Number 17
青山 エル・カステリャーノ

カステリア地方の食の教え。

マスターのビセンテさん曰く、スペインには"遠慮"の言葉がない。
「エンリョするとソンするよ(笑)」
スペインと日本の文化の違いはさておき、試食後残った一枚のイベリコハムや腸詰めの最後の一切れを目の前にした僕等の、美味しいものをなるべくたくさん食べたい気持ちに、言葉が響く。

自分が最初に「エル・カステリャーノ」のことを知ったのは、もう何年前だったか、「PEN」という雑誌の表紙をビセンテさんが飾ってから。よくよく聞けば、店のオープンは1977年、32年前にまで遡る。今でこそ賑やかな、青山は子供の城の斜め向かいに場所を選んだのは本当に偶然、辺りには当時何もなかったが、歩いていて、渋谷と表参道を繋ぐ大通り沿いだからどうにかなるだろうと、決断したという。スペイン料理店自体が当時の日本には無く、競争相手のいないところで、ビジネス・チャンスにかけてみよう。パエリヤとガスパッチョだけじゃない、スペインの家庭料理を伝えよう。元々貧しい家庭に育ち、「自分の食を確保するため」という、至極真っ当な理由でこの道に入ったビセンテさんの言葉と味には、素直に強い説得力がある。

75年の初来日時、道にゴミ箱が見えないのにゴミが道に落ちていない日本の清潔さに驚いた。日本人には、スペイン人に溢れる情熱が足りないように思えてそれは双方の料理の特色としても出ているけれど、同時に素材の味を大切にする姿勢に、共通点も見出した。店名は「カステリア地方の人」の意で、それは自身の出身地に誇りを持って土地の味を大切にするスペイン人気質の王道的センスだけれど、地域地域の味を大切にする気質はここ日本にも強くある。

「レアル・マドリード」の面々など著名なサッカー選手達も来日の際はお店に訪れ、同時に日本人スペイン料理シェフ達を独立するまでに育て上げる。
「モノゴトは、知ってるから冒険するわけじゃナイ。冒険してから知るんだヨ」
生きるパッションを、食を通して補充しよう。


青山 エル・カステリャーノ
住所:東京都渋谷区渋谷2-9-12
電話番号:03-3407-7197
営業時間:18:00〜23:00
定休日:日曜日







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看板には、郷土のスペイン人気質が溢れる。
店内はビセンテさんが壁に描いた一言を皮切りに、メッセージがびっしり。
ビセンテさん直々に自慢の生ハムを切り分けてくれた。
色に油の光に味わい深さと、普通のハムとの違いは歴然。
スペイン産の豚の腸詰め。ダークホース的美味さに舌鼓。
ラマンチャ地方のうさぎのシチュー。うさぎはスペインの定番食材。
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで、世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
かつてない程文章を書き続ける日々のため、体験したことのない極力家から出ない生活。その地味さが如実にブログmadfoot.jp「独壇場」に反映されてますが、いつ頃解放されるかな。