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1969 full version 後編 揺るぎない個性。そしてアメリカ。強烈な「個」を生み出した、1969生まれのセンパイに訊く。

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マニアックすぎて伝わらない?

中島:たぶん僕らの世代でアメリカ古着というと最初はフィフティーズなんですよね。いまでこそもっと古い時代のものが掘り起こされて、それがファッションになってきたと思うんだけど。

内田:先代がある程度「50年代がいいよ」って方向づけたんだと思いますけどね。

中島:ハワイアンやらヴィンテージやらレーヨンシャツやらって、そこがたぶん根本にある。僕は今でもその時代のほうが好きです。もっと古いものもたまにうちでも扱ってますけど。自分が入ったところがいまだにあるかな。

秋山:ぼくは50年代にいって、40年代いって、いま30年代ぐらいに入って、だんだんわかんなくなってきて、アウトドアにいって、また古着に戻ったらセブンティーズだったっていう。そんな流れですね。

内田:そっからセブンティーズいったんですか。

秋山:アウトドアでだんだん、自分がなにを見てるのかよくわかんなくなって。

(一同笑)

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秋山: でもセブンティーズ戻ったらそのころはまだ安く買えたので。もう40〜50年代は結構高くて買えなくなって。

内田: そっか。秋山さんリバースウィーブのイメージあるな。

秋山: リバースウィーブは全部持ってますね、まだ。

内田: ね!うん。

秋山: リバースウィーブだけとってます。

—そっかそっか、お店でいっぱい買ってたときの。

中島: いまもう少し若い世代のお店のオーナーさんとかって、わりと古いもののほうが好きな人たちが多かったりするけど、僕ら世代ってたぶんすごい幅が広いと思うんですよ。振り幅というか、結局どの時代にもいいものがあるってことですよね。

秋山:時代じゃなくてモノになってますよね。

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—内田さんは年代の好みってありますか?

内田: 僕も50年代のモノからスタートしました。ただ田舎者だったので、はじめて仕事でアメリカにいったときがラスベガスだったんですけど、なんか古着きてる人もいないし、ちょっと俺リーゼントっぽかったんで、すげぇ先輩たちにいじめられたんですよ。自分がいちばんアメリカらしい格好してるんじゃないかと思ってたんだけど、すごい田舎もんが来たっつって。たぶんみんな通ってるはずなんですけど。

—そのときの先輩たちってどんな格好だったんですか?

内田: 先輩たちってもう大人ですからね。自分がハタチそこらのときに40代の方たちだったので、どんな格好してたかというとゴルフウェアですね。

—なるほど。ゴルフウェアの中で内田さんはリーゼントだったと。

内田: その後は秋山さんと一緒でアウトドア通ってるんですよね。機能性ってやっぱりすごいなとおもって。パタゴニアからかな。ただ、機能性をみてたら、行き着くところがファッションじゃねぇなって古着に戻ったりして。今の流れに似てるよね。ヒートテックじゃねぇよサーマルだよみたいな。

—うんうんうん。

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内田:年代で括るのは難しいですけど、「ジャンティーク」に入ってから50年代をみると、意外に古くないんですよ。

—意外に古くないっていうのは?

内田:50年代までは、わりと今に近い。あくまで捉え方ですよ。自分の独特な捉え方でいくと、30年代の、戦争に入る前ぐらいはすごく興味ありますね。ある程度完成しつつあるんだけど、途中で戦争になっちゃってちょっと1回中断、みたいな。年数にフォーカスするとそのあたりの年代と、生まれ年あたり。67年から71-2年くらいの、その5年間はすごく好きですね。詳しくフォーカスすると、ですよ。この話するとみんなポカンですよ。出た、みたいな。

中島:いやそんなことないですよ。まさしくその通りで。戦前ね、30年代とか20年代とか変なカタチとかすごいおもしろいカタチしてるのはそういう時代のモノなので。戦争終わってからってわりとふつうのカタチになっちゃうんですよ意外と。

—いまざっくりみなさんおっしゃてるけど、ものすごい、超マニアックな話ですよね。

中島:そういうのはもうなんか、自分で言うのもあれだけど、伝わらないね。

—そうですよね、たぶんね(笑)。

中島:なんて話していいかわかんない。

—「ふつう」とかおっしゃってるけども。

内田:そう、日々接客してるとむずかしい。

中島:オレたまにね、うちのカミさんとかにも怒られるんですけど「若い子相手にそんな接客したって何にも意味がないよ」って。

—あはは!

内田:ほんとそうなの。

中島:あんたの言ってることはまったくちんぷんかんぷんでしょって。「このタグよくない?」ってなに?と。

秋山:「タグの人」って言われてましたもんね。

中島:タグなんかみてるやつ誰もいない、とか言って。いやこれタグでしょ!っていう。

—なるほどなー!

中島:このタグがついてなかったら俺はこのシャツ買わないよって。

内田:「なんかかわいい」で、それでいいんだもん。なんかかわいい。

—その辺ってどう思います?「なんかかわいい」じゃねーわ!って思ったりします?

