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23 Things of BURTON SNOWBOARDS. バートンを知るための23のキーワード。 vol.17

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Photo_Go Tanabe
Interview_Yosuke Aizawa

グレッグ・ダーキシェン×相澤陽介、スペシャルインタビュー。

〈バートン〉のクリエイティブ部門の統括者。字面だけ見るとかなり堅そうな印象を受けるものの、紹介されたグレッグ・ダーキシェンはとにかく陽気で、お酒とファッションが大好きな人物だった。

そして、プライベートではジャパニーズブランドのウェアに身を包むほどの親日家として知られる彼が自らコンタクトをとり、昨冬からコラボレーションが始まったのが、相澤陽介率いる〈バートンサーティーン〉である。クリエイションをともにする仕事仲間であると同時に、来日した際には必ず相澤のオフィスを訪れ、そのまま一緒に飲み歩くほどの親交を持つ両者による、貴重な対談が実現した。

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スノーボードを通して、様々な人に出会えた。

相澤陽介(以下相澤):現在僕が手掛けている〈バートンサーティーン〉をはじめ、グレッグと知り合ってから〈バートン〉と色々と仕事ができるようになりました。今回は、そんなきっかけを与えてくれたグレッグ自身にスノーボードのこと、そして〈バートン〉というブランドについて聞きたいなと。

グレッグ・ダーキシェン(以下グレッグ):スノーボードに関わる仕事ができて、とても幸せだよ。しかも〈バートン〉は、僕が関わる前からリスペクトされているブランドだったから、この仕事を通して世界中の雪山や都市を旅したり、たくさんの素晴らしい人と会うことができたんだ。その中でも特に印象深いのは、日本のクリエイターとの関わり。96、7年頃かな? 中村ヒロキと仕事をしたのは。当時は〈バートン〉もブランドとして大きくなり始めている頃だったんだけど、日本はちょうど裏原ブームの真っただ中で、幸運なことにその時代で一番クリエイティブでおもしろい人たちと出会えることができた。今でも関わりがある藤原ヒロシもそのひとりだね。当時はロンドンとかパリとか、北米でさえもストリートウェアムーブメントが起こり始めていたのだけど、〈バートン〉はそれよりも少し前から影響力のあるクールなデザイナーとともにおもしろいアイテムを作ろうとしていた。それは時にスニーカーだったりウェアだったり、もちろんスノーボードだったり。でも僕はそれをコラボレーションという大げさなものではなく、一緒に作り上げる感覚でいたんだ。素晴らしい人たちと出会って友達になって、アイデアをシェアして一緒に遊んで、同じパッションを持ってすばらしいプロダクトを作る。頑張って会議するより、一緒にハングアウトして作る時間は、僕にとってもすばらしい時間だった。だから東京に来る時はいつもエキサイトしていたね。」

相澤:今までどんなクリエイターとコラボーレションしてきたのですか?

グレッグ:アウターウェアのプロジェクトマネージャーだった頃は、私の昔からの友達でもあるスタッシュ。当時彼は〈ダブルタップス〉の人たちと働いていて、そこから中村ヒロキに繋がって、ヒロキが藤原ヒロシを紹介してくれたんだ。たしか〈ダブルタップス〉とどこかが作ったカモフラ柄のジャケットを見たことがあって、異なる企業が一緒になってひとつのモノを作ることに対して、すごくクールだと思ったことを今でも覚えている。帰国してから早速そのアイデアをみんなにシェアしたら、「誰がお金を稼ぐんだ」とか「そこにどんな意味があるんだ」と問われたよ(笑)。でもその本質は、アイデアをシェアすることなんだよね。その時は〈アナログ〉のために、ヒロシとヨッピーたちのスタイルから〈バートン〉の世界観を作っていったんだ。アメリカ人の、特にスノーボードの世界ではあまり理解されなかったかもしれないけど、私にとってはとにかくクールなプロジェクトだった。これが98年のことだから、もう大分昔の話だね(笑)。でも当時はまだ〈ステューシー〉くらいしかコラボを取り入れているブランドはなかったから、アメリカと日本のコラボレーションは斬新なプロジェクトだったんだ。

相澤:個人的には、ファッションが好きな人にこそスノーボードの魅力を伝えたいと思っています。それはテクニカルな部分だけではなくて、都会で生活する人にも気軽に楽しんでほしいから。〈バートン〉の人たちは雪山をどう捉えているんですか?

