ESSENTIALS Vol.4 “AUTHENTIC PANTS”
2016年の男子に必要なのは、ジーンズ、チノ、そしてイージーパンツである。と、半ば強引に言い切ってみましたが、ひとつひとつ撮影して気づいたのは、「名作には名作と呼ばれるだけの理由がちゃんとある!」ということ。365日のお供になるマイ・ベスト・パンツが、きっと見つかります。
- Photo_Masaki Sato
- Styling_Masaaki Ida
- Edit_Taiyo Nagashima
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2016年の男子に必要なのは、ジーンズ、チノ、そしてイージーパンツである。と、半ば強引に言い切ってみましたが、ひとつひとつ撮影して気づいたのは、「名作には名作と呼ばれるだけの理由がちゃんとある!」ということ。365日のお供になるマイ・ベスト・パンツが、きっと見つかります。
服のディテールに目を留めて、そこに魅力を感じる人にこそ、マイケル・タピア氏が手がけるデニムブランド〈エル カミーノ レアル〉のデニムパンツを推します。実直でシンプルな見かけの裏には、服の哲学がギッシリと詰め込まれています。1960年代、ジーンズは作業着としてのルーツを超え、自由でおおらかなアメリカのキャンパスライフの風景を彩っていました。アメリカン・カレッジの象徴とも言える、当時のデニムパンツの意匠をなぞってつくられたのがこの一本です。ノースカロライナ州のグリーンズボローにあるコーンミルズ社の生地を使用。(そう、あの有名なコーンミルズ・デニムです。)製造工程はすべてロサンゼルスにある家族経営の小さな工場にて行われ、アメリカ製のビンテージミシンでひとつひとつ丁寧に縫製されています。アンウォッシュゆえの硬くキメの整った質感は、生デニムの美しさと、経年変化の予感を両手に携えています。メキシコ系アメリカ人にとってのアイデンティティを象徴する〈エル カミーノ レアル〉というブランド名。その詳しい由来については、ぜひお店で試着しながら聞いてみてください。
MORE_RIDE 03-6450-2620
ジーンズの歴史だけにとどまらず、現在のカジュアルファッションの礎を築いてきた〈リーバイス®〉。ここ数年同ブランドは、アイコンロットの「リマスタリング」に力を入れています。ゼロベースで新たなモデルをリリースするのではなく、名作の歴史を受け継ぎながら現代的にアップデートする。カルチャーの変遷とともに歩んできた〈リーバイス®〉だからこそ可能な真摯なものづくりと言えるでしょう。今秋発売の 505C は、505™に通底する、カウンターカルチャーやパンクロックの匂いを漂わせるスリムストレート。ジップフライはもちろん踏襲しながら、軽くストレッチの利いた素材や、よりスリムになったシルエットなど、実に今日的なアレンジが施されています。今回はスカイブルーのカラーが美しい「TOMMY」をリコメンド。有名なロック・ミュージシャンに由来するモデル名に着目してみると、足を通すのが一層楽しくなるかもしれません。
LEV STRAUSS JAPAN 0120-099-501
簡素化することがデザインになる。その成功例と言うべき一本です。デニムパンツの大きな特徴である「耳」を省き、筒縫いの構造で仕立てたアナトミカの定番モデル「618 ORIGINAL」。アメリカ海軍のパンツに用いられるシームレス構造をジーンズに適用したらどうなるか?という発想が元になり生み出されたデニムパンツです。本国のパリでも2008年頃から販売し、ロングセラーを続けている定番モデル。黄金分割比からとったという618の数字が象徴するように、実に美しいフィットとシルエットを誇ります。ミリ単位でサイズ調整を行う、同ブランドの矜持を体現していると言えるでしょう。生地には特別な硬仕上げを施した左織のデニムを使用。左織のデニムは縦落ちが出やすく、よりヴィンテージライクなムードをまといます。モダンでありながら、歴史が積み重ねてきたデニムの魅力をしっかりと踏襲する。同ブランドのクラシックで上品なものづくりを体現する一本と言えるでしょう。
