Number 22
横浜中華街 天龍菜館

横浜中華街最濃店

味の程度は別にして、キューバでも中華街を発見し、その民族の逞しさに感心したのを思い出す。しかし、NYをはじめとした世界各国の、中華街に対する人々の認識は「安くて美味い」であろうが、日本の横浜中華街は入口からして高級感溢れる店も多く、たとえそうでなくとも人気店はいつも長蛇の列であったり、何にしても敷居の高さを感じてしまうことが多い。味、雰囲気ともに、どうしても中華街に期待する空気感を醸し出す店はないかと、インターネット検索をした結果、1軒の店に行き着いた。広東料理「天龍菜館」。

中華街の端で、知らなかったら店舗として成立しているかも怪しい、ガレージにテーブルと椅子を置いただけの、中華街にその名に相応しい深みを与える、隠れた名店。そこは、切り盛りしているのは中国人の老人1人でキッチンは別に同じビルの3階にあり、僕等の常識は基本通じない店でもある。その老人、つまりマスターに名前を聞くと右手をあげて「この"テ"でいいですよ、テね」というテさん曰く、店がオープンしたのは10年前。「広東田舎料理の元祖なこと、羊肉を出すこと、アガリクスを出すこと、石川町駅から最寄りなこと、山下町で最小なこと」の5つで一番だと、お客さんに指摘されたことを、笑いながら教えてくださった。

テさんは15歳で親戚を頼って来日し、当初は料理店で働いていたものの、忘れもしない昭和20年5月29日の横浜大空襲で全財産を失う。それから様々な職を転々とし、物件があったことを機会に、店をオープンさせた。現在84歳のテさんは御自身でオーダーをとり、3階のキッチンで調理をし、料理を手に階段を何度も往復なさるその体力に、まず敬服する。
「私の料理はね、60年前そのままの調理法で料理してるの。私は元気でよく働く人だから、儲けも少なくていいから一人で呑気にやってます。家族はいるけどこの商売嫌いみたいでね(笑)」
どうやっても、応援したくなるわけだ。


横浜中華街 天龍菜館

住所:神奈川県横浜市中区山下町232
TEL:045-664-0179
営業時間:17:00〜23:00
定休日:なし









元々ガレージだったという店舗は、面積にして約4坪未満。
椎茸の肉詰めは旨味も手伝い、見た目のボリュームに反比例して軽々と胃袋に入る。
里芋のアヒル煮込み。味にクセのあるアヒルの好みは食べてみてから。
野菜炒めの干し肉も自家製で、お店自慢の国際金賞獲得の紹興酒ずっと呑めそう。
お客さんからの人気ナンバーワンと言っても過言でない、ティンコー(黒酢)酢豚。
揚げ鳥の梅酢は、塩風味と2つ、交互に食べて楽しむ。
雑誌、広告、CDジャケット、ドキュメンタリーなどで世界各地のディープな場所やモノ、人を中心に紹介することで有名な写真家。ダライラマ14世を写真に収めたことでも知られる。
見れない人も多かった皆既日食、引きの強さで北硫黄島海域にて、一度も雲に邪魔されることなく、完璧な状態で捕獲。それも含めた近況報告はmadfoot.jp「独壇場」で。