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VOL.10 "INDEX DOMESTIC BRAND" 新たな東京ファッションの担い手が語る、 ドメスティックブランド最新事情。 1_OLD JOE

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髙木雄介 OLD JOE デザイナー
香川県出身。1979年生まれ。盟友でもあるサインペインターのNUTS ART WORKS氏と共に2008年に〈OLD JOE〉をスタート。30年代から50年代の様々なプロダクトへの造詣が深く、パタンナーであった経験を生かし、ブランド設立当初より一貫して自社での生産工程を行う。

一から手掛けることで、こだわりを存分に感じてもらえる。

—まずは、〈OLD JOE〉のブランドを始動することとなったきっかけから教えて下さい。

髙木:ご存知な人も多いかもしれませんが、サインペインターのNUTS ART WORKSと昔から親交があって、普段の会話の流れが発展して、ものつくりがスタートしたという感じですね。関わり方としては、僕が洋服をメインとした全てのプロダクトデザイン、ショップのヴィジュアルデザインなどを担当していて、NUTS ART WORKSにはグラフィックの提供などをしてもらっています。アーティストとしての活動もある一方で、一つのブランドに密接に携わる存在がいるというのは他ではあまりないとも思うので、ファッションに寄りすぎないニュートラルなスタイルとなり、そこはブランドの大きな特徴でもあると思います。

—NUTS ART WORKSさんとの出会いのきっかけはなんだったのですか?

髙木:単純に昔からの友人だったんです。仕事やブランドを始める前からお互い知っていて、今でも変わらずにパーソナルな関係でも付き合っています。

—ブランドの服作りにおいて、特に自負している強みはどんな所にありますか?

髙木:実は僕らは、普段ほとんど振り屋さん(OEMの生産工場)にはお仕事のお願いをしていないんです。今は誰でもインスタントに服作りができる時代でそれはそれで面白いけども、内政的にすべての工程を熟すブランドは少ないとは思うのですが、だからこそ、そこには僕らとしては自信を持っていますね。型紙にしても、肩傾斜の角度から身頃の裾の布の流れ方までチェックするし、ボタンなど付属の染色やアジ出し、生地制作の機場さんや手作業で仕上げる生地加工のレシピ制作などは自分自身で現場に入って、失敗を重ねながら作ってますね。全て一から手掛けているからこそ、他にはないストーリーとそのこだわりを存分に感じていただけると思っています。

—洋服へのこだわりはいつ頃から持ち始めたんですか?

髙木:とにかく昔からプロダクトが好きだったんです。それはヴィンテージの洋服はもちろん、カメラだったり、乗り物だったり、ミッドセンチュリーの家具やアノニマスなフォークアート、高価なものから安価のものまで関係なく。よく言われますけど、昔のモノづくりっていうのは、現代では再現できない部分が大きいんですよね。それでもプロダクトとして見たときの深い作り込みと美しさっていうのは、今の時代に見ても魅力的に映るんです。

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—そうしたプロダクトへの思いが今でもブランドの肝にもなっているんですね。

髙木:そうですね。あとはファブリックやマテリアルもとても大切にしています。それは僕自身がパタンナー出身というのもあるのかもしれません。ヘリテージの良いところって、服作りにかける手間暇がそのまま洋服の面構えとなって表現されることだと思うんです。例えば、100年前のフランスで実際に使用されていた生地のスワッチなども資料として持っているのですが、そうした歴史をしっかりと紐解きながら、自分たちなりの価値観を持って解釈して新しいものを作っていくことがブランドの基盤にもなっています。あくまでも再現するだけのリプロダクトにはしたくないなと思っていたので、そうした過程にあるストーリーは大切にしていきたいですね。

カテゴライズされることのないブランドイメージへの変革。

—その一方では最近の〈OLD JOE〉のルックやカタログを見ていると、以前持っていたイメージとは異なるファッション的な印象も見受けられます。それについては、なにか意図すべきブランディングがあったのですか?

髙木:そうですね。意識的に変えている部分はありますね。今がブランド8年目なのですが、最初こそヘリテージというイメージをあえて色濃く打ち出していて、当時はそうしたコンセプトのブランドがほぼなく、それだけでファッションとして成り立っていたんです。けれど世界観が定着していく中で、ブランドの意図をより伝える為には進化させていく必要があるなと感じ始めたんです。

—それはなにかきっかけがあったのですか?

髙木:ブランドのイメージってどうしてもカテゴライズされてしまいがちだと思うんですが、僕らはそうしたカテゴリーから脱却したいという思いがありました。ミリタリーもワークもテーラーメイドな要素を持って洋服を作るけれど、決してそれだけではないと。だからこそ広義的な意味でファッションとしてしっかりと見せたいなと思ったんです。

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—なるほど。進化させていく過程で具体的にはどんなことを意識されたんですか?

髙木:例えばスタイリングなんかは分かりやすいかもしれないですね。作りに関しては洋服のディテールにはこだわっているけれど、あえて引き算のあるスタイリングや見せ方を提案してモダンに見せる。そうした世界観がブランドのウェブサイトにもあるビジュアルイメージに顕著に表れているかなと思っています。

—こちらはスタイリストの長谷川昭雄さんが手掛けているんですよね?

髙木:そうなんです。ルックもお願いしているんですが、基本は長谷川さんに全てお任せしています。自分でやってしまうと良くも悪くも面白みがないかなと思ったので。良い意味でイメージを壊して欲しいなと。

—いつ頃から長谷川さんとご一緒にやられているのですか?

髙木:一昨年の春夏くらいからですね。昔から仲良くさせていただいていたこともあって、お願いしています。よく色んな人から「意外な人選ですね」と言われるんですが、そこが僕らの狙いでもありますからね。

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—現代的なアプローチも感覚として持たれているとは思うのですが、今のファッションのトレンドで意識されていることなどありますか?

髙木:そうですね。逆に意識しないことを意識していますかね。天の邪鬼のようですが(笑)。でも時代の空気感が感じられる洋服っていいなと思いますね。それはきっと僕らが追い求めていた当時のヴィンテージのように、将来的に今の洋服がそうした対象となっていくわけですからね。そう考えるとトレンドって大切だなとも思いますけどね。

—これまでにあったブランドの根本は残しながらもイメージの変革など、常に進化をしているんですね。

髙木:しっかりとしたストーリーがあって、プロダクトとして見たときにも洗練されていて、品も良い。大げさに言えばそれだけなんですよね、僕が服に求めるものは。なので、個人的な好みや気分はありますけど、国や年代、スタイルもバラバラなところからインスピレーションを受けるので、〈OLD JOE〉はジャンルレスなヘリテージと言ったらわかりやすいですかね。

—今シーズンもすでにスタートしていますが、今後の展望を聞かせてください。

髙木:2014年の12月にブランド初のフラッグシップストアをオープンさせて、少しずつお客様にも自分たちの提案が届き始めてきたなと実感しています。服作りはこれまで話した通り一貫して変わらないんですが、見せる方法に関しては、今後はエンターテインメントがあってもいいなと思っています。ランウェイショーをするわけではありませんが、展示会をして終わりだと少し寂しいので、なにか新しい形式の提案方法を今模索しています。是非楽しみにしていて欲しいですね。

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