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HYNM EYE ~フイナムの視点~ VOL.06 カルバン・クライン ウォッチのCEOが語るブランドのこと。

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編集スタッフがその時々に気になることをレポートする、「HYNM EYE ~フイナムの視点~」。第6回目は、ニューヨークを代表するブランド〈カルバン・クライン〉のウォッチライン〈カルバン・クライン ウォッチ〉にフォーカス。CEOであるラウラさんに、新作コレクションをはじめ、拠点が異なるアパレル部門とアクセサリー部門の関係性など、ざっくばらんに訊いてきました。

Photo_Kiyotaka Hamamura
Edit_Jun Nakada


—まず新作コレクションについて教えてください。

ラウラ:新しいコレクションは、〈カルバン・クライン〉のDNAをきちんと踏まえた上で、さらに一歩進めたデザインに仕上がっています。そのDNAには、シンプル・ピュア・モダンという3つの概念があり、〈カルバン・クライン ウォッチ〉では、そこにアーバン感を加えて、よりエッジの効いたモノづくりを目指しました。その最たる部分が構造です。文字盤を3層に分けて奥行きを出したり、デジタルインデックスを採用したモデルを初めて作ったり。”アーバンでモダン”というのを全面に出しつつ、単体で見たときに美しい時計として、できるだけピュアなプロダクトになるよう心がけました。そうすることが、〈カルバン・クライン〉のDNAにも繋がると思っています。

—アパレル部門はニューヨークで、時計をはじめとしたアクセサリー部門がスイス、拠点が異なる状況下で、デザイン面での関係性はどうなんでしょうか?

ラウラ:とても良好ですよ。ニューヨークの〈カルバン・クライン〉本社と強い提携を結んでいるので、密に連絡を取って情報を共有しています。デザインに関しては、毎回アクセサリーのデザインを担当しているクリエイティブディレクター、オーリック・グリムと一緒に本社を訪れて、その年のシーズンのトレンドをヒアリングし、ガイドラインを作っています。それをスイスに持ち帰ってからデザインをはじめるので、コンセプトや方向性など、〈カルバン・クライン〉の世界観を損なうことなく一貫して進行できています。

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Calvin Klein highline 各28,080 in TAX(9月発売)

—今回のコレクションに関して、ニューヨーク本社で共有した内容はどんなことですか?

ラウラ:視覚的な効果を打ち出すというのはひとつありますね。新作で言うと「ハイライン(写真上)」というモデルに顕著なのですが、全体的に構築性を持たせたデザインになっています。具体的には、文字盤を多重構造にすることで3D効果を狙ったり、簡略化した針の動きでデザインの深みや奥行を表現したこと。それがコンセプトのガイドラインに沿って形にした部分ですね。

ーアパレルの世界観をアクセサリーにもしっかり落とし込んでいるということですね。現在、高価格帯から低価格帯まで、様々な時計メーカーがある中で、〈カルバン・クラインウォッチ〉のポジショニングをどう捉えていますか?

ラウラ:とても明確でユニークな位置にいると思っています。一言で表すなら”ブリッジブランド”でしょうか。つまり、スイスメイドという確かな品質と、世界的に高い知名度を持つ〈カルバン・クライン〉のファッション性を兼ね備えているということです。事実、ファッションブランドの知名度で言うと世界85%以上を誇っていますし。これらのポジティブな要素に加えて、手に入れやすい価格帯にしているということ、この3つがしっかり定着していると思っています。ブランドを構成する上での根幹と言っても過言ではないかもしれないですね。

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—〈カルバン・クライン〉というブランドネームが良い意味で後押ししてくれていると。そもそもアクセサリー部門ができて18年。それまでもアクセサリーの展開があったわけですが、スウォッチグループと提携することで何が変わりましたか?

ラウラ:97年に〈カルバン・クライン ウォッチ〉を立ち上げて、数年後にジュエリー部門ができたのですが、いわゆるファッションブランドが初めてウォッチメーカーと提携を結んだことは、当時大きな話題になりましたね。トップのファッションブランドとトップのウォッチメーカー、つまり市場における2トップが一緒になったことを意味するわけで、そういう意味でも、18年間一切ネガティブなことはなかったと思います。むしろ、市場に出回っていく中で、ユニークなポジショニングが確立されていったのではないかと思います。高品質の美しい時計を手頃な価格帯で提供できるというのは、この2つが一緒になったということが一番大きいのではないでしょうか。

—確かにそうですね。

ラウラ:ファッションブランドとして、例えば他のブランドの時計を考えたときに、確かに見た目が良かったり、スタイルで表現したりすることはあるかもしれませんが、だからといって品質が伴うかというとそうではなかったり、いろんなバランスがあると思うんです。だからこそ、我々の出すファッションウォッチは、スタイルを完成させる最後のパズルとなるようなものにしたいと思っています。ただ高い値段を払えばいいというものでもなく、上手くバランスの取れた時計を提供していくことが重要だと考えます。もちろん、そのときにしかないものや、トレンドを意識してもっと早い回転で展開していくこともありますが、〈カルバン・クライン ウォッチ〉のコアコレクションは、そういう時代や時間を超えて、愛され続けているものとして在りたいですね。

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—ちなみに、日本だけの限定モデルを作ることはありますか?

ラウラ:答えとしてはノーになります。やはりグローバルに展開しているブランドなので。ただ、全体のコレクションを考えたときに、世界中からインスピレーションを集めて、ちゃんと精査しながら作っているので、モデルによっては、日本はもちろん、アメリカやヨーロッパなど、それぞれのマーケットに響くものが必ずあると思います。

—少し期待していた部分もあったのですが、残念です。最後に〈カルバン・クライン ウォッチ〉として、これから10年、どういう風に盛り上げていこうとお考えですか?

ラウラ:会社に関しては、健全に成長させることが第一で、これは18年前から変わらない指標です。ブランドとしては、毎シーズン、ブランドのDNAを再解釈し、加えるべきものは加えて、変えないものは変えないというスタンスは維持していきたいなと。その中で、例えばシンプルで高精度なものだったり、より挑発的で巧妙なものだったり、必要に応じてその時のシーズンやコレクションを作っていきたいと思います。ブレることなく一歩ずつちゃんと進んでいきたいですね」

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