—10代の頃から〈ディッキーズ〉と慣れ親しんできた渡辺さんから見て、昔と現代でブランドに変化は感じられますか?
渡辺:良い意味でなにも変っていないです。いつまでもブレずに芯を通しているのがすごく格好良いと思います。「874」という永遠の定番のようなものが軸としてあるからこそ、ストレッチ性のある細身のワークパンツや、ファッション性に特化したフラワープリントのショーツなんかをリリースしたりと、新しいアプローチができるのではないかと。
—ストレッチ性のあるナローパンツ「WD5882」を筆頭に、新しい品番のアイテムをご覧になられてどんなことを感じましたか?
渡辺:分かりやすいアイテムを作っていて良いと思います。昔、「ストレッチのワークパンツがあったらいいな」なんて思ったこともあったので、特に「WD5882」は優れたアイテムなんじゃないかと。生地もストレッチで伸びっぱなしにならないような、タフな印象がありますし。あとは、ピンクやイエローの鮮やかなカラーリングのショーツありますよね?
—「WD42283」の日本別注カラーのものですね。
渡辺:あれも普段ワークウェアにはないようなカラーリングを採用していて面白い。それぞれのアイテムに「ワークウェア」という根本があり、そこからファッションへ取り入れやすい要素をデザインとして注入する、というアプローチをしているので安心感があります。そもそもの「ワークウェア」という本質が外れてしまうと、まったく別ものになってしまうので。
—本来の「ワークウェア」という基盤が大事だと。
渡辺:そこが〈ディッキーズ〉というブランドに憧れを抱いた理由ですから。昔の「874」のフラッシャーに、アメリカの労働者の写真が載っていたのを知っていますか? あれこそ、〈ディッキーズ〉の持つタフで男らしいワークウェア・ブランドとしてのイメージだと思うんです。そういったイメージを保ちながらファッションとして派生していくやり方を今後も貫いて欲しい。「ワーク」をファッションに落とし込むから格好良いんだと僕は思うんです。
—ファッション性を追求したものを着てお洒落になるのは当たり前。そうでないものを着て、コーディネートを如何に魅力的にするか? というのも、ひとつのファッションの楽しみ方であるということですね。
渡辺:そうですね
—では最後に、長年連れ添った〈ディッキーズ〉というブランドは、渡辺さんにとってどんな存在なのか教えてください。
渡辺:自分を支えてくれる付き合いの長い友達みたいな感じです。必ずワードローブの中にあって、僕にとってなくてはならないもの。こういうブランドに会えて幸運だったと思います。本当に〈ディッキーズ〉が好きなんだなって思われるかもしれないけど、実際に大好きなんです。これからも一緒に頑張っていけたらと思っています。
渡辺真史 / 〈ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ〉ディレクター
モデルとしてのキャリアをスタートし、後に渡英。2004年に自身のブランド〈ベドウィン〉をスタートさせる。2007年にブランド名を〈ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ〉に改名する。現在、同ブランドディレクターおよび、〈DLX〉代表を務める。