ANATOMICA TOKYO 03-5823-6186
〈ツキ〉の魅力は、カテゴライズされないニュートラルで真摯なプロダクトメイキングにあります。ブランドとしての運営もまさしくインデペンデント。職人技のごとく寡黙に良いパンツを作り続けています。今回ご紹介するのは、同ブランドの定番である「TYPE 3」と呼ばれるモデル。フランス海軍のマリンパンツを踏襲した一本で、一見するとインパクトのあるフロントボタンが目につきますが、実際に着用するとミニマルで上品な印象にガラリと変わります。前身頃は平面的、後ろ身頃は立体的にパターンが構築されているため、ヒップ部分に立体的でややボリュームのあるシルエットに。ヘビーオンスのデニムは光沢感のあるアンウォッシュタイプで、シックな雰囲気を漂わせます。カジュアルパンツとして、絶妙なバランスで成立する一本。ぜひ一度穿いていただきたいパンツです。
FIFTH General Store 03-6303-0465
日本には珍しい、デニム専門のブランド〈スタビライザー ジーンズ〉。デザイナーの矢實氏はパタンナーとしても多方面で活躍中で、そんな彼が技術とこだわりを注ぎ込んでつくる国産デニムパンツは、普遍的なアイテムゆえに美しいパターンが際立ちます。13.5ozのインディゴデニムに対し、0.5oz軽い13ozで製作しているブラックデニム。穿き始めは大差ありませんが、着用を繰り返すことで柔らかい履き心地になっていきます。横糸にチャコールの糸を使用することで、適度な重さが残る理想的な黒っぷり。糊付き未洗いのまま着用を繰り返すと、ブラックデニムには珍しくくっきりとしたアタリが浮かび上がり、デニムを穿く楽しみをしっかりと味わうことができます。人気品番である「0-12」はベーシックなストレートラインを膝から少しだけ絞ったタイトテーパードシルエット。ビタッと細く、それでいて無骨。この塩梅は、なかなか他では見つかりません。
乱痴気CENTRAAAAAL 03-5766-8415
厚く、重く、そしてしっとりと起毛したコットン生地は、イギリスのイースト・ランカシャーに位置する繊維工場にて織られたもの。〈S.E.H ケリー〉のウェアに使用されるテキスタイルを数多く引き受ける工場で、同ブランドがイギリス諸島において築いている生産体制の、いわば象徴です。オール・イギリス諸島製を謳うものづくりには、コンビニエントな現代社会に逆行するパンク精神すら感じます。シンプルなコットンパンツながら、その気品は右に出るものなし。同じくイギリスはミッドランドにて150年以上続く工場で製作されたホーンボタンも、その品格の立役者です。型は定番で展開しているナローシルエットで、美しくゆるやかにテーパードがかかり、穿く人を選びません。ブラックの他に2色、ネイビーと黄褐色もラインナップ。「穿き込む」という言葉がこんなにも似合うコットンパンツは、なかなかにお目にかかれないでしょう。
MACH55 Ltd. 03-5413-5530
名作との呼び声高い〈マスター&コー〉のオフィサーパンツ。その特徴は、なんといってもざっくりとした大きめのサイズ感と、軽く柔らかい高密度チノクロス。バイオストーン洗いを施すことで柔らかくはき心地抜群に仕上がっています。チノパンツらしさとは、デイリーかつタフに穿けて、そして品良くまとまるということではないでしょうか。シーズンレスと謳うパンツは数多くあれど、軽くハリのある素材感はまさしくオールシーズン活躍できそうです。ベースとなったのは、1940年代初頭にアメリカ軍で使用されていたパンツ、通称「41カーキ」。ユーズド加工とまではいかずとも、味わい深いアタリの出方や、ズドンと太いシルエットなど、ヴィンテージの魅力を存分に感じさせます。腰裏のサスペンダーボタンや、ローラーバックのベルトなど、クラシックなディテールにも抜かりなし。雑に穿いて、いい具合に収まる。こういうパンツは重宝しますよ。
