HOME  >  LIFE STYLE  >  FEATURE

LIFESTYLE_FEATURE

  • OLD
  • NEW

『JAPANESE MAKERS 日本の「新」ものづくり列伝』 発刊記念インタビュー! 草彅洋平が見る、ものづくりの未来とは?

2013.03.26

このエントリーをはてなブックマークに追加
lf_japanese_makers_sub07.jpg
企業はもっと意識的に外の人と組んでいかないと。

-それと、今日は本のタイトルについても伺いたくて。

草彅: まぁ「JAPANESE MAKERS」っていうのは、さっきも言いましたけど、クリス・アンダーソンの二番煎じなので。

-笑。ただ『大人の科学』での連載タイトルは「大人のオタク工作部」となっていますよね。そうつけた理由を、当時彼らのようなものづくりをしている人を称する言葉がなかったから、ひとまずそう呼んでみたと書かれていましたが、今だったら彼らのことを「MAKERS」と呼びたい感じですか?

草彅: うーん、でもクリス・アンダーソンの言ってる「MAKERS」って、もう少し意識的なんですよね。ジョブズ(スティーブ・ジョブズ)っぽいというか。アメリカのものづくりって、アートかジョブズっぽいか、それかおバカかっていう、この3つに分けられると思うんですよ。海外のネタを見ていると、アーティスティックなものに関しては、日本よりも評価を得やすい気はしますね。ビジネス的な評価も高い。

-日本との違いはその辺にあるんですかね。

草彅: でも、日本の人の方がある意味、独創性というところではエッジが効いてると思いますよ。ただ、日本と海外の「MAKER」の違いっていうのはすごく難しいんですよね、僕もずっと考えてるんですけど。

-いわゆる昔から言われてる、日本人は几帳面で繊細で、っていう側面はまだあるんですかね?

草彅: いや、今はむしろ日本のものづくりの危機が叫ばれてるじゃないですか。最近では国際技能競技大会の成績低下など、海外のものづくりに負けている部分もあります。だから、技術立国ということに関しては、すでに過去の話になりつつあります。家電の世界なんかは明らかだと思うんですけど。

-確かに、謎の機能がついた商品が未だに作られてますよね。

lf_japanese_makers_sub08.jpg

草彅: そうそう。もっと独創的なアイデアでものづくりをするべきなのに、日本は企業がそれをできてないですよね。海外の方がそういった部分は優れてますね、アップルとか。でも、じゃぁ日本のものづくりは全然ダメなのか、っていうとそうじゃなかったっていうのが、僕の感想ですね。それが「JAPANESE MAKERS」的な人たちなわけで。やっぱり"やってる"人っているんですよ。だけどそれがビジネスになるかって言ったら、大企業がそうした人を拾いきれてないし、まだわからないんですよね。

-そこが日本の課題とも言えるんでしょうか。

草彅: ジョブズみたいな人が必要だと思うんですよね。アップルでいうなら、ウォズ(スティーブ・ウォズニアック)みたいな、ものを作れる人だけいてもダメで、ジョブズみたいなアイデアと方向性を明確に持ってる人がいて、初めて素晴らしいものができあがったわけで。だから「JAPANESE MAKERS」とジョブズ的な人が組むと、そういう現象が起きるんじゃないですかね。

-本書の中にもそういった人がいましたね。

草彅: はい。青木(俊介)さんとかは、色んな企業と組んでやったりしてるし、すごく可能性を感じますよね。「チームラボ(teamLab)」と組んだ、チームラボハンガーもとても面白い。だから、"組み方"だと思うんですよね。企業はもっと意識的に外の人と組んでいかないとだめだと思います。結局、自社内で完結してしまうとあまりいいことはないんですよね。独創性がないですもん。でも、この本に出てくる人たちって独創性のかたまりじゃないですか。「え? なんなの、これ?」っていう。

青木俊介 Miruko

-個人的には冒頭にもお話しした、木で自転車を作る佐野さんはすごく面白いと思いましたね。

草彅: 彼は職人という世界から日本のものづくりを見ているんです。だから含蓄もあるし、自分の言葉に説得力があるんですよね。

-はい。しびれる発言が多くありましたね。「誰も作っていない、人が真似できないことをやるべきだ」って繰り返し言っていますし。その言葉はすごく力強いですよね。

草彅: そうですね。あとは、プロダクトを作る人だけが「MAKERS」ではないと僕は思っていて。別に編集だって、WEBを作るのだって、ものづくりですよね。なぜ僕らが佐野さんの言葉をいいなと思うのかって言ったら、探しているネタとか考え方が近いんですよ。やっぱり人と同じものを作っていたらダメだし、枯れた技術をどうスライドさせて面白いものを作っていくかだし。そういった横井軍平的な視点って、今のものづくりにすごくヒントが詰まってると思うんですよね。そういうのが僕も欲しくて、色んな人に会いに行くんですよ。

