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23 Things of BURTON SNOWBOARDS. バートンを知るための23のキーワード。 vol.21

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Photo_Go Tanabe
Interview_Yosuke Aizawa

“ショーン・ホワイト“というスノーボードシーンの頂点。

エクストリームスポーツコンペティションの最高峰Xゲームにおいて夏冬合計で15個もの金メダルを獲得し、トリノとバンクーバーではオリンピック連覇を達成。この連載でも度々触れてきた通り、現代のスノーボードシーンで名実ともに頂点に君臨している男こそ、ショーン・ホワイトである。フイナムでは今回特別に、Vol.7でレポートしたプレビューパーティーに訪れた彼にインタビューをすることに成功。ショーンが考える自身のコレクション、そしてこれからのビジョンとは?

自らウェアをデザインすることで、山と街の境界がなくなった。

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相澤陽介(以下相澤) - ボードだけではなく、現在は自身のウェアもデザインしていると思うのですが、ショーンはどんなところからインスピレーションを得ているか教えてください。

ショーン・ホワイト(以下ショーン) - その時々によって異なるんだけど、今はモーターバイクかな。免許を取ったからね。普段バイクに乗るときに着るウェアで好きなものがいくつかあって、例えばブリティッシュにフォーカスしたモーターサイクルジャケットとか、そういったものをヒントにすることはあるよ。でも、それはウェアに限ったことではなくて、ボードも同じ。グラフィックにモーターバイクの要素を落とし込んだりもしているんだ。

相澤 - シグネチャーのスタイルはもちろんよく知っています。その他のアイテムはどう捉えているんですか?

ショーン - まずコレクションとして、ある程度のカラーバリエーションとプリント、そしてファブリックを使用することで幅を持たせたかった。もちろん自分がよく身につけるようなグレーやブラックなどのダークカラーがベースになっているんだけど、実は鮮やかな色のウェアも作っているんだよ。黒いアイテムと合わせて雪山で撮影すると、そのカラーが際立つからね。あとはテクニカルデニムのように、ストリートで着るような素材をスノーボードに持ち込んでいるのもポイント。もっと若かった頃は、雪山でのスタイルと街中でのスタイルがマッチしていなくて、まるで2つの異なる人格のように感じていたけど、今はやっとその境界がなくなって、本当の自分を表現できるようになったんだ。そんな所から、このコレクションは生まれている。

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ショーン - 形は、何着かは少し裾が長くなっているデザインがあって、雪が入りにくいようになっている。あとは裾を少し長めにしてグローブの上に被せることができるとか。

相澤 - そういうアイデアは、滑っているときに思い付くんですか?

ショーン - そうだね。いつも滑っているから、細かいところが気になっちゃうんだ。この仕様はあまり丈夫じゃないとか、パンツが上がってきちゃうのは生地のせいだとか。そして何か気付いたときは、次のシーズンのために携帯やノートにメモしておく。このコレクションがより良いものになるよう、僕も常に成長し続けたいと思っているよ。

相澤 - スノーボード以外ではバンドもやっているみたいだし、音楽からのインスピレーションもありそうですが。

ショーン - コレクションについていえば、ほとんどはモーターバイクから着想を得ているんだけど、音楽はライフスタイルそのものに影響を与えてくれたんだ。ギターを弾くのは大好きだし、音楽が全てと言ってもいいくらい。16歳の時にスノーボードコンテストの景品としてギターを勝ち取ってから弾き始めて、Bad Thingsというバンドを組んでツアーをするようになって、今では作曲が生活の一部になっている。またツアーをしたいからね。どんなタイプの音楽を聴いてどんなタイプの音楽を演奏するのかって、生き方にまで影響するから不思議だよ。

相澤 - ショーンはスノーボードをしているときはもちろん、普段もとてもファッショナブルですよね。どちらにも同じスタイルを求めているんですか?

ショーン - 若い頃はあまりそういうことは考えていなくて、両親が選んでいるものを着ていた。好きなものを探して、自分だけのスタイルを追求するようになったのは、自由に使えるお金ができた大人になってからかな。テレビや雑誌で自分が尊敬する人が何を着ているのかをチェックして、少しずつ自分のスタイルを作り上げていったんだ。元々はみんなサーフィンをやっているようなサンディエゴという町で育って、もう少しファッショナブルなロサンゼルスに引っ越し、最近は色々あってニューヨークで過ごすことが多いんだけど、こっちに来てからは色々なトレンドに敏感になった。それは東京にいる時も同じで、君たちはいつも流行の一歩先にいるよね。渋谷を歩いていると、クールなファッションをよく見かけるし。LA、NY、東京の各都市で異なるスタイル、デザインを見るんだけど、自分のコレクションをデザインするようになって、今まで以上に深く考えるようになったよ。プレッシャーもすごいけど(笑)。でも今は本当に楽しい。雪山で僕がデザインしたジャケットを着ている人を見かけると、そこに立ち止まって考えるんだ。「ショップにはあんなにたくさんのウェアが売られているのに、その中から僕のを選んでくれたんだ」って。カスタマーと自分との繋がりを感じる瞬間が大好きだし、それってスペシャルなことだよね。

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相澤 - 好きなファッションブランドやスタイルは?