MACH5 Ltd. 03-5413-5530
「素材づくりから衣服のデザインと考える。」と掲げる〈オーラリー〉。その言葉に嘘はなく、どのアイテムも生地の生産工程に関するしっかりしたエクスキューズがあります。このモールスキンワイドパンツに関しても並々ならぬこだわりが詰め込まれています。エジプトの超長綿であるギザコットンの中でも、特に優れた上位10%を使用したフィンクスコットン。そのフィンスコットンを贅沢に用い、しっかりと打ち込んで畝を出し織り上げた高密度のモールスキン素材です。高密度でハリがありながら、やわらかく光沢を持つのは、原料と織りの良さによるもの。洗えば洗う程やわらかく風合いが増すパンツです。ドカンと太いシルエットと艶やかな素材感が相まって、存在感抜群。深みのあるチョコレート・ブラウンのきれいな発色は一朝一夕で成し得る仕事ではありません。50年経った後、素晴らしいヴィンテージ・ウェアとして時代を超えて愛される様子が想像できるような逸品です。
CLIP CLOP 03-5793-8588
デイリー・ユースへのきめ細かな配慮が尽くされたアイテム。それらの集積としてのコンセプチュアルなコレクション。ファンの多さは随一。そう、ご存知〈ノンネイティブ〉です。中でもパンツが特に研ぎ澄まされているということ、ご存知でしょうか。同ブランドの定番シリーズ「DWELLER(=居住者)」の代表作でもあるタイトフィットパンツは、毎シーズン改良を重ね完成した一本。コンマ数ミリのレベルにまでこだわり抜いた独自のパターンメイキング。穿き心地と耐久性を両立する素材。屈伸動作の快適性を担保する膝裏のダーツ。手や小物の出し入れを容易にするためにS字にカーブしたフロントポケット・・・。といった具合に、そのこだわりっぷりは、文字数をどこまでもふくらませます。立ち姿は実にミニマルながら、わかる人には〈ノンネイティブ〉だと一目でわかります。日本人の体型をここまで考え抜いたパンツは、他にないと言い切ってしまいましょう。
vendor 03-6452-3072
ソフトな穿き心地とドライな質感を併せ持つ、ヴィンテージのアメリカンコットンのクオリティを求めて糸からこだわったチノクロス。言わば、チープな魅力を贅沢に追い求めた、ということになるでしょうか。カリフォルニアのサンホアキンバレーで取れた最も品質の高い綿糸をタテ糸に使用し、よこ糸にはアフリカのジンバブエコットンのナチュラルなムラ糸を使用することで、上質な風合いとラフな表情を併せ持った面白いバランスを生み出しています。渡り幅が太く裾にかけてギュッとテーパードした1タックのトラウザー型で、丈感は短め。このモダンなシルエットが同ブランドらしい仕上げです。オリジナルのジャカードマーベルトも、サイならではの品のある作り込み。大人の遊びあるスタイルにキッチリとハマる。成熟という言葉が、このパンツにはよく似合います。
マスターピースショールーム 03-5468-3931
1977年。アイビー・ファッション全盛の当時、日本製のアメリカンカジュアルブランドとして〈バーンストーマー〉は誕生しました。「アメリカらしさ」を追い求め、縫製工場やミシンを探し、近い風合いの生地を作り、日本におけるアメリカントラッドスタイルの土台を築いた同ブランド。80年代90年代においては、国産トラッドメーカーの御三家として、「パンツのバーンストーマー」と高い評価を得ました。当時、アメリカのワークパンツは主にドレス仕立てで作られていました。豊かさが導いた合理性と産業製の結実である一本のパンツ。そこには、繊細かつ豪快なものづくりの哲学が存在したと言えます。強い憧れに基づいた真摯な姿勢は国内外で高い評価を集め、ついには米国の専門店が買い付けに訪れるように。美しく、それでいてタフな穿き心地は、今なお輝きを失わないマスターピースです。
