MUROが手掛けるジェームス・ブラウンの名曲ミックス!
2013.05.31
―今回のミックスに関してMUROさんとしても思い入れがあると思います。こだわりや聴きどころを教えてください。
MURO: まずジェームス・ブラウンの曲をイジれるっていうのが奇跡的なんです。過去にリミックスは1度あるんですが、曲のピッチを変えたりできること自体がすごいことなんですよ。そんなこともあって、最初にお話しをいただいたときにとても驚きました。
―そうなんですね。
MURO: あとは映画のサントラのスコアを手がけているつもりで作りました。「DOWN AND OUT IN NEW YORK CITY」から始まっていく感じとかですね。それ以外でも、途中でライブバージョンを差し込んだりしながら、DJingの楽しさも伝えられるような構成を意識しました。
―これまでのMUROさんのミックスでも、ライブバージョンの曲が良いタイミングで流れますよね。
MURO: 昔からワクワクするっていうか。かっこいいライブバージョンがあったら、それをどうにか活かしたいという気持ちがあるんです。ジェームス・ブラウンにしても、やっぱりライブが有名なので、今回も使いたいなと思っていました。
―なるほど。
MURO: それと、僕も歳を取ったからかもしれないんですけど、ディスクユニオンのSOUL/BLUES館みたいな、年齢層が40~50代中心のところに行くと、「これは"ガシャガシャ"してるからいらない」みたいな会話が聞こえてくるんです。
―"ガシャガシャ"って具体的にはどういうことなんですか?
MURO: 音の数が多いのか、スクラッチが入ってるのか、そういうことだろうなと思うんです。それと80年代ってディスコのいいとこ取りみたいなメガミックス文化が多かったじゃないですか。その周期がまた回ってきていて、いまもたくさん出てますよね。年齢が上の人たちはミックスっていうものを通ってきていないから、抵抗を感じるんじゃないかなと思うんです。
―おそらくその通りだと思います。
MURO: 僕はそういう人たちにも届くような、もうすこし音楽的なノンストップものを作りたいなとこの数年努力をしているんです。実はちょうど今回のミックスが出た日に、気になってレコード屋に行ってみたんです。年齢層が高いところで反応はどうかな? と思って。そしたらちょうどレジ前で、僕のことを知らない方がミックスを手に取って「これはどういう人なの?」って店員さんに聞いていて。うわーこれは入っていけないなあ、と(笑)。あとで伺ったら買っていかれたそうで、一安心ということがありました。
―僕らのような30代くらいの世代は、ジェームス・ブラウンのことをちゃんと知らないから、という気持ちが購入につながったりもすると思うんです。でも年齢が上の人たちで、もともとジェームス・ブラウン好きな人からすると、また違う気持ちで手に取るんじゃないかなと。
MURO: そうですよね。だからそういう意味では今回はチャンスだと思ったんです。こんな聴き方ができるんだとか、ぜんぜん違う風に聴こえるとか、この曲こんなによかったっけ? とか、セレクトや並びの重大さとか。そういうこと全部を、たくさんの人にわかってほしいなという気持ちはありますね。
―では最後に。MUROさんが考えるジェームス・ブラウンの魅力とはどんな部分でしょうか?
MURO: やっぱりパイオニアなところだと思います。 FUNKにしてもHIPHOPにしても、さっき話したライブの熱さにしても、いろいろなことの基準になっている人だと言えるんじゃないでしょうか。それにループミュージックの美しさを教えてくれたのもJBですね。延々とグルーブをループしながら歌っていく手法は、今のラップにもつながっていると思います。
―はい。そこは改めてミックスを聴いていて、HIPHOPだな~と感じました。
MURO: そういう意味でも、今回はプレッシャーもあったし本当に大変でした。JBのミックスって実は過去にたくさん出ているです。例えばJ.ロックがやっていたり、ストーンズスロウの他のメンバーがやっていたり、あらゆるミックスを全部聴きました。
―そうなんですね。
MURO: やっぱり同じような構成になるのは嫌なのでけっこうアレコレ考えましたね。制作に入る前と後に、おじいちゃんのお墓参りに行ったくらい(笑)。それだけ今回は大変だったし、逆に言うと思い入れのある1枚に仕上がっていると思います。