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Interview with Grimes グライムス 〜幼さの中に秘めたプロデューサーとしての強さ〜

2012.10.15

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どんなことがあっても、誰かにプロデュースしてもらうことは絶対無い。

-ところで、あなたはカナダ出身ですが、今もカナダに?

グライムス: 今は特に住んでいるところはないの(笑)。去年の8月からツアーが始まって、今年の12月頃まで続くから、今は必要ないわ。でも、これからはアメリカに住みたいと思ってる。おそらく、NYとか。あそこに住めば、みんながカナダ人ではなくてアメリカ人だと思うでしょ(笑)。カナダを拠点に活動しているミュージシャンもいるけれど、メディアはカナダまで頻繁にはやって来ないわ。だから、メディアのある場所に行かなければと思う。

-ツアーと言えば、7月に「Full Flex Express」というツアーでカナダを回ってましたよね。70年代にGrateful DeadとJanis Joplinが特別列車でカナダをまわった「Festival Express」にインスパイアされたツアーで、DiploとSkrillexらと共演して話題になっていましたが、ツアーの感想を聞かせてください。

グライムス: 今までのツアーの中で一番すごかったわ。観客は男の子だらけで男臭い感じになるのかな、って心配したけど、実際はみんなとてもフレンドリーだった。このツアーでは音楽の作り方を沢山学んだわね。みんなが何から何まで手伝ってくれたし、それは私にとって大きな出来事だった。このフェスには決まったスポンサーが付いていたわけではなかったから、Skrillexが全部、彼のポケットマネーで色々払ってくれたの。

-なかなか太っ腹ですね(笑)。

グライムス: あとは、ツアースタッフを含め、全員がやる気で一生懸命だったのが印象に残ってるわ。電車で旅をしていたというのもあって、すごく楽しかった。ツアーは大抵、バンで旅をするじゃない? 今回は寝台列車だったから全員が四六時中一緒で、夏合宿みたいな感じがしたのよ。

-彼らのようなビックアーティストに抜擢された時は驚きましたか?

グライムス: すごく面白い事だと思ったわね。Hundred WatersとかTOKiMONSTAとか、アップカミングなアーティストがたくさん参加していたわけだし。私とTOKiMONSTAは唯一の女子だったんだけど、DiploやSkrillexが私たちのような"これからのアーティスト"をピックアップしてくれたことはとても嬉しく思っているわ。

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-ひょっとすると、彼らもあなたをプロデュースしてみたいと思ってるのかもしれませんね。

グライムス: 私は自分で自分をプロデュースするわ。私はプロデューサーで、それが私の仕事だもの。シンガーであることは2番目、そう考えてる。自分の音楽はすべて自分で作っているし、どんなことがあっても、誰かにプロデュースしてもらうことは絶対無いわね。

-ツアーの最中に、音楽を作ったりすることもあるんでしょうか?

グライムス: ツアー中には難しいかな。前はビートから作っていたけど、今はボーカルから楽曲を作ることもあるの。ツアー中はボーカルの録音ができないじゃない? 録音できる時間を待つのも嫌だし。たまにビートを作ってみることはあるけれど、ちゃんと聴こえないからイイものなのかどうかも分からない。ボーカルを録音する時にヘッドフォンを使うけど、本当はスピーカーからモニタリングするのが好きというのもあって、ツアー中の制作はちょっと難しいというのもあるわね。

-では、なかなか忙しい時期にトラックを作り溜めるのは困難ですね。

グライムス: でも、ツアーの中休みを利用して、すでに新曲をいくつか録音したりしているの。12月にツアーが終れば本当に予定が無くなるから、音楽を作ることだけに集中しようと思ってる。だから、新しいアルバムは来年の4月までにリリースできたら理想ね。作り始めれば、本当に早いタイプだから。

-少しあなたの楽曲のPVの話もさせてください。「Oblivion」という楽曲がありますが、スタジアムで撮影された、非常にユニークな作品だと思いました。

グライムス: あれはスポーツ的なビデオを作りたくて。自分のイメージだと、スポーツが好きな人達とインディのミュージシャンって、なんとなく対照的で相容れない感じがしてたの。実際は、別にそんなこともないはずなのに(笑)。じつは、私はアメフトの試合に行ったことがなくて、だからそこでプロモショーンビデオを撮影しようと思った。みんなすごく酔っ払うし、雰囲気もいいし、照明も綺麗だし、景色として凄みがある。普通のビデオに比べて、まったく違う世界になったと思うわ。

-面白いですね。あなたは自身のファンを固定しないで、あらゆるリスナーに対して非常にオープンなマインドで接しているように感じます。

グライムス: 私はそうすべきだと思う。誰も仲間はずれにしたり、遠ざけたりしたくはない。例えば「自分たちはメタルの音楽を、熱狂的なファンの為に作っているんだ!」って、多くのミュージシャンはそうやって誰か特定のファンに向けて音楽を作っているように私は思うの。一方で私は、「何でそうやってみんなを遠ざけるの?」って思ってしまう。いわゆる、インディ系ソロアーティストとして、私がたった1人の女子という場面が多いと感じる。それはとても妙な感じ。本来は、誰でも受け入れられる業界であるべきだと思うし、インディの音楽業界が男性ばかりで、女性はちょっとそれを怖がるような雰囲気があるでしょ。それが無ければ、もっと女性のアーティストが沢山出てきてもおかしくないわ。音楽は昔から男社会という風潮があるけれど、私はどんな人も仲間はずれだと感じて欲しくないのよ。

-あなたらしい考えだと思います。ところで、最後になりますが、先日フイナムで取材をしたThe xxのみんなが、今気になっているアーティストにあなたの名前を挙げていました。

グライムス: ホントに? ヤバい。嬉しい! 彼らとはちょうど同い歳で、以前に少しだけ会ったことがあるの。彼らの作る音楽は本当に大好き。プロモーションの仕方も、イメージもかっこいいし、センスも良くて感動させてくれるわ。「新しいアルバムはどうなるの?」って、色んなところでみんな噂をしていたけど、今回の作品もよくできていると思う。ジェイミーは天才だし、ロミーは本当に綺麗な声の持ち主よね。歌詞も魅力的だし。

cf_grimes_album.jpg Grimes
『Visions』
レーベル:4AD / Hostess
発売中

[トラックリスト]
1. Infinite Love Without Fulfillment (Intro)
2. Genesis
3. Oblivion
4. Eight
5. Circumambient
6. Vowels = Space and Time
7. Visiting Statue
8. Be A Body
9. Colour of Moonlight (Antiochus)[featuring Doldrums]
10. Symphonia IX (My Wait Is U)
11. Nightmusic [featuring Majical Cloudz]
12. Skin
13. Know The Way (Outro)
14. Life After Death(ボーナストラック)
15. Ambrosia(ボーナストラック)

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