1914年、イギリス海軍の制服ブランドとしてスタートした〈Admiral(アドミラル)〉。1970年代にスポーツとの関係性を深めることで国外からの注目も集めることとなり、世界的なシューズブランドへと成長を遂げた。現在、ここ日本でも多くのショップで取り扱われているが、支持を集めるその理由とは如何に。第一回目は、別注アイテムを展開する「BEAMS F」のドレス部門ディレクター・吉田周平氏の見識から、ブランドの魅力を紐解く。
Photo_Masahiro Arimoto
Edit_Yuichiro Tsuji
BEAMSドレスディレクター。
<BEAMS F>レーベルのバイイング、オリジナル製作に長年携わり、現在はメンズ・ウィメンズのドレス部門を統括するディレクターを務める。
トレンドを捉えつつも決していき過ぎていない、時代性を見据えたバイイングに定評がある。
ースーツをメインに取り扱う「BEAMS F」で、スニーカーを取り扱っているのは少し意外な気がしました。
吉田:仰るとおり我々の根幹にあるのはオーセンティックなスタイルです。取り扱いはスーツや革靴が中心ですが、その一方で普段ビジネスシーンでスーツを着られるお客さまに向けて休日のスタイルも提案しようと、ここ何年かでカジュアルなアイテムの取り扱いも少しずつ増やしています。
ー提案はあくまで“エレガント”というキーワードが付くんですね。
吉田:そうですね。「BEAMS F」らしさを残したオフの着こなしや、いわゆる“ジャケパン”と呼ばれるスタイルの中でも、よりカジュアルなジャケットスタイルに合わせるシューズとして提案しています。
ーその思惑には、どんな背景があるのでしょうか?
吉田:大きな理由として、大人の着こなしのカジュアル化が進んでいる、というのが挙げられると思います。各国から多くのバイヤーが集う世界最大級の展示会「ピッティウォモ」でも、その傾向が顕著に表れていて。従来はジャケットスタイルの足元に、ドライビングシューズなどの“カジュアルな革靴”を合わせる人が多かった。しかし足元の新定番としていま、スニーカーが台頭してきているんです。
ースニーカーが新定番になった理由を、吉田さんはどう分析していますか?
吉田:アメリカの文化がヨーロッパ、特にイタリアに押し寄せたんだと思います。もともとヨーロッパにはフォーマルな文化があって、そこにアメリカのいい意味でラフなスタイルというのが流入し、より気軽にファッションを楽しむようになったんじゃないかと。イタリア人はそういった新しい文化というものに対して寛容で、どんどん取り入れていくんです。そういう国の風土のようなものも関係しているのかもしれません。
ーそういったトレンドの傾向がある中、「BEAMS F」ではどういった基準でスニーカーをセレクトしているんですか?
吉田:基本的にはローテクのスニーカーに絞ってセレクトしています。というのも、我々がターゲットとしているのは30代半ば~50歳くらいまでのお客さまが中心で、その世代の方々はアメカジブームをダイレクトに体験している。なのでスニーカーの好みはおのずと、当時履いていたようなクラシックなフォルムのものになってくるわけです。ハイテク系のスニーカーは、当時もありましたが、ジャケットに合わせるスニーカーという視点で眺めると、圧倒的にローテクのほうが相性がいい。
ーそういったラインナップの中で、〈アドミラル〉の担う役割というのは?
吉田:〈アドミラル〉は歴史が深いブランドなので、我々がターゲットにしている大人のお客さまたちに対してしっかりと訴求できる力を持っていると思います。そしてデザインは極めてベーシックなので、「BEAMS F」が提案するオフスタイルやジャケットスタイルに合わせやすい。こういったアイテムをお客さまのライフスタイルの中で定番にして欲しい、という想いもあり、2015年春夏からセレクトさせて頂いています。
ー「BEAMS F」が〈アドミラル〉を取り扱うというのがすごく新鮮に感じます。
吉田:我々も同じ想いでいますよ(笑)。お取り扱い前、このブランドには“ストリート”というイメージを抱いていました。でも実際に展示会に伺ってみて意表を突かれた。こんなクラシックなアイテムも勢揃いしているのか、と。
ー実際に取り扱いをスタートさせて、お客さまの反応はいかがでしたか?
吉田:そのときはデッキシューズのようなデザインの「BRIGHTON」というモデルを取り扱ったんですが、クオリティーと値段のバランスがよくて思っていた以上に反応がよかったです。僕も購入してこの夏に履いていたんですが、コーディネートが力まず、適度にリラックスしたスタイルをつくれてすごく活躍しました。