「トレンドに左右されない"自分"を見つけてほしい」。
----ファッションについてお聞きしたいんですが、今の東京とロンドンのストリートを見て、どう感じていますか?
PS:東京の若者は、新しい潮流に敏感だね。トラディショナルな服でも、コーディネイトに斬新さがあるから面白い。ロンドンのストリートは、ヴィンテージに興味がシフトしていってるように感じるね。
----ずばり東京で気になるブランドはありますか?
PS:〈コム デ ギャルソン(COMME des GARCONS)〉は昔から好きだし、刺激的な存在だよ。〈アンダーカバー(UNDERCOVER)〉や、〈N.ハリウッド(N.HOOLYWOOD)〉もすごくいいね。あとは、〈ポール・スミス(Paul Smith)〉っていうブランドも好きだね。知ってる? (笑)
----一同爆笑
----パリコレクションでのメインラインから、〈R.ニューボールド(R.NEWBOLD)〉などのカジュアルブランドまで、様々なラインをディレクションされていますが、どのように演出を振り分けているんですか?
PS:それはもう私にも分からないなぁ(笑)。ただ、18歳から何十年も服作りに携わってきて、そこで得た経験がカタチになっているんだと思う。トラディショナル、アウトドア、ワークなど、膨大な数の引き出しがあって、音楽があって、アートがある。それらを組み合わせてコレクションを構築していってる。例えば、〈R.ニューボールド(R.NEWBOLD)〉だと、他ブランドとのコラボレーションが核にある。今季は、「FIXED MAG.」と共同で服を作ったんだ。来シーズンは〈バブアー(Barbour)〉。ここだけの話だけどね。(笑)
----雑誌とのコラボはビックリしました。フィックスドバイクはいつぐらいから興味があったんですか?
PS:自転車は11歳のときからプロを目指すほど本格的に乗っていたから大好きなんだけど、実際にMercian社製の固定ギア自転車を自分でデザインしたのは2006年だね。常に自転車モノには興味があって、そのおかげで今回「FIXED MAG.」と一緒に仕事ができたんだ。自転車に関連するカルチャーが好きな人には是非見てほしいね。
----日本でもピストが盛んなので、興味深いですね。ところで、メンズクロージングにおけるトレンドのサイクルをどう捉えていますか?
PS:トレンドはある一定の速度でループしているものだと思うよ。
----ドレスアップ、トラッド、アメカジ、アウトドアなど、東京のストリートにはスタイルが蔓延していて、今、これといった軸がないように感じます。
PS:いや、それでいいと思うんだ。トレンドを意識する前に、重要視すべきは自己分析なんだ。1980年代に日本に初めてきてビジネスを展開する時に、「あなたのブランドはDCブランドの枠に入るの?」ってジャーナリスト達がこぞって聞いてきた。僕にはその質問の意味がなんのことか分からなかった。"ジル・サンダーはミニマル"で、"ラルフ ローレンはトラディショナルでクラシック"というのはデザイナーの主張ではなく、エディットする側の言葉なんだ。僕らはそういった枠を決めてクリエイションをしているわけじゃない。どの国でも流行があるけど、消費者サイドも同様に、シーンの動向に右往左往するんじゃなく、自分に何が似合うのかを見定めてワン&オンリーのスタイルを探すことが先決。自分だけのキーワードが、必ずあるはずだからね。
「FIXED MAG.」 2008年創刊。フィックスドバイク(固定ギアのバイク)にまつわるファッションやカルチャーを紹介しているUK発のフリーマガジン。今夏の〈R.ニューボールド(R.NEWBOLD〉で、異業種のコラボレーションが実現。ポール氏私物。
1F:バッグ、時計、スモールレザー、シューズなど、小物をメインにしたセレクション。至る所に配置されたオブジェも購入可能。
2F:シーズンの提案が凝縮したフロアー。ランウェイで発表されるメンズ、レディースのウエアに加え、スーツを展開しています。
3F:存分に差し込む自然光が、作品の表情を演出するギャラリー。アーティストの詳細や予告はホームページで随時配信されます。
B1F:メンズのデニムラインの他に、併設されているブックスペースではポール氏がオススメするアートブックが販売されています。