vol.92

デニムの新提案。G-STAR RAWの魅力とは?

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実用服をモードに昇華させた
気鋭ブランドの真髄に迫る!

90年代、ファッションシーンに突如として現れた〈G-STAR RAW〉。人の体に沿うように設計された立体的なシルエットは、デニムが進化するスピードを飛躍的に加速させた。彼らが構築したイノベイティブデニム。その歴程と深層に迫る。

Photos_Osamu Matsuo[STUH]
Text_Kyosuke Nitta

デニムの新機軸を標榜したパイオニア。

1989年、オランダのアムステルダムにブランドを設立した〈G-STAR RAW〉は、従来メジャーではなかったロゥ デニム(未加工の生デニム)を1996年に発表。深遠なるワークやミリタリーのディテールを踏襲しつつ、懐古主義に終始しない個性的なデザインを打ち出し、センセーショナルなデビューを飾った。

その後の動向を大きく左右させる立体裁断を施した3Dデニム「エルウッド(ELWOOD)」をリリースしたのは同年のこと。デザイナーを務めるピエール・モリセットの自由な発想で生まれる3Dの近未来的な実用服は、瞬く間に海を越え、デニム市場のみならず、世界中のファッションマーケットをも震撼させたのだ。

2007年に発表の場をニューヨークコレクションに移してからは、カジュアルラインとは一線を画す先鋭的なデザインを提示。素材や加工に徹底したこだわりを貫き、ロゥデニムを軸にしながらも、ワンウォッシュから ハードウォッシュまで多種多様なアプローチを披露している。近年ではデニムのみならず、フットウエアからアクセサリーまでトータルに展開。デニムに特化したラグジュアリーブランドというポジションを、ランウェイで確固たるものにした。

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「RAW MAGAZINE」という革新のテーゼ。

自社でエディトリアルチームを結成し、「RAW MAGAZINE」という季刊誌を発行しているのも特筆すべき点だ。タブロイド判でシーズン毎に発表され、内容も実に面白い。広告のキャンペーンに起用されたミューズへのインタビューやスタイリングページ、ピエール氏が語る「エルウッド(ELWOOD)」の誕生秘話。さらに、ファッションにとどまらずカルチャーまでも網羅した充実ぶり。広告キャンペーンのビジュアルディレクターを担うのは、アントン・コービン。U2やビョークを始めとしたミュージシャンのPV監督を歴任し、写真家や映画監督としても活躍の場を広げている映像界の奇才だ。彼は女優のリブ・タイラーや、ジェマ・アタートンなどを採用し、タフで独立した女性像を描いている。

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クロスオーバーするG-STARのフィロソフィー。

縦横無尽にシーンを行き来し、他産業とのコラボレーションを積極的に行うのもこのブランドを語る上で欠かせない要素の1つ。英国の自動車メーカー、〈ランドローバー(Land Rover)〉の不朽の名車、「ディフェンダー」をアレンジ。続けざまに、世界中にファンを持つアメリカの自転車メーカー、〈キャノンデール (Cannondale)〉と共同でバイクを制作した。「RAW CROSSOVER」と名付けられた異業種との共同開発によって、ファッションの垣根と常識を打ち破ったのだ。

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エレガンスとはもっぱら無縁であったワークウエアの固定観念を打ち壊し、「ストリート向けラグジュアリーデニム」という概念をシーンに根付かせた〈G-STAR RAW〉。何百年という長い歴史を耐えてきたジーンズというユーティリティウエアに、新たな可能性と方向性を見出した功績は計り知れない。次項では、今シーズン、新たにラインナップした3Dデニムを徹底解剖しよう。

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