MURO約5年ぶりのオリジナルビートアルバムが完成。
2012.12.10

日本が世界に誇るDJ・プロデューサー、"King Of Diggin' "ことMUROが、約5年振りとなるオリジナルのビートアルバムを発表。タイトルはずばり「DIGGIN' FOR BEATS」だ。ここ数年のプレイスタイルにも色濃く反映されている、ジャンルを超えた音の広がり、ビートの太さ、そしてHIP HOP的なコラージュ感覚を、この1枚に集約。MUROが追求し続ける「DIG」と「DJing」の集大成がここにある!
Photos_Yusuke Miyake
Edit_Masaki Hirano
―いつものDJプレイを聴いているような、あっという間の15曲でした。やっぱり現場でのプレイを意識した曲が多いんでしょうか?
MURO:最近インストプレイの機会が増えてきて、実際に自分でかけたい曲を作ろうという気持ちはありました。
―曲作りのプロセスを教えてもらえますか?
MURO:日頃から、「この2小節が気持ち良いな」とか「この部分をループしたら良さそう」とか、そういう気になる曲を分けているんです。そうやって分けて溜まっている曲を改めて聴き直したり、頭の中に散らばっている、かっこいいなと思う曲なんかを、パズルのように組み合わせていく感じです。ミックスもそうなんですけど、僕はそういう作業が好きなんだと思います。
―制作期間はどのくらいだったんですか?
MURO:いつもは集中して何ヶ月かで作るんですが、今回は時間をかけてのんびりと録りためていった感じです。ちょっとやったら、ここで一旦止めておこうとか、割と温めながら作りました。
―なるほど。今回のアルバムは、ますます"黒くて太い"印象でしたが、そのあたりは意識していますか?
MURO:ここ何年かは、好みのジャンルや国の幅がどんどん広がっていって、アフロパンクとか、カリブのファンク・ディスコなんかもすごく良くて、いろんな音楽が楽しめる耳になったのも曲作りに影響していると思います。それに、根本的に誰もやってない新しい物を作るのが好きなんです。昔はアメリカが常に目標としてあって、それに近づけていくことや、アメリカ人が聴いて良いと思うものを目指していたんですけど、いまは独自性のある自分らしいものをやっていきたいなと思っています。そして、僕がやっていることをキャッチしてくれる人たちが出てきてくれたことも、環境的に良かったことだと思いますね。

―個人的には9曲目の「diggin' out jungle」がすごく好きで、エレクトロっぽさのある太いビートと動物の鳴き声にゾワゾワっと鳥肌が立ってしまいました。
MURO:それは嬉しいですね! あれは、「ジャングル・ブラザーズ」の1stアルバムに入っていた「SOUNDS OF SAFARI」という僕が大好きな曲のオマージュなんです。その曲もインストでビートが太くて動物の鳴き声が入っていて、初めて聴いたときは衝撃的なカッコ良さでしたね。その頃のラップアルバムには1曲だけ遊びのような感じでインストの曲が入っていることが多くて、当時DJでも頻繁にかけていたし、自分でもアルバムを出すときはそういうインストの曲を大事にしていました。
―今回のアルバムもそうですが、MUROさんが作る曲やミックスを聴くと「これってMUROさんかな?」という風に、"MUROらしさ"のようなものを感じるんですが、これはご自身でも意識していることですか?
MURO:ここ4~5年は特に好みの音がはっきりしてきているので、自分の中のMURO像みたいなものが表に出てきているかもしれないですね。それに、これはちょっと自分が料理しなきゃいけないな......みたいな使命感も少なからず感じ始めていたりします。
―それは先ほど伺った、アフリカやカリブなんかの曲ですか?
MURO:そうです。かたや「ストーンズ・スロウ」のJ.ロックと作った8曲目の「J.a.M」なんかは、BPMがすごく速いインドの楽曲で、それを逆撮りしてテンポを落として作ったんです。
―J.ロックとはどんなやり方で曲作りを進めていったんですか?
MURO:はじめに僕が音を作って、それをJ.ロックに送ってエディットしてもらいました。作っているうちに、これはJ.ロックしかいないなと思ったんです。僕はそのときどきの運みたいなものを信じていて、ちょうど彼が来日しているタイミングだったりして、そういうことに運命を感じてしまうんです。僕の場合はそういう運みたいなものが、ずっとうまく来ているのかもしれないですね。