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グレッグ:例えば、ジェイクは常に楽しい時間を求めているから、スノーボードに関係する全てをエンジョイすることが大切だと考えているね。平日はずっと仕事をして、週末は1人ではもちろん、家族や友達ともスノーボードを楽しんでいる。僕たちが機能性を追求することは当然だけど、“スタイル”もスノーボードをする上で重要なんだ。

相澤:確かにスタイルと密接に関係していますね。ただ滑りが上手いだけでは人々を魅了することができなくて、その人のファッションや音楽、哲学など様々な要素がつながっていると思います。

グレッグ:スノーボードとスキーの違いはまさにその個人性にあるね。スキーは元々リッチなスポーツでやれる人も限られていたし、楽しみ方もある程度決まっている。それに対してスノーボードはより個人的な表現だから、自分のやりたいことをする。そして楽しく、若くあること。もちろんスノーボードは今ではメインストリームになっているけど、僕らは常に新しいデザイナーを用いてフレッシュなものを発表していきたいんだ。人々の価値観を刷新していくことに楽しさを見出していきたい。もちろんテクノロジーもプッシュしていきたい。そこが僕たちがスノーボードの分野で追求し続けてきたところでもあるからね。山は、ライダーが彼らの個性を表現できて、しかも彼らの生活の一端であるべきだと考えている。僕たちはただスノーボードを作っている会社なのではなく、ライフスタイルブランドなんだ。そして相澤は〈バートン〉が目指していることを理解してくれていて、僕たちに不十分なところを補ってくれる存在。見た目が良くて機能性が高くとも着心地が悪かったら、決して楽しい時間は過ごせない。

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スノーボード以外のプロダクトでも、人々を幸せにしたいんだ。

相澤:“ライフスタイル”というと、〈バートン〉は今スノーボード以外のアウトドアレジャーにも興味を示しています。テントを作ったりキャンプを提案したりと、とても興味深い。これら雪山以外での提案は、どのような経緯で思い浮かぶものなんですか?

グレッグ:キャンプは私達のコアなジャンルではないけれど、スノーボードを楽しむための一環として捉えている。うちのライダーたちはすごい真剣に登山をするわけではないが、ギターを持って車でキャンプに行ったりと、アウトドアにハマっている人間も多いんだ。そういう愉しみ方の手助けとして、機能的なテントに〈バートン〉らしいアティチュードを付け加えてあげたいなと思ったのがきっかけ。とはいえ、もちろん僕らはテントメーカーではないから、きっと僕たちだけでは不可能なことだったのかもしれないけど、〈ビッグアグネス〉という素晴らしい専業ブランドと組むことによって、〈バートン〉らしさを表現できるプリントやカラー、そしてちょっとした新しい機能を追加することができた。仕上がりには非常に満足しているよ。

相澤:両者はプロダクトの作り方が似ていて、素晴らしいコラボレーションでしたね。

グレッグ:彼らなしではここまでできなかった。本当に素晴らしい関係だ。僕たちはスノーボードの会社だけど、それ以外にも様々なプロダクトを世に出すことで、人々に豊かな時間を過ごしてもらいたいと思っている。

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相澤:グレッグとジェイクはどんな関係なのでしょうか?

グレッグ:少しクレイジーな言い方かもしれないけど、あと少しで結婚していたカップルのようなもの(笑)。僕らはお互い似た考え方をするし、似たようなことが好きで、プロダクトとプログレッシブであることへの愛情を共有し、やることをやる。違いは、僕は好きなものは見た目で選ぶけど、ジェイクは機能性に重きを置いているんだ。例えば「このポケットは深さが足りない」とか「ジッパーはこっちに開くべきではない」とか。だからプロダクトをつくる際には、お互いが補い合って初めて完璧になるんだ。マーケティング面では、僕たちは共に、いかにスノーボードが素晴らしいものなのかを知ってもらいたいと思っている。すばらしいスポーツであるだけでなく、バックカントリーやリゾート地など、アウトドアとして楽しむこともできるし。彼は僕にとって大きなインスピレーション源。彼以上にスノーボードを愛している人はいないよ。だから、僕が二日酔いで横になっていて、彼が手を叩きながら「起きろ!(スノーボードに)いくぞ!」って言えば、「本気かよ…」と思いながらも起きる。一緒に滑る時は、絶対に彼を失望させたくないんだ。スノーボードをやって悪い日なんかないし、友達と一緒に外に出て悪い日もない。そして彼女とも、妻とも家族とも共有できる。それが全てだ。ジェイクは常にそのインスピレーション源だった。キャンプカウンセラーみたいに、「さぁ今日はこれをして、ここに行って」って引っ張ってくれる。彼は誰よりもスノーボードが大好きで、ジェイクのすばらしい部分がスノーボードにもそのまま現れているんだ。

