2015年春夏。「britsports(ブリットスポーツ)」をテーマに、90年代のイギリスのカルチャーを表現する〈FRED PERRY(フレッドペリー)〉。数あるアイテムの中でも、シーズンテーマの象徴となるのが“トラックジャケット”である。90年代のイギリスの若者たちが、こぞって着ていたというこのアイテム。その背景にある「ブリットポップ」というムーブメントを振り返りながら、アイテムの魅力に迫る。
Photo_Kazumasa Takeuchi[STUH]
Text_Yuichiro Tsuji
Edit_Masaya Umiyama
2015年春夏の〈FRED PERRY(フレッドペリー)〉は、「britsports(ブリットスポーツ)」をテーマに、90年代のカルチャーを投影したコレクションを展開している。ブランドの持ち味である洗練性はそのままに、カラーリングや細かなディティールで当時の空気感が表現されたアイテムの数々。中でもトラックジャケットは、シーズンテーマが色濃く反映された、象徴的なアイテムとなっている。
ポロシャツと共に、いまでこそブランドの代名詞的存在となったトラックジャケット。もともとはスポーツウェアとして親しまれたこのアイテムが、どうしてファッションアイコンとして認知されるようになったのか? その紐を解くには、イギリスで巻き起こった「ブリットポップ」と呼ばれるムーブメントが大きな鍵を握っている。
1990年代初頭、イギリスの音楽チャートは、ニルヴァーナを筆頭としたアメリカのバンドが上位を賑わせていた。しかし、1994年4月にニルヴァーナのフロントマンであるカート・コバーンがこの世を去ると、イギリスでのグランジブームは影を潜める。このカートの死と同時期にリリースされたのが、ロンドンのバンド・ブラーの「パークライフ」で、イギリスのバンドの復権を期待するリスナーたちがまさに待ち望んでいた作品だった。それに拍車をかけるように、同年8月にはオアシスが「ディフィニトリー・メイビー」でデビューし、「ブリットポップ」を代表する2大バンドがここに揃うこととなった。
1995年にオアシスは2ndアルバム「モーニング・グローリー」を発表。この作品が440万枚の売上げという大きなセールスを記録し、イギリス国内のみならず世界中にブリットポップの存在を知らしめるきっかけとなった。そのようにしてムーブメントの動きは次第にエスカレート、メディアはたくさんのバンドを持ち上げ、シーンが陳腐化。そんな状況に釘を刺したのが、1997年にリリースされたブラーの「ブラー」である。従来の“ブリットポップ色”は影を潜め、アメリカのロックシーンを意識した作品の発表により、シーンの過剰な賑わいは平静を取り戻した。
しかし、そんな彼らでも共通点があった。それが、着ている洋服。つまり、デーモンもギャラガー兄弟も、トラックジャケットを着ていた、ということ。1960年代に発端したモッズ文化をベースとして、1970年代頃からスポーツウェアがファッションとして取り入れられるようになっており、一部のミュージシャンたちがそれを体現していた。それがザ・ジャムのポール・ウェラーであったり、ザ・ストーン・ローゼズのイアン・ブラウンである。現に、オアシスのノエル・ギャラガーはポール・ウェラーのことを父親のように慕っているし、80年代から90年代初頭に活躍したザ・ストーン・ローゼズが、後の「ブリットポップ」シーンで活躍するバンドたちに与えた影響は絶大であった。だから、デーモンもギャラガー兄弟も、それらの文化に影響されたと想像するのは容易であるし、後に彼らがトラックジャケットを身に纏い、ステージで音楽を奏でる姿が、広くたくさんの人々に影響を与えたことは紛れもない事実である。これによって、トラックジャケットにデニムやスニーカーを合わせた若者たちが、イギリスのストリートやライブハウスに溢れ、トラックジャケットがファッションアイテムとして認知されていった。
このように、ブラーやオアシスの登場によって市民権を獲得したトラックジャケット。90年代のファッションが取り沙汰されるいまだからこそ、注目したいアイテムだ。今シーズンのフレッドペリーでは、3型のアイテムをリリースしている。
冒頭でも述べたように、カラーリングや、袖のテープ、ラグランスリーブといったディテールで当時の空気感を表現しつつ、シルエットはフレッドペリーらしく、あくまでモダン。現代のファッションに取り入れやすい仕様になっているため、ぜひ袖を通して、90年代のカルチャーを体現して欲しい。
「britsports TRACK JACKET COLLECTION」
フレッドペリーショップ 原宿
電話:03-5770-6920
www.fredperry.jp/