Interview with Dirty Projectors ダーティー・プロジェクターズ〜追求する不完全さ〜
2012.12.12
-今回は70曲近く作って、その中から40曲をデモにし、さらにそこから12曲に絞ったということですが、収録曲を選ぶ基準というのは何だったのしょうか?
デイヴ: 自分が選定するということよりも、曲自体が自然と導いてくれるんだ。ある曲とある曲が繋がりを持って、それがひとつの集団を成していく。自分の判断でどうこう、という問題とは少し異なって、何と言うか...まぁ、そんな感じなんだよ(笑)。
-では、収録から漏れた曲はどういったものだったのですか?
デイヴ: 今回のアルバムは歌とそのメロディを主体にしているから、インストゥルメンタルなギター主体の単純な曲はアルバムには入らなかったね。
-そのアルバムのテーマですが、今回は過去のアルバムとは異なり、コンセプチュアルな軸に基づいて作られたものではないということでした。結果として、曲単体の個性や強度というのはすごく際立っているように感じましたが、その辺り、実感としていかがでしょうか?
デイヴ: そう言ってもらえてすごく嬉しいよ。まさしく、自分が願っていたのはそういうことなんだ。今回、目指していた1枚があって、それはビートルズの『リボルバー』というアルバム。それぞれ違うテイスト、キャラクターを持った曲が収録されているんだけど、それが1枚のアルバムとして成立している。だから人々が今回のアルバムを聴いてそう思ってくれたなら、僕らの試みは概ね成功していると言えると思う。
-個性の際立った曲が多い中でも、とりわけ異質だと思ったのが「Maybe That Was It」という7曲目のトラック。とても幻想的で独特な質感を持った楽曲で、どこまでも奥深く潜って行けるような感覚に襲われます。
デイヴ: この曲を作ったのは明け方5時くらいで...あのときはこんな曲になるなんて自分でも分からなかったんだ。その日の午後からN.Y.の街へ帰るつもりだったんだけど、夜中ずっと考え込んでしまって、朝の光の中で録音した記憶がある。ドラムとギターパターンから作り始めて...今でもうまく思い出せないんだ(笑)。でも、出来上がったものを聞き返してみたら、とてもクレイジーな曲になっていた。それをメンバーに聴かせてみたら、全員この曲が一番のお気に入りだと答えたんだ(笑)。
-先ほど「今回のアルバムは歌とそのメロディを主体にしている」ということを仰っていましたが、そうした歌やコーラスを重視したロックバンドは昨今とても稀な存在ではないでしょうか。
デイヴ: んー、どうだろうね。まず、今の音響、レコーディングテクノロジーというのはかなり高いから、音の位置の補正から修正まで容易にできてしまう。だから、完璧なものがとても作りやすいんだ。逆に、僕らが大事にしている人間の歌声というのはすごく不安定なもので、大人数で一緒にハーモニーを作り上げようと思うとすごく難しいし、大きなリスクを伴う。ライブではそれを機械で補正できるわけではないし、みんなそういったことを恐れてやらないんじゃないかな。
-ある意味では、そういった「不完全さ」というのはバンドが最も重要に考えている部分でもありますよね。今回のアルバムはその「不完全」な要素というのが非常に高い次元でまとまって、作品に収められていると思います。
デイヴ: ああ、まったくその通りだよ。そもそも、人生に完璧なんてありゃあしないし、きれいごとだけでもないからね。あっちこっち奔走して、何度も試行錯誤して、そうやって生きてきた。それはレコーディングにも同じことが言えると思うんだ。不確定な要素こそ、人生そのものだよ。
-あなたたちは常にその「不完全さ」を常に追い求め、楽しんでいますよね。
デイヴ: ハハハ、もちろん。だからここにいるんだよ。