内田:いやいやいや。

中島:まぁ伝わらないですよ。

内田:でも、ヴィンテージのデニムをレギュラーに混ぜたときに、ヴィンテージデニムを抜くか抜かないかっていう検証と一緒で、なんかかわいいってみんなヴィンテージのほうを抜くんですよ。みなさん目が肥えてますよ。

—それはそれで正解というか。

内田:変な情報はいらない。今現状でお客さんみてると、値段が一緒なら抜くんですよ。いいものっていうのはこう…

—まちがってないんだなっていう。

秋山:見極める目は持ってる。

中島:オレはもうちょっと言わせてもらうと、もう少し入ってきてもよくない?って思う。

(一同笑)

中島:ウッチーはいまデニムを例えて言ったでしょ?わかりやすいよね、デニムはね。それをシャツとか、もうちょい見てみようよっていう。ね!

秋山:せっかく買うんだったらね。

中島:そうそうそう。そういうとこかな。そうするともうすこし楽しいって思える人たちがいるとおもうんだよね。今まではGパンとかアウターぐらいだったけど、ね。

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いまも、同じ通りにいる。

内田:なんか今日、正月に親戚んち来たみたいな感じになっちゃった。兄弟が久々会ったような感覚だもんね。なんだろう。友達っていう感覚じゃないんですよね。

中島:もうそうだよねー。

内田:なんすかね。

秋山:オレ、中島さんと内田さんのことずっと先輩だと思ってました。

—そう、言ってました言ってました(笑)。

中島:なんか若くみえるんだよね秋山さん。

秋山:僕若いっていうかガキンチョだったんですよ。ふたりに比べたらほんとに。

中島:アッキーはでも、今でも若いよ?

内田:お店のコとか「秋山さんおもしろくて~」っていわれると、なんか、ちぇって思う。

(一同笑)

秋山:そんなことないです。ガキンチョなんです。

内田:それはまだ、知らないだけだ、と思って。

秋山:ほんとのところを(笑)。

内田:秋山さんとかは若い子からの情報も自然に入ってきそうだよね。

秋山:いや~。

中島:そうそう。このひとは人柄がすごくいいから。若い子たちすごいね、来るしね。アッキーアッキーって。

秋山:若い子が好きなんですよ。僕は先輩がダメで。

内田:あ~先輩苦手ね。

秋山:憧れの先輩とか、そういうのはほんとに皆無。全然ない。

中島:オレもそうかなー。これまでやっぱりさんざん上に気をつかってきたから、今もうめんどくさいもんね。

内田:上の世代、あんまり会わないから俺はけっこう新鮮よ。今日ごちそうになります!みたいなのがいいなって。すいやせん!みたいな。

中島:もうこの歳になってあんまもう気を遣いたくなくなった。さんざん気を遣ってきたから。

(一同笑)

中島:ほんとに。ここ2〜3年ですごく感じるの。俺はね。めんどくせっ!ていう(笑)。

内田:と言いつつも、やっちん上手だからね。上との接し方が。俺はいつもこう、後ろについていってさ。

中島:もちろんね、ちゃんと人間としてやりますよ(笑)。世代だよそれも。この世代でさ、ここまで生きてきてね。

内田:だいたい大家さんちゃんとしてくれんのはやっちんなの。

中島:そういう部分ではね。

—でも不思議ですね、友達というか、親戚というか、なんなんだみたいな。

内田:そうですね、友達って感覚うすいな~。同業者って感覚もほとんどないし。なんですかね。

中島:業種に関して言わしてもらったら、ウッチーごめん、今でも俺のことをそうやって友達以上みたいな風に思ってもらえるのはすごく嬉しいんだけど、でも商売の話でいうとこれはもう明らかに、うーん。

—うーん(笑)。

秋山:目黒銀座商店街を切り開いてくれた人です。

中島:と、いうことですよ。

内田:同業者ってなんかちょっと一線をおいたりすることもあるんですよ。そういう感覚はない。なんすかね。一緒に建物にいたっていうのが。

秋山:そうっすね!あれけっこう大きいんじゃないですか。

内田:なんか家帰ろうとおもったら2階で泊まっちゃったみたいなことしょっちゅうあったもんね。

—すごいいいですねそれ。

中島:それは大きいかね、やっぱりね。

秋山:あれは面白い時代でしたね。

内田:まぁ俺はよかったけど。すげー悪いなとおもいながらも、こっから動けねぇ、みたいな。

(一同笑)

中島:そんなことあったね!

—そのお三方が同じ通りでまた、ね。

内田:そうですよね、同い年だし、同じ通りでね。

—すごい通りだよなぁ。

内田:そうですよね。

中島:一種の励みにはなってますかね、やっぱり。ギスギスしたライバル観とかそういったのは全くないし。

内田:それにしても中目黒、人気エリア、か~。

—しかも女子のね。

中島:うちなんかもほんとに女の子来るようになってくれたもん。びっくりするよ。

秋山:最近は30代前半のコたちがどんどんお店出してきてるから、それでまた流れが変わってきてる。

内田:ああ、そうなんだね。

秋山:そうですね、そのぐらいが中心にありますね。

内田:秋山さんはやっぱりそういうのよく知ってるなぁ。

編集後記
秋山さん、中島さん、内田さん。お三方のお話しは尽きることなく、1969世代が持つ好きを追求するやんごとなき熱とモチベーション、僕らが見たことのないアメリカの姿。さらにはお三方の共通言語である深遠なる古着の世界、そしてお店に立ち続ける姿勢。こんなに頼もしい先輩方が、同じ目黒銀座の商店街にいてくれる心強さがただただありがたく、喜びであった今回の企画。言い出しっぺの「カリフォルニアストア」秋山さんとともに、引き続き企んでいこうと考え中です。お楽しみに!