-すごくわかります。

草彅: あとポイントは、ネットでバズることなんですよ。フイナムでブログ書いていても、例えば「いいね!」が100以上つくようなネタで書こうとか、そういう風に僕は思っていますが、同じブロガーでもそれを意識的にやってる人ってあまりにも少ないように思えますね。あとそもそも、ものづくりをしている人を取り巻く今の環境に関して、僕なりに思うところがあって。

-はい。

草彅: 一般的に企業が、自分のところで作った商品をPRするのに、有名人を呼んだりするじゃないですか。でもそうではなくて、本当に面白いものを作れば人がわーっって群がってくるっていう、そっちの方が僕は正しいと思うんですよ。本来面白いものを作ってたら、マスコミって勝手に来るはずじゃないですか。でも、いつからかそういうのをやめてしまって、タレント呼んで記者発表みたいなことばかりになっていて。そんなことでできる商品が本当に魅力的なのかって?

-そういった本質的な問題と絡んでいるわけですね。

草彅: そう。youtubeとかニコ動とかでものすごいアクセスをとっている人って、やっぱり人にピンポイントで刺さるものを作ってるんですよ。あと単純に面白いし。ネット上で、どうやって人を集めたらいいのかって考えている人は大いに参考すべきだと思うんですよね。

-そうですね。

草彅: 真鍋大度くんとかは、ソフト、デザイン、システム設計は自分で作ってるんですが、それ以外は人にお願いしてるんですよ。そういう意味では、彼は編集者なんです。だから例えば、アイデアはあるけど、自分で作れないんだったら、作れる人が今はネットで探せるんだから、いくらでも"作れる"んですよ。それが今の「MAKERS」だと思うんですよね。なんだったら、クラウドファンディングでお金も集められる。でもそういう風に使ってる人があまりにも少ないんですよ、今。

真鍋大度 electric stimulus to face

-そうしたところにはものづくりのヒントがぎっしり詰まってますね。あとは最後に一つ伺いたいんですが、草彅さんから見た今のファッション業界ってどうですか?

草彅: 僕が思うに、これからは「ウェアラブル系」が来ると思ってます。僕の知り合いに、色々面白いものを作ってるアレックスっていう人がいて。彼が作ったパジャマは、中にセンサーが入っていて、iPhoneのアプリを起動させると、着てる人が寝てるかどうかがわかるんですよ。

-どんな仕組みなんですか?

草彅: 横になっていると青、起き上がってると緑、歩いてると赤に(iPhone上の)色が変化するっていう。だから、それを体の調子の悪い方とかに着てもらったら、自分が遠くにいても状態がわかるんです。倒れてるとかがわかるじゃないですか。あとはiPhoneを振ると、起こせるんですよ。つまり、手でゆすっているかのような刺激を与えられるんです。と、こういったことができる中で、あまりその分野は進んでいかないですよね。もっと理系のひとたちと組んでものを作ったら面白いのにな、とは思いますけどね。フセイン・チャラヤンとかはすごく早いんじゃないですか? 一番最初にCDプレーヤーとかiPhoneが入る服を作っていましたし。まぁ僕もそのCDプレーヤーが入る服持ってるんですけど、今これどうするんだ?みたいなことはありますけどね 笑。

-笑

草彅: でも、そういうプロダクトって可能性はあると思うんですよね。さっきのアレックスは、右手を挙げるとLEDで背面に「右に曲がります」っていうサインが出る革ジャンを作ったりとか。

-あー、面白いですね。

草彅: もちろんセンサーが入ってるから洗えないとか、外すのがめんどくさいとか、問題はありますよ。ネタとしては面白いけど、みんなが着るかって言ったら着ないわけで。だけど、例えばアメリカ軍が着ている軍服に、いろんな電子ケーブルとかを入れて兵隊の体温とかのデータをとれる、みたいな技術も生まれていて。最終的にはそういうところに行くと思うんですよね。

-なるほど。徐々にそうした機能が当たり前になっていく先に、僕らが思い描くような「未来」というものがあるのかもしれませんね。今日はものづくりの未来につながる、貴重なお話が色々聞けました。ありがとうございました!

lf_japanese_makers_sub10.jpg JAPANESE MAKERS
日本の「新」ものづくり列伝


著者:草彅洋平
発行: 学研マーケティング
価格:¥1,365
仕様: 224ページ
発売日: 2013年3月26日

次のページでは、今回の取材場所である「BUNDAN」を少しだけご紹介します。
BACK 1  2  3  4

LIFESTYLE FEATURE TOP

  • OLD
  • NEW