ショーン - 〈バートン〉。アウターウェアブランドであり、7歳から着続けているからね!ファッションブランドだと〈サンローラン〉は大好きだよ。ドレスアップスーツがあれば、ロックテイストのレザージャケットもあって、種類が豊富。ものすごく高いけどね(笑)。あとは〈バンドオブアウトサイダーズ〉のシャツもよく着ている。世界中を旅して回るときの贅沢のひとつは、世界中の色々な場所で買い物をできることだと思っている。

相澤 - 日本のブランドで好きなものはありますか?

ショーン - 〈Nハリウッド〉。僕の身体にぴったりフィットするから、彼らが作るものはすごく好きで、日本に行った時は必ず寄っているんだ。若いスノーボーダーとしては妙な話だけど、アメリカ以外では日本が最も多く行ったことのある都市で、これまでトータルで34回かな?日本語も少しだけ話せるし、電車も一人で迷わず乗れる。子供ながらに一番行きたいところだったんだ。コンペティション、ワールドツアー、ビデオ撮影などはいつも日本が開催地に入っていて、東京に着くといつも調子が良かったし、快適だった。ちなみに家族やガールフレンドにお土産を買って行くときは渋谷の「109」。でもあの音楽はどうしても耐えられなかったね。お店ごとに違う音楽をかけているし、店に入ったらみんなに叫ばれる。「OK、OK」って言いながら入って行って、出るときもまた叫ばれるんだ(笑)。でもストリートにはすばらしいものが溢れているし、そのほとんどが当時若かった僕でも買える値段のものばかりで。しかもLAに持って帰れば、それは僕だけしか持っていないジャケットになる。そういうのを毎回楽しんだよ。ヘイ、グレッグ(・ダーキシェン)!僕が買わずに後悔したベルトは、なんてブランドのやつだっけ?

グレッグ・ダーキシェン - 〈ゴローズ〉だね。あのベルトはかっこよかった。

ショーン - 買うべきだったと今だに後悔しているんだ。あそこのジュエリーは本当にかっこよかった。

これからは、音楽活動やイベントにも注力したい。

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相澤 - ファッションとは別に、今後ショーンが突き詰めたいことはありますか?

ショーン - たくさんあるよ。周りで起こっているおもしろいこと全てが、僕をインスパイアしてくれるからね。音楽もそのひとつで、さっきも話したように16歳でその虜になってから、ファッションから生活のすべてにおける僕のスタイルを形作ってくれて、ツアーをするまでになった。ミュージックフェスで演奏した時は、本当に楽しかったな。でも僕は、スポーツイベントも同じくらい好きで、最近では「AIR&STYLE」というスポーツとミュージックを融合させたイベントを主催しているんだ。過去には北京、オーストリアのインスブック、あとはロスで開催したんだけど、近いうちに日本と韓国でも開催したいと考えているところ。海外にいるライダーたちの新しい道を切り開くためにも便利だし。それは、バンドにとっても同じことが言えるよね。

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ショーン - この写真はロスで開催した時のもので、3万人も集まったんだ。ライブもあって、ビルの16階相当の高さからジャンプするビッグエアーもある。今はこの大会をやるために、一生懸命働いているようなもの(笑)。あとは最近、ローカルリゾートの「マンモスマウンテン」と「ビッグベアーマウンテン」と僕でパートナーシップを結んだんだ。特に「ビッグベアーマウンテン」は僕が育った山だから、ホームに戻ってそこをサポートできるのがうれしい。あと、来年はもっと練習して、次のオリンピックに出られるようにがんばろうと思う。音楽にイベント、スノーボード。やることがたくさんあるな(笑)。

相澤 - そういった活動の中で、どうやって若手を支援していきたいですか?

ショーン - 僕はただ、自分自身を投影してやっているんだ。誰かに提供することだけを考えてうまくやるのは難しいよ。自分にとって意味があることをした時は、大体うまくいく。「AIR&STYLE」だって子供の頃からの夢で、大好きなスポーツと音楽をミックスした結果生まれたものだしね。こういった僕が個人的にインスパイアされた事柄を通して、次世代の子供たちに、がんばれば自分の好きなことができるということを見せたいんだ。自分がアスリートだからミュージシャンにはなれないとか、映画に出演できないとかは関係ない。何でもいいから自分が本当にやりたいことに追求する。情熱さえ持っていれば、どんなジャンルにも応用できるはずさ。きっと僕が行っていることを全て教えたら、みんな笑うと思うよ。イージーな感じに聞こえないといいけど、夢を追いかけてほしい。パッションをもって、全力でぶつかることが大切。でもヘルメットはちゃんと付けてね(笑)

相澤 - 〈バートン〉の中で今後ショーンが作ってみたいウェアがあれば教えてください。

ショーン - 現在は「ターゲット(アメリカの大手百貨店チェーン)」のお店にあるボーイズクロージングラインを手掛けていて、ウェアにシューズ、ベルト、ウォレットも揃うとても大きなコレクションなんだ。その年齢層は魅力的だし、僕自身それくらいが今は妥当なんだけど、自分と同じ歳の人たちに向けたメンズウェアをやりたい。だから最近は、ある人とのコレクションとかコラボレーションのアイデアを追求しているところなんだ。楽しみにしててね。

相澤 - ありがとうございました。

ショーン - ドウイタシマシテ。

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プロフィール
1986年9月3日生まれの29歳。6歳からスノーボードを始め、翌年には早くもアマチュア大会に出場する。13歳からは〈バートン〉がスポンサーとなり、多くの国際大会を制覇。これまで2つのオリンピック金メダルを獲得した、世界一の人気と実力を持つスノーボーダー。

BURTON
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