vol.66

JUNが求める次世代を担う幹部候補とは?

jun_001.jpg

JUNグループが新たに「VISION JUN 2020」を発足。
これからの時代に求められている人財について
佐々木社長とメンズノンノ日高編集長が対談。

新たなコンセプトショップとして生まれ変わった、白金の「アダム エ ロペ ビオトープ」。海外からも注目度の高いショップをつくり出したのは、設立50年を越えるJUNグループ。そんな、JUNが2020年に向けて、新たなヴィジョンを掲げる。経歴なんて関係なし。新しい観点で、新しいことを生み出す情熱がある人を募集するとのことで、JUN代表取締役社長の佐々木進さんとメンズノンノ編集長の日高麻子さんがビオトープで緊急対談。メンズファッション誌を束ねる女性編集長ならではの、ユニークかつ熱いご意見をいただきました。

必要なのは「志」と「情熱」そして「真摯さ」。

─まずはお2人に人財についてお伺いしたいと思います。


佐々木:日々の雑誌作りの中で、クリエイターの方々を育てている実績のある日高さんにお聞きしたかったのは、ずばり人財について。どんな人が編集部にいて欲しいものなんですか?

日高:実はメンズノンノは来年で25周年なんです。創刊当初からずっとメンズノンノにいるのですが、今年はいままでで最もメンズの市場が見えづらかった1年でした。創刊時はDCブランドブーム真っ只中ですが、まだファッションに特化した雑誌も少なったんです。メンズ誌がやればそれだけで新鮮、という企画やアイデアは山ほどあって、ほとんど悩むことなく走ってこれた。ただ、今年は悩みました! これだけ市場も成熟してくると、もはや当たった企画だからといって同じやり方では2度目は通用しません。ずっとメンズノンノにいるだけに、もはや私自身の考え方も凝り固まっているかもしれません。そんな私に、全然違った角度からの意見で、それ違うんじゃない? と言ってくれる人がいてくれるとうれしかったりしますね。

佐々木:それは具体的に言うとどういったことですか?

日高:全く違う見方ができる人で、全く違うやり方をやる人なんですが、目指しているところは一緒で、同じ目的を達成できる人。最低限、自分が何をやりたいかの志を持っていることは大事です。それがないと話が通じないですよね。ドラッカーじゃないですが、ひと言で言うと真摯さ、でしょうか。真摯さとは、目的を達成することへの一貫した正直さ、というような意味でしょうか。

jun_002.jpg
佐々木:志や情熱というのは大事なことだと思います。ファッション業界以外でも、例えばアートや建築家の方々の中にも、一流になればなる程、自分の専門分野外のことを専門的に話すことができたりするものです。そんな方々の意見は普段では考えていないことがたくさん含まれていて、とても参考になったりしています。特に、建築家の安藤忠雄さんは強烈でしたね。人をその気にさせる対人影響力がすごい。

日高:ファッション以外に強みを持っていて応用できる人は魅力的ですよね。編集部にもいてくれたら、とても面白いんじゃないかと思います。ファッションも好きだけど、音楽でも、アートでも、食でも、誰よりも好きで、得意な分野を持っている人。

佐々木:スキルやテクニック、知識というものは、意識的にこなしていけば後々得られるもの。僕も、それよりも、ファッションだけでなく、方々にアンテナを張っている人、世の中に疑問を持っている人の方が気になります。情熱があって、常に考えて行動している人。そんな方々には是非会ってみたくなってしまいますね。

ファッションの価値観や捉え方が日本はまだまだ低い。

─デザイナーやクリエイターと一緒にお仕事をするメンズファッション誌の編集者の立場として、作り手側に注文したいことありますか?


日高:注文というよりも、デザイナーやクリエイターなどの才能のある人に発表の場があって、多くの人の目に触れる環境があることが大切ですよね。それを、よりわかりやすく、深く、広めたり、伝えるのが私たちの役目だと思っています。才能のある方と出会えることは、私たちにとって何よりもうれしいことなんです。雑誌作りで意識しているのは、ただ素敵なファッション写真を見せるということだけでなく、その写真の奥や、先にあるものも見てもらいたいということ。もしファッション初心者である読者にとって「こんな派手な服、外じゃ着れない」と感じられるようなものが紹介されていたとしても、私たちが伝えたいのは、その一枚の写真から得られる服以外の情報だったりする。「このまんまを着こなすのは今は無理かもしれないけど、なんかかっこいい、ファッションってすごいかもしれない」といったような、心のざわめきを起こすことが出来たら、と思います。さらにこのデザイナーはこんな人で、こんなことに心を動かされて、こんな気持ちでこの服を作っているのです、といった服の背景の部分も誌面で伝えること。作り手の表情が見えるようにして、作り手を理解してもらった上で、洋服を見てもらえるとより一層その洋服が好きになると信じています。世界のなかでも、日本の男子のファッション感性、学習能力はずば抜けていると思いますしね。そして、男子は女子に比べて、繊細だし、シンプルでなかったりする。女子は見た目でOK。かわいいものは、かわいいとなりますが、男子は物の作られている過程や、文化的な背景が心に響く。好きなものを好きと言えなかったり、なかなか本音を出してくれないのが今の若い男子の特徴です。

佐々木:僕もそういった方々にチャンスを与えることが仕事だと思っています。フランスやイタリアなどのヨーロッパでは、商売としてのファッションよりも、文化としてのファッションに重きを置いていますし。ヨーロッパのアパレル企業はファッション以外の社会活動にも注力している。文化的な活動や地位を上げる活動をやっています。JUNもやっていくべきことだと考えています。

jun_004.jpg
日高:パリでは国家をあげてファッションに対する価値観をあげようと努力していますね。NYでは市が、「ファッションズ ナイト アウト」を盛大に行った。ちょうどそのタイミングでNYに出張で行っていたのですが、街中人があふれていてすごかったですね。みんなが洋服を買っていたかどうかではなく、まずは、人が外に出ていて、楽しそうだったというのが素晴らしい。それに比べて、日本はまだまだファッションに対する価値は残念ながら低い。洋服という歴史がまだまだ浅く、人間の生活に欠くことのできない文化として認められてないのが事実なんでしょうね。ファッション誌を作っている人なんて言ったら、世間では変わった人、くらいに見られてますよ (笑)。

佐々木:作り手側としては、着飾る場も提供できればと思いますよね。せっかくお気に入りの洋服を買っても、それを着て行く場がない。JUNでは、いまは残業禁止運動というのをやっています。まずは、自分たちが早く帰って外で遊ぶことが大事だと思っています。他のものごとに影響を受けないと、アイデアだって出てきません。自分たちができないようでは、みなさんもなかなかできるわけないですもんね。

12