Number 18
中井 権八

伝説の漫画のアイディアの源泉。

西武新宿線に乗って高田馬場駅から2駅。中井駅の改札を出て、踏切を超えた辺りの趣き残る一角に、「権八」はある。漫画好きの自分は、どうしても店に入る前から、ワクワクしてしまう。取材に、開口一番「なんだか忙しいな〜、テレビも去年から10何回出てるし」と、笑いながら、マスターの関澤さん。昨年8月、生前「権八」の常連であった赤塚不二夫先生が亡くなり、所縁の地への取材が急増するのも確かに解る現象だ。我々のような小さなメディアをTV、週刊誌等他の大きなメディアと分け隔てなく、心地よく迎え入れてくださったことに、心より感謝。

元々魚屋さんであったお父上の影響下、お店のオープン前から、赤塚先生と呑み仲間であったお兄様を通じ、関澤さんと先生の関係は築かれていた。痛飲に起因して、若くして亡くなったお兄様が、その関係を護ってきてくださったのだろうか。いつも、下の名が"よしお"のマスターを赤塚先生が「ねーねー、よっちゃん」と呼ぶところから始まったという、笑いの絶えない世間話。

「先生は朝夜関係なく、起きた時が朝だったからね(笑)、休日はよく一緒にいた。先生の実家も、タコの八ちゃんの葬式も一緒に行ったよ」。
何度もマスターのセリフが先生の漫画で使われたことからも、関係の深さが伺い知れる。お話をしてくださりながら、サラサラっとオーダーを用意してくださるマスターの姿に、先生が心を預けたマスターであると同時に、頼もしい呑み仲間であった関澤さんの腕前を垣間見た。「"権八"って小泉首相がブッシュ大統領と行った同名の店もあるだろう?『そこですか?』なんてふざけた電話もたまにあって『そうですよ』って言ってやるの(笑)」。

美味しい魚達と定番の居酒屋メニューの合間に潜む、自ら釣人であり心からのお酒好きだからこそ編み出した、幾つかの珍しいおつまみ。「自分で食べたいから作ってて、お客のためじゃないって常連達に怒られるんだよ(笑)」。

昔は、仕事後寝ずに釣りにもよく行った。天下一品の遊び人達と人生を楽しんできたマスターが自ら食べたいものを作れば、僕等にとって、それがありがたく美味しいのは、普通に頷ける。


中井 権八
住所:東京都新宿区中落合1丁目13-2
電話番号:03-3952-2898
営業時間:17:00〜24:00
定休日:木曜日








季節とともに変わり続ける豊富なメニュー。
格好つけたメニューより、さと芋焼塩等さっぱりシンプルなメニューを好んだという赤塚先生。
正直ご飯にかけて食べたかった五色納豆はたくわんの食感が肝。
20種以上スパイスが混ざったタンドリチキンも研究の賜物。
気取らず美味しいにら肉豆腐。
マスター大好きな釣りにまつわるエピソードは釣りバカ日誌のネタにも?
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで、世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
かつてない程文章を書き続ける日々のため、体験したことのない極力家から出ない生活。その地味さがブログmadfoot.jp「独壇場」に反映されてますが、いつ頃解放されるか。