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歌うことって、どういうこと。 ハナレグミ×小池アミイゴ 『だれそかれそ』の歌とアートワークをめぐる ぽつんと優しい音で紡がれた町の景色の話し

2013.07.09

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歌うことって、どういうこと

-今回、アルバムの選曲を決定するとき、選び方の基準などはあったんですか?

永積: ふだんから、けっこう弾き語りとかのライブでカバーすることは多くて、改まってカバーっていう感覚は、あんまり自分の中でしっくり来なかったんです。自分の中では、他人(ひと)の曲っていう気持ちもなく、自分のことのように、他人の言葉とか詞を歌うっていうのはずっとあったんで、選曲の時もカバーアルバムを出すためにカバー曲を選ぶっていうのが、やっぱりしっくり来なかった。

小池: 初めて打ち合わせたときに、タイトルを紙に書いて見せてもらって、曲順見て、(崇くんの)今までの時間がパッと解凍されたような感じがして、選曲という行為がもはやすごい表現になってるなコレって思った。

永積: やっぱり、今まで歌っていた曲だったり、自分の今までの時間の中で、風景とか、自分の起こった出来事と一緒にその音楽があるような、そういうものから歌うのが自分らしいのかなぁと思って...。だから、ずっと知っていたりとか、ライブでやってはいないにしても、なんかちっちゃい頃に歌っていた曲とか、そういうものを選びましたね。ずーっと曲並べたときに、自分のオリジナルを作る以上に、なんか自分の中心の部分ていうか、ちょっと黄昏れている感覚っていうか、そういうものが逆に浮き彫りになってるなぁと感じました。

小池: 俺は昔から、崇くんにセクシャルな歌を歌ってもらいたいと思ってた。短絡的なHな歌じゃなくて、ちゃんと生きるセクシャリティーみたいなものを、すぐではなくていいから、ゆっくり探してって欲しいなと思って...。きっと社会の若いコたちが悩んでる身体とかセクシャリティーみたいなことを、ちゃんと埋めてあげられるような歌を残せるんじゃないかなとすごく思ってたのね。ずーっと待っていて、今回「甘いくちづけ♫」、来たなコイツ!オリジナルの井上陽水さんの夜のムードを一回解凍してあげて、今のコたちが足りてない部分にポンと新しい歌として届けられたんじゃないかなと、そんな風に思いましたね。

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-『接吻 kiss』ってこういう歌詞だったんだっていうことも、今回改めて気付いた気がします。

永積: 僕も、そうなんですよ。それこそ18歳か19歳くらいのときに、田島さんのオリジナルを聞いたけど、その時はサウンドがかっこいいなぁと、やっぱオシャレだなぁと思って聞いてたけど、今回歌ってみたら、「焼けるような戯れの後に 永遠に一人でいる事を知る」っていう、ものすごいパンチラインだなって思って...。そういう悲しさとかが、音楽っていうものになると、こんなにも共有できて、それで輝いていく...。

小池: 打ち合わせで曲順見せてもらって、世代的にパッともう全部歌えちゃうから、タイトル見ただけで、もうある意味消費しちゃったんだね、自分で歌っちゃってるし。でも、まだ音聞いてないから、これどうすんだろう?って思った曲もあった。でも、できあがってみると、佐良直美さんの大ヒット曲を、懐メロじゃなくて、今の俺たちの歌に変えてくれたんだなぁと思った。これって、褒め過ぎ?

永積: 『いいじゃないの幸せならば』は、決して昭和のその頃の話ではなくて、こういう思いってみんな誰しも持ってる感覚だろうなって思ったんです。今、アイドルに夢中になって「イェー!!」とか騒いでるコの中にも、こういう感覚のコはたくさんいるはず。いつの時代にも変わらないっていうか、人間の元の部分って何も進化しない。やっぱり、僕はその部分にぐっと来るっていうか、いいなぁって思うんです、いつも。

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小池: 今、ハナレグミのパブリックなイメージていうのは、フェスに出て「みんな元気ぃ?」って感じの人だけど、俺が知っているのは六本木とか青山の暗がりで(弾き語りのために)一所懸命コードを確認してる人なんですよ。ただこのアルバムに関しては、そのパブリックイメージを持っている人たちを越えて聞いてくれる人がいるはずなんで、だからやっぱりもう一度、暗がりの中の孤独な、夕暮れ時の孤独な永積崇くんを発見してもらいたいなって、そういう願いはありますね。

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