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相澤:スノーボーダーもファッションデザイナーも、常に世界中を旅しています。グレッグの旅のスタイルは?

グレッグ:僕は、旅に関しては全然ダメ。いつも余計な荷物ばかり持って行ってしまうから。最近は着やすいものを選ぶようになって少しはマシになったけど。旅に行くにはチェーン付けすぎかな?(笑)。でも大切なのは、快適で機能的であること。私のスタイルはまさにそんな感じだよ。妻には「ハイヒールなんて履いていったらダメ。Shit goes down!(何かめんどくさいことが起こる)」っていつも言っている。

相澤:具体的に気に入っているアイテムはありますか?

グレッグ:旅をする時はいつも〈ビルケンシュトック〉のクロッグサンダルを履いている。簡単に脱げるし、セキュリティーを通過した後に履くのも楽なんだ。僕が今ハマっているのは、機能的でありつつ、“ルーツ”を持っているもの。ヘリテージとはちょっと違くて。あとは着ていて楽で、とにかく機能的であること。僕や相澤のように常に移動している人にとっては、そういう面でイライラするのが一番嫌だから、いい素材を使っていて心地良いフィット感を持っているものを選びたいんだ。だからこそ機能性を大切にしているし、それこそが〈ホワイトマウンテニアリング〉のデザイナーとして活躍している相澤を選んだ理由なんだよ。

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相澤:ファッションに関して、もし今お気に入りの洋服やプロダクトがあれば教えてください。

グレッグ:一緒に仕事をしているデザイナーのブランドはどれも大好き。〈ホワイトマウンテニアリング〉はもちろんだし、〈ビズビム〉も然り。長く仕事をしているから、彼のデザインフィロソフィーやファンクション、クオリティなどもわかっているからね。あと今シーズンは、〈ネイバーフッド〉ともとてもいい仕事ができた。他に最近気になっているのは、日本のブランドなら〈キャピタル〉かな。〈ニードルズ〉がやっているリビルドというラインも大好きだよ。友達に「ここチェックしてみて」と言われて見るより、酔っぱらって迷子になって、それで探し当てる方が達成感があって楽しいんだ(笑)。それはショップだけじゃなくて、レストランもバーも同じ。

相澤:日本人に紹介したいバーリントンのおすすめスポットはありますか?

グレッグ:バーリントンはヒッピーの町だから大学があるし、ライブミュージックも聴くといい。僕はフィッシュっていうバンドが好きなんだけど、彼らはバーリントン出身なんだ。もちろん、ネクターにも行かなくちゃいけない。あそこでは、スペシャルなグレービーソースがかかったフレンチフライを食べてみて。冬は山も良いけど、夏はシャーンプレーン湖がいい。五大湖に次いで大きい湖で、とても美しい。あとはどこでも美味しい物が食べれるし、飲み物もおいしい。チャーチストリートにはファーマーズマーケットがある。そして今はビールとサイダーが盛り上がっていて、有名なクラフトビールもたくさんある。新しいところは何でもチェックするとすごく面白いと思うよ。ここには本当に好きなことをとことん追求する人々が集まっているからね。

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グレッグ・ダーキシェン
〈バートン〉製品全てのデザインを統括するクリエイティブ部門の最高責任者。過去には藤原ヒロシや中村ヒロキといった日本を代表するクリエイターたちとの協業を実現し、現在は〈ネイバーフッド〉とのコラボレーションラインや〈バートンサーティーン〉も展開中。

BURTON
電話:03-5738-2555
www.burton.com