Number 9
六本木 リラ・ダーラナ

8月はザリガニでお祭りの季節。

ザリガニはスウェーデン料理だけでなく、フランスやイギリスなどヨーロッパ各地でも普通に食す食材ではあるが、本来8/8に解禁され約1ヶ月間シーズンが続くと言うスウェーデンのザリガニが、見た目的なインパクトが一番ではという。元来酒好きな国民性のスウェーデン。夏の白夜の頃、家族や友人達と集まり、"アクアビット"("生命の水"の意。アルコール度数約40%)をクイクイ飲みながら、ザリガニを食すのが正しい楽しみ方だ。

六本木は芋洗坂を降りきる手前、厳密には最初に西荻窪でオープンしてから30年弱、この場所に移ってきて約20年の北欧家庭料理レストラン、「リラ・ダーラナ」。最初は大使館の方の紹介で存在を知った。小さな(リラ)、スウェーデン人の心の故郷"ダーラナ"地方の名を背負うかわいいお店は、もう一軒赤坂にあるスウェーデン料理店ストックホルムが日本食に置き換えたとしておせち料理を出していることを考えると、都内唯一のレストランだ。〈IKEA〉が日本進出してから倍増したのではという在日スウェーデン人達が来ては、当り前のように自家製にしんの酢漬けなど、いまや本国でも面倒臭くて出来合いで済ます人が増えている料理を食して帰って行く。たまに欧米人に日本の禅や伝統芸能に日本人よりはまり込む人がいるような感覚か、丁寧に、オリジナルに敬意を払いながら作られた一品一品が心に響く。ふかしたじゃがいもとサワークリームなど、いたってシンプルな組み合わせに心満たされる感覚が、北欧の田舎=家庭料理の神髄な気もする。

北欧料理は特徴として、味付けに香草"ディル"を多用する。ともすれば泥臭さもあるかもしれないザリガニも、ディルの香りで臭みは完全に消え、それどころか腹の部分から吸い出す身汁までもが美味く、アクアビットが自然と進む。白夜の演出まではさすがに無理でも、現地まで行って研究された内装と家庭料理で、スウェーデンの故郷の心を感じたい。

六本木 リラ・ダーラナ
住所:東京都港区六本木5-9-19 パールビル 1F
TEL:03-3478-4690
営業時間:12:00〜15:00、18:00〜23:00
定休日:日曜日・祝日







オーナー・シェフの跡を継いでもう14年間務める遠藤さん。
8月のザリガニ祭りで出されるフルコースメニュー。
ザリガニの身は小振りだけど、味は格別。
今日出なかったが、スウェーデンもチーズはもちろん大好物。これはチーズパイ。
今日のにしんは酢漬け、マスタード漬け、トマトとチリのソース漬けの3種。
店長以外女性スタッフで固められた厨房は、なんとも家庭的な感じ。
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで、世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
惨憺たる結果に終わったプロテスト初挑戦に懲りず、今もトレーニング継続中の活性家。同時にマイアミ、ベネチアと出張が続く日々はmadfoot.jpでのブログ"独壇場"にて報告中。