと、ジャズと言えば、ネイビーやバーガンディといった落ち着いたトーンのカラーが多く、ファッション的にも合わせやすかったです」
宇佐美:「たしかに僕自身もスポーツシューズというよりファッション的な視線で見ていました」
榎本:「いずれにしても、最近はいわゆるレトロランニングシューズがトレンドと言われていますが、〈サッカニー〉は昔からそのあたりは得意分野だったわけですね」
南井:「おっしゃるとおりです」
榎本:「ちなみに、冒頭で南井さんから昔は高級品だったという話がありましたが、現在〈サッカニー オリジナルス〉としてリリースされている復刻版は、当時のクラシックなルックスを受け継ぎつつ、手頃な価格も魅力のひとつになっていますよね」
宇佐美:「たしかにこの価格は魅力ですね」
榎本:「昔は高級品だったジャズやシャドーといった歴史的名作スニーカーが、時を経た今では手軽に買うことができる。スニーカー好きとしてはうれしい限りです」
宇佐美:「あと最近だと、海外のセレクトショップやスニーカーショップに行くと、日本未発売の〈サッカニー〉の別注モデルが置いてあったりしますよね。そういうモデルは配色が面白いものが多い気がします」
榎本:「〈サッカニー〉の別注モデルって、スニーカーフリークのツボを抑えた魅力的なものが多いですよね。その代表格が、ボストンのセレクトショップBODEGAの別注モデル。日本でも話題になりましたし、『SHOES MASTER』の最新号でも大きく取り上げました」
南井:「〈サッカニー〉の別注といえば、日本でも〈ホワイトマウンテニアリング(White Mountaineering)〉がやっていました」
宇佐美:「あれはだいぶ印象変わりましたよね。大人っぽい感じで」
南井:「〈サッカニー〉は〈ホワイトマウンテニアリング〉とコラボして以来、日本のファッション業界における知名度が一気に上がった気がします。余談ですが、デザイナーの相澤さんは以前から〈サッカニー〉が好きだったみたいで、海外に行く度にまとめ買いしていたとか」
サッカニーが市民ランナーから支持される理由。
榎本:「ところで、〈サッカニー〉はファッション性の高いレトロランニングシューズを今もリリースしている一方、最新のテクノロジーを搭載したパフォーマンスシューズも手掛けていますよね。というか、むしろそっちのほうがメインだと思いますが」
宇佐美:「ニューヨークやボストンに行くと、〈サッカニー〉を履いて走っている人を本当に多く見かけます。ランニングショップでも店頭の目立つところに置いてありますし」
榎本:「宇佐美さんも普段から走っているんでしたっけ?」
宇佐美:「走ってますよ。僕は薄めのソールが好みです。あまり厚いと疲れちゃうんで」
榎本:「シューズのデザイン的な好みは?」
宇佐美:「派手なものから地味なものまでいろいろです。走るときのスタイリングは、いい意味で適当なので(笑)」
榎本:「〈サッカニー〉を履いて走ったことは?」
宇佐美:「いや、ないんですよ」
榎本:「僕もないんです。仕事柄たくさんのランニングシューズを履いている南井さんは、もちろんありますよね?」
南井:「4、5足持ってます」
宇佐美:「履き心地はどうですか?」
南井:「すごく走りやすいですよ。特に気に入っているのはキンバラというモデル。ソールはそれなりに厚さがあるのですが、履き心地はナチュラルな裸足感覚。前後の高低差が4mmしかないので、自然と土踏まずよりも前で着地するようになります」
榎本:「見た目もなかなか良い感じですね。ちょっと履いてみたいな」
南井:「最新モデルのトライアンフも良いですよ。ソールが厚いので速く走るには適していませんが、ゆっくりジョギングするにはとても良いシューズです」
宇佐美: 「見た目に関しては、〈サッカニー〉の新しいランニングシューズって全体的に、配色や素材感が面白いですね」
南井:「アメリカではすごく評判いいみたいです。以前、ボストンの本社で聞いたところによると、〈サッカニー〉はユーザーの声に真摯に耳を傾けることをとても大切にしているとか。ゆえに、奇をてらったものはあまり出てきませんが、ユーザーの好みをストレートにプロダクトに反映したものをコンスタントに世に送り出している。そういう意味では、このユニークな配色や素材感は市民ランナーの意見を如実に表したものなんでしょうね」
榎本:「スポーツメーカーのなかにはトップダウンでモノ作りをするところもありますが、〈サッカニー〉はある意味ボトムアップであると」
南井:「そうですね。開発者やデザイナーも普段から走っている人ばかりなので、ランナーがランナーのためにモノ作りをしているとも言えますね」
榎本:「なるほど。色に関しては個人的にはもうちょっと地味なほうが好みですが……。カスタマイズサービスとかあったらもっとうれしいな」
宇佐美:「カスタマイズ、できるといいですね」
榎本:「宇佐美さんがもしカスタマイズするとしたら?」
宇佐美:「うーん、散々迷った挙句、真っ黒とかにしちゃうかも(笑)」
榎本:「あるいは、最近流行りのハイブリッドとかもあったらいいんじゃないですかね。ジャズのアッパーに最新のキンバラのソールを組み合わせちゃうとか」
南井:「たしかにそれ、面白そう」
榎本:「〈サッカニー〉に企画持ち込もうかな(笑)」