vol.12
BENETTON [COLORS]
ベネトンが送り出す雑誌「COLORS」と
新技術"AR"がもたらす紙とウェブの融合に迫る
およそ20年という歴史を持つ季刊誌に「COLORS」というものがあります。これは〈ベネトン〉が発行しており、充実した誌面内容で常に人気を集めてきました。今回は、既存の表現方法に止まらない新しい試みを敢行する同誌の仕掛け人に話を聞きました。
常に変わった味の雑誌を作るために、挑戦を続けている。
―「COLORS」といえば、ベネトンが発行する雑誌として、世界中に高感度な読者を抱えていることで知られています。改めて媒体のコンセプトというものは何でしょうか?
エリック ラベロさん(以下エリック、敬称略):「COLORS」のコンセプトは、ダイバーシティ(人間の人種、文化などの多様性)は、ポジティブなものであり、また全てのカルチャーは同等に価値のあるものである、という考え方にあります。この雑誌は、異なる人種と人種の調和(ハーモニー)や、人間の多様性を称賛しているのです。「COLORS」は、1991年に産声をあげてから、広い視野でのグローバル・ジャーナリズムと、世界の隅々までを考慮した報道という名の使命を持って集められた物語(ストーリー)で成り立っています。「COLORS」の18年間の伝統にのっとり、それぞれの号が全く異なるテーマのもと、世界中の『今』を時に大々的に、そして遊び心を忘れずに観察し、調査を続けています。「COLORS」の目的は、『世界の、その他の地域についての雑誌』であること、そして通常ではメディアに取り上げられないような人々に『声』をあたえるということです。
―それでは編集方針や気に掛けている部分などを教えてください。
エリック:我々は、『常に変わった味』の雑誌を製作しようと挑戦し続けなければいけないと思っています。そして、それが陳腐な表現やありきたりのモノになってしまわないように心がけています。そのマジカルなバランスを保つため、各号を製作する上でのリサーチ調査の段階が最もデリケートな時間だと考えています。「COLORS」は、従来型の標準的な雑誌ではありません。良いクオリティーを保ちながらも、どこまで『しきたり』から遠ざかるか、という挑戦をし続けています。
―紙媒体と並行してウェブについての展開もされてますが、そういった部分に対してはどういったスタンスなんでしょうか?
エリック:「COLORS」76号のティーン特集を製作することが大きな挑戦だった理由が2つあります。 第一に、www.colorsmagazine.com上のWebのインタラクティブ用プラットフォームを、一から作り上げなければいけなかったこと。「COLORS」は、世界のその他の地域のための雑誌である。そのため、「COLORS」と各地に潜む素晴らしい物語を繋げる方法を模索し続けて行く上で、インターネットがまだ全く浸透していなかった時代から、ウェブのアプローチを重要視してきました。この76号では、写真や記事などのアイディアを投稿してくる世界中の人々に、ウェブサイトをオープンにすることにしたのです。そして我々が考えたのが、『ウェブからプリント(印刷媒体)』というコンセプトでした。ウェブへ投稿される作品は、まず全てウェブ上に掲載します。そして、選び抜かれた最高のストーリーを紙媒体の「COLORS」に掲載しました。「COLORS」では、だれもがジャーナリストであり、いわゆるコンペ的な要素もあるのです。
―今日では個人的にウェブ上から何かを発信している人も多いですしね。
エリック:誰もがブロガーになれる時代ではありますが、自分の作品が実際に「COLORS」のような雑誌として印刷されるということを、みんなとても好んでいるように思えます。インクと紙は、まだ価値のあるものです。もしかしたら、これからもっと価値のあるものになっていくかもしれませんね。
―日本でもメンズ向け紙媒体の総数が減りつつありますが、まだ根強いファンもいます。紙とウェブの融合は常にいわれながらも上手に結実しているケースが見あたらないのが現状です。
エリック:この、ウェブからプリントというコンセプトのおかげで、我々が今まで知らなかったジャーナリストや写真家たちから、数多くのすごい作品やストーリーが集まりました。この表紙だって、まるで聞いた事のない日本人の写真家から送られてきたものです。
これが表紙。世界中のクリエイターから熱い視線を注がれているだけあり、誌面内容は常に最先端の試みを行っている。
カコミ内にあるQRコードのような記号をPCで読み取ることによって、ARが作動するようになっています。