Number 16
銀座 香味

銀座にあった本場の台湾。

オランダ、スペイン、ポルトガル、日本、中国などの植民地だった歴史を乗り越え、それらの国々の食文化のいいところを取り入れながら、独自の確固たる食のスタイルを築き上げた国、台湾。結論からいえば、台湾健康漢方火鍋料理「香味」で締めに食べた麺の汁と、さらにその後、あらゆる具材から出たその出汁の豊かな味わいを利用したおじやから、何層にも重なり、それでいてそれぞれが1つとなってこちらに語りかけてくる旨味を、充分に堪能させていただいた。

銀座の交差点から徒歩1分弱の地下一階に、「香味」はある。都内でも明らかな一等地で、どうしても敷居が高いと思いがちだが、一度中に入れば、その暖かな雰囲気をすぐに体で理解できる。

23年前、この地に店をオープンさせたのは現店長河田さんのお父上であり、「銀座で庶民的ないい店を」がコンセプトだったという。「食べ物も一種の芸術。口に運んでから、胃に辿り着くまで計れば10センチほどのための贅沢」と、おっしゃる河田さんは元々建築事務所に勤め、御自身で描かれたという、店内に数点飾ってある水彩の風景画の腕前も、かなりのものだ。

人気のレディース・セットは、"レディース"とは名ばかりに思えるほどのボリューム。美味しいお肉はもちろん、海老や帆立といった海鮮素材に、イカや魚の団子、雲呑餃子に5種類もの茸類、そして、シャキシャキな歯応えで健康への効果も大きなゆりのつぼみが嬉しい。"美味しい、安い、デリケート"のモットーに、女性が喜びついついいつもより箸を進ませてしまう姿が容易に想像できる。

鍋以外のメニューも文句なく美味。その中であえて言わせていただければ、"芸術としての食事"が凝縮されているのは、生卵とかき混ぜて鍋の具をつけて食べる、店に伝わる秘伝のタレ"サァ・ツァ"だろうか。辿れば中国広東省発祥の、複雑かつ洗練された味わいのタレに、様々な文化のハイブリッドたる台湾の核心を垣間見た。


銀座 香味
住所:東京都中央区銀座5-8-16 ナカヤビルB1
電話番号:03-3573-3540
営業時間:11:30〜15:00 17:00〜23:30(平日)、11:30〜23:00(土・日・祝日)
定休日:なし








お漬け物まで気の利いた味。
人気の揚げパンはそのまま食べても、秘伝のタレと卵ミックスにつけても。
ほんのり甘く、シャキシャキの歯応えが美味しい切り干し大根入りオムレツ。
揚げたイカ団子はホクホク温かいうちに。
ただでさえボリューム満点なのに、よくばって排骨飯まで食べたくなる。
主役のお肉は霜降り牛から豚、鴨、ラムまでお好みで。
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで、世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
かつてない程永遠文章を書き続ける日々のため、ほぼ体験したことのない極力家から出ない生活。その地味さが如実にブログmadfoot.jp「独壇場」に反映されてますが、いつ頃解放されるかな。