World Street Classic Vol.3
2012.07.03
Poggy:それで、刺しゅう繋がりでフミちゃんも。ドラゴン刺しゅうのシャツを。
小野田:そうです。〈シャルベ〉の今年のスペシャルで、辰年だから。
―干支の織り柄なんですね。
小野田:そうそう。でも、この感じがもう〈ステューシー〉に見えてしょうがなくて。
〈シャルベ〉コットンドラゴン織り柄シャツ ¥39,900(日本橋三越本店 03-3241-3311)―これは凄いですね。
小野田:なんか、このオリエンタルモダンな感じがギリギリで、いいですよね。
Poggy:あらためてそういう視点で見ると、欲しくなりますよね(笑)。
小野田:相当、レアアイテムだと思うんです。それで、前立てもあって、スクエアボトムだから、かなりストリートな匂いもしますし。
―(笑)
Poggy:あと、フミちゃんの、その〈VANS〉は欲しいんだよね。
小野田:僕はあまり「クラシックだ、ストリートだ」って気にしなくて。感覚をフラットに持ってくると、この〈VANS〉のキャバレロ見てたら、〈チェザーレ パチョッティ〉のルームシューズと全然変わらなく見えてきて。どっちもスリッポンですから。
―ルームシューズの刺しゅうと同じ感覚?
小野田:このキャバレロもオリエンタルモダンを意識してて「スリッポン キャブ シードラゴン」ってモデル名で、「シー」は「チャイニーズ」だから「チャイニーズ ドラゴン」ですからね。
Poggy:サイズが小さくて手放してしまったけど、〈XLARGE®〉で昔カンフー刺しゅうが入ったスリッポンがあって、あれもカッコ良かったんですよね。
小野田:こういう「東洋思想」って「シノワズリ」という美術様式ですし、〈カルティエ〉のタンクシノワーズなんかもこの流れですよね。この東洋思想は、とてもクラシックだなって思っています。
Poggy:HIP-HOPとかにも繋がってきますしね。
―ウータン・クラン(Wu-Tang Clan)とかですね。ビースティボーイズの故MCAもカンフージャケット着ていましたよね。
小野田:クラシック突き詰めて、今度オリエンタル行っちゃったみたいな。
―(笑)。藤原ヒロシさんや祐真さんも〈シャンハイタン(上海灘)〉を着ていましたよね。
Poggy:以前KENSEIくん(VAMPデザイナー)に教えてもらったんだけど『イップマン』って映画があって、それの1シーンでチャイナ服の上にチェスターフィールドコートを着てる場面があって、それが滅茶苦茶カッコ良いんです。
小野田:そうそう、〈エリック・ヘイズ〉のチャイナジャケットっていうのもありましたよね。
Poggy:ありました。今あったら欲しいなぁ。
小野田:きっとストリートな服から"抜く"や"ハズす"っていう感覚は、そういうアイテムを探す作業になってくるんですよね。
Poggy:あと、NASの『The World Is Yours』の元ネタになったT・ラ・ロック(T La Rock)の家に泊めて貰って、オールドスクールの人たちに会いに行ったときに、T・ラ・ロックは夜になると昔自分が出てた映像と、カンフー映画をとにかく観せてくれましたね...。
―(笑)。日本で言うなら「忍者」、中国で言うなら「カンフー」が、強さの象徴ってことなんですよね?
小野田:このオリエンタルなムードを上手く取り入れてるのは誰よりも〈トム・フォード〉。彼が1番上手ですよね。
Poggy:こういう話の展開になると、ますます〈シャルベ〉のシャツが欲しくなりますね(笑)。
小野田:同世代だと、このベクトルの話が出来るから嬉しいですね。
―〈マハリシ〉なんかにもドラゴン刺しゅう入りのパンツがあったり。
小野田:あれも当時ジェームス・ラベルとかFUTURAが穿いてて、まさにあの感じなんですよね、この〈シャルベ〉も。キドいギリギリっていう。アジア人だとハマりすぎてギリアウトかなと思ってはいたんですが。でも、今だったら出来るクラシックの遊びな気もするんですよね。こういったアイテムを今日、小木ちゃんが着ている〈B.B.C〉の〈ターンブル&アッサー〉みたいな感覚で取り入れてみるのはアリだと思うんですよ。
Poggy:このシャツは、ボロボロになってくるまで着たくて。イギリスのシャツって最初は堅いけど、着込むほどに良さが増してくるから、それも魅力なんですよね。
―シャツは着込んで襟や袖がほつれてくるまで着てるのが、カッコ良いですよね。
小野田:芯も見えてきちゃって。
Poggy:イギリスでは絶対にNGなカスタムなんですが、ファレル・ウィリアムズがニューヨークの〈ターンブル&アッサー〉でよく買ってたという経緯があって、ニューヨークのスタッフにファレルのファンがいて本国を命掛けで説得して実現したんですよね。
小野田:その反則技感がストリートっぽくてカッコイイですよね。ストリートがクラシックに認めてもらうには反則技が必要でしょうしね。
―確かに、こういう目線は面白いかもですね(笑)。
Poggy:話は変わりますが、あの『ジェントルマン』の本に和訳があったのは知らなかったんですよね。
小野田:これ、今、すごいプレミアついてるらしくて。若かりしとき〈ブリオーニ〉のプレスルームにいったら、本棚に置いてあって「これあったら最強」って思ったんですが、その時点でもプレミアがついていたんです...。でも、かつてはBEAMSでも版元のクーネマンから直接仕入れたみたいで、定価の¥2,000で売られていたんですよ。
Poggy:当時は、英語版の方がカッコいいと思われていたのかもしれないですね。
―こっちは、邪道だと思われていたんでしょうね。
Poggy:でも今は、日本版の方が圧倒的に欲しい。

Poggy:白州次郎さんの本とかも好きで結構読むんですが、この本が本当に勉強になりまして。1930年代以降とかのスーツの話が書いてある本は結構ありますけど、1800年代の頃の話が記載されている本っていうのは、なかなかなくて。そういうのがきちんと書いてあったので、自分の中で時系列がまとめられたんです。これも当時、各セレクトショップごとに装丁がされていて、ユナイテッドアローズ バージョンはソラーロの生地を使っていたり、タイユアタイ バージョンもあったんですよね。ちなみに僕が持ってるのはドーメルの生地を使ったドーメル バージョンで、そういったレア感にも惹かれるというか。でも、内容はオススメです。
―頑張って探して欲しいですね。
Poggy:クラシックなものがイイなって気付かせてくれたのは、大久保(篤志)さんの影響も大きいんです。〈白山眼鏡〉とか、老舗である銀座トラヤ帽子店とか。
―Poggyの中にスーツの偶像はあるんですか? 時代時代で変わったりもするでしょうが。
Poggy:じつは、次は「自分たちが考えるウェルドレスドマン」をやろうと思っているんですよ。
小野田:じゃあ、次回はそこに流れて行きましょうか。
さて、「WSC」らしいシャツの話から絶妙に脱線したVol.3は、いかがでしたか? スーツだけじゃなくシャツも楽しむ、見えないからと手を抜くのではなく、さらに深く入って行くと新たなトビラが開いてワクワクしてくる感じが、伝わったのではないでしょうか。Vol.4ではPoggy・小野田氏が考えるウェルドレスドマンについて聞いていきます。この話も面白そうですね。