雑誌の中にある写真が動き出す、最先端の技術をスマートに実用。

―最新の「COLORS」では、誌面上にある記号をウェブカメラに写すと画面の中にある誌面の中身が動き出すという仕組みが非常に斬新でした。このまったく新しいシステムはどういったものなんでしょうか?

ジュリアン コシュウィッツさん(以下ジュリアン、敬称略):我々はAR(拡張現実、Augmented Reality)という新しいテクノロジーを試し続けていました。ARによって、雑誌とウェブを繋げることができ、さらに雑誌上に動画を掲載することが可能になりました。3Dでなく、フラットな動画にしたのは、雑誌という媒体の特性を現実的に表現したかったから。ARはオープンソースの、誰もが使用することのできるテクノロジーであり、ずいぶん前から試されてきたものです。でも最近になりFlashに取り込まれることができるようになり、ウェブカメラ付いてさえいれば、世界中の標準的なコンピューターでARを体験できるようになりました。ARが活用されているところは、そこらかしこに存在していて、たとえば自動車の生産業界で開発中の最新モデルを3Dにしてみたり、ただそれ以上の技術的トリックを越すものは作られていませんでした。わたしたちは、ARを使って、雑誌のページ上にもう一枚のレイヤーを作ってみる、ということを考えました。雑誌がないとアクセスできない、そのページの裏に隠されたなにかをARで作ると考えたときに、やっぱりビデオだろうということになりました。それは、写真の中の人間の声を聞く事が可能になり、ページの上でスチールフォトが動き出すということです。文字ではなく、写真の中の人間が自分自身で物語を語るということ。しかし、そのためには実物の雑誌が必要になるわけです。ページという紙の上に印刷されたコード(タグ)をウェブカメラの前にかざして、初めてその隠されたレイヤーを開くことができるわけですから。なので、我々はコンテンツをウェブから紙へ、そしてまたウェブへという感じで置き換えながら、ウェブと紙を繋ぐ新たなコネクションの実現に至ったのです。

―これだけ斬新なものを作るとなるといかにも大変そうですが、製作期間はどれくらいかかりましたか?

エリック:3ヶ月ぐらいかかりました。「COLORS」は季刊誌なので3ヶ月ごとにまったく異なったアプローチや製作段階を考えなければいけません。最初の1ヶ月は、とにかくアイディアやテーマ、たくさんのニュースや画像、物語などの徹底した調査に費やします。次に、集まった情報を編集部チームが雑誌の形に近づける段階があり、最後にイタリア語、フランス語、スペイン語への翻訳と製本というプロダクション期間で完成です。

―どれくらいの人員で実装まで行ったのでしょうか?

エリック:「COLORS」の編集チーム10人の他に、このティーン特集ではFABRICAの様々な部門専門のアーティストを起用しています。ビデオ・メーカー、インタラクティブ・デザイナー、ミュージシャンやフォトグラファーなど、大演奏会のようでした。世界中から送られてきた投稿の数々をあわせると150人を越えます。

―こういった新しいシステムを使って、今後はどのような拡張を考えていますか?

エリック:次の「COLORS」のテーマは、Sea (海)で、すでに我々のウェブ プラットフォームである www.colorsmagazine.comにはたくさんの投稿が寄せられ始めているところです。次号でもまたARを使う予定でいます。でも、今回の号よりさらに進化系のものを開発中です。

―最後にこのシステムを使った新たなアイディアも言える範囲で教えて欲しいです。

ジュリアン:現在、我々は2010年の始めごろに開始される、大規模な世界的キャンペーンのプロジェクトに向け動いているところです。詳細はもちろん、随時お伝えしていきますよ!

bntn_sum03.jpg

ページの内容にリンクした形でARが動き出すので、初見の人はぶったまげること間違いなし。

bntn_sum04.jpg

ウェブカメラの中の人物画像が動いている様子が分かりますか? あくまで誌面上の写真が動くんです。

12