HEMT PR 03-6427-1030
〈ヤエカ〉といえば、新たな定番を生み続けているブランド。と言い切ってしまいましょう。この2way素材も〈ヤエカ〉が生んだ新定番の一つ。伸縮性があり、シワになりにくく、縦横に伸びるので「2way」。ストレスのない履き心地と、オンの日にも着られそうなシックな雰囲気が両立しており、その汎用性と快適性は毎日でも足を通したくなるほど。同素材で細め、太め、テーパードなどのシルエット違いや、リブ付き、ドローコードなどバリエーションも豊富に揃いますが、中でもこのベルトループ付きのスラックスタイプは特に上品な出で立ちです。実用だけではなく、シンプルなだけでもない。試着しただけではわからない、日常の中で気づく魅力が込められたパンツです
YAECA HOME STORE 03-6277-1371
そのオールマイティっぷりと、左膝に配されたロゴのアイコニックさから爆発的なヒットを飛ばす〈ザ・ノースフェイス〉のパンツ。定番のアルパインライトパンツもいいですが、こちらは薄手でストレッチ性のあるナイロンを採用したバーブライトパンツです。より薄手ゆえに夏場はもちろん、インナーを調節すれば真冬まで対応します。伸縮性とテーパードのかかった美しいシルエットが特長。抜群に軽やかな足運びは、無駄なデザインを極力削ぎ落とした独自のカッティングのおかげ。デイリーユースから軽めのアクティビティまでしっかりとカバーし、強目の撥水加工で多少の雨にも負けません。あらゆるストレスを忘れさせる、そんなパンツと言えるでしょう。
ザ・ノース・フェイス原宿店 03-5466-9278
都市生活へのミクロな視点にもとづいて、現代人のためのユーティリティウェアを構築する〈テアトラ〉。と、ここまでの情報だけだと機能に特化したテック・ウェアという印象を抱きがちですが、〈テアトラ〉の魅力は、テックな側面を強調するだけでなく、あくまで日常に調和する自然体なムードを両立している点にあると思います。こちらでご紹介するパンツは、「旅の荷造りをスマートに。」というコンセプトを標榜する、パッカブルシリーズのパンツ。衣服内部に配されたパッカブルポケットにすっきりと格納可能で、荷物のかさばりをおさえます。ミクロ単位で起毛したナイロン糸はまるでコットンのような肌触りながら、シルクのようなハリコシをも併せ持ちます。その特殊な糸をマイクログログラン状(糸を密に重ね合わせる織り方)の組織に織り上げることで、皺になりにくく、軽く、強いテキスタイルが完成しました。ビジネスにも耐えるシックな面構えなのに、飛行機内ではリラックスでき、長距離移動や連続使用にも耐えうるタフさを持つ。アクティブに生きる現代人にとって、この上なく魅力的なパンツです。
ROTHKO info@teatora.jp
180度開脚可能なガゼットクロッチや片手で調整できるベルトなど、〈グラミチ〉の象徴的なクライミングディテールを搭載した定番のパンツですが、その特徴はテキスタイル。4方向に伸びるストレッチ素材ゆえ、抜群に快適な穿き心地を誇ります。肌離れも良く、ジョギングや登山、自転車などアクティブなシーンでも十分に活躍し、防風撥水機能も兼ね備えているため秋冬のアクティビティにも対応。まさに、「これさえあれば安心」なパンツと言えます。裾に入ったゴムの絞りは実用的なディテール。スポーツの文脈でこういったパンツはよく見かけますが、これを〈グラミチ〉が出しているというところが嬉しい限りです。唯一の懸念は、あまりの快適性ゆえに他のパンツを敬遠しがちに・・・。といったところでしょうか。
GRAMICCI www.gramicci.jp