NICOLAS A.TARALIS

―09 S/Sからメンズコレクションをスタートしたきっかけは何ですか？

ニコラ アンドレア タラリスさん（以下ニコラ、敬称略）：04年のデビュー以来、ずっとレディースコレクションを作ってきました。メンズのコレクションを始めようと思ったのは、06年から半年間デザイナーを務めた〈チェルティ〉を辞任した時からですね。その後の半年間で気持ちに整理をつけてイメージを構築しました。自分の中にあるナチュラルな気分を、よりニュートラルな場所で見つめ直してスタートしようと思ったのがきっかけです。

―今までのレディースコレクションでも"ユニセックスな服"という提案がみられましたが、それとの違いはありますか？

ニコラ：確かに今まで作ってきたレディースコレクションは、ユニセックスなものが多くメンズでも着られるように作っていました。しかし、その多くがファッション性の高いアイテムばかりで、日常生活の中でリラックスして着られるものが少なかったんです。それに比べてメンズコレクションは、より成熟した"男性のための服"をイメージして作っています。

―なるほど。完全にメンズが着るための服を作ったということですね。

ニコラ：そうですね。でも、ある意味では分かれているし、ある意味では分かれていません（笑）。例えば、分かれているという意味ではメンズコレクションは、自分のライフスタイルに合わせて楽に着られる服をベースに作っています。しかし、レディースコレクションでも同じファブリックやパターンを使っている事があるので、共通のものであるとも考えています。男の子でも女の子でも共有できる服っていうのが、今っぽさなんじゃないでしょうか。

―10 S/Sのメンズコレクションでは幾何学的な柄やカッティングが目立ちますが、デザインするときに、いつもイメージしているものはありますか？

ニコラ：基本的に毎シーズン、幾何学的な柄や構築的な要素をデザインの中に取り入れています。それは僕がデザインを始めた時からのコンセプトなんです。もともとファッション以外にコンテンポラリーアートが好きで、そこからインスピレーションを受けたものとも言えますね。分かりやすいところでは、幾何学的なTシャツのプリントがそう。それ以外でも肩のラインや袖のシルエットなどのあらゆるパターンの中に、その要素が含まれています。

―影響をうけたコンテンポラリーアートはありますか？

ニコラ：具体的に上げられる程、ひとつのアートに影響を受けたことはないですね。好きなものを自由に見てイメージを吸収しているといった感じです。その集積の中からヴィンテージっぽい部分の仕様であったり素材を選ぶ時などにインスピレーションがわく事があります。

―今年リリースされる10S/Sメンズコレクションの中で、一番こだわったポイントを教えてください。

ニコラ：純粋さと機能性を重要視しています。特に素材をウォッシュすることで生まれるイージーな雰囲気やリラックス感にこだわりました。一番気に入っているのは、デニムのウォッシュ加工ですね。メンズコレクションでは初の試みですが、ねらい通りのリラックス感が表現できたので仕上がりに大変満足しています。

―確かに。全体的に見ると、クールなデザインの中にリラッックスした雰囲気が感じられます。

ニコラ：さらに純粋さの中に見え隠れする敏感で壊れやすいといった精神的なイメージを、ヴィンテージ加工を施すことで表現しています。決して、春夏物だからリラックス感を出すためにヴィンテージ加工を使ったというワケではありません。これからも、このイメージをデザインにプラスしながらアップデートしていきたいと思っています。

―今年の春から、パリで07年から休止していたショーをメンズ・レディースともにスタートするそうですが、その意気込みをお知らせください。

ニコラ：今は、懐かしいという気持ちでいっぱいです。休止していた期間を振り返ると寂しかったんだと思います。今回はスペシャルなアイテムを数多く作っているので、それを早く発表したいっていうのが意気込みですね。

―期待しています。

ニコラ：ありがとう。