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Inside of Gap. ギャップの中心にあるもの。

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今やアメリカを代表するブランドの一つに挙げられる〈ギャップ〉。1969年の誕生以来、成長を続けてきたこのビッグアパレルカンパニーの鍵を握る男、メンズデザインのバイスプレジデントを務めるトニー・クレトン氏が来日。リニューアルしたばかりのチノパンの名品「カーキ」の話題を中心に、大衆性を保ちながら常にフレッシュであり続ける〈ギャップ〉のクリエイティブについてインタビュー。

Photo_Kazumasa Takeuchi[STUH]
Text_Yuichiro Tsuji
Edit_Hiroshi Yamamoto

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トニー・クレトン
数々のブランドでデザインを担当したのち、2004年より〈ギャップ〉のデザイナーとなる。現在は〈ギャップ〉のメンズデザインのバイスプレジデントを務め、メンズのアパレル及びアクセサリーのデザインを担当している。

カスタマーにとっての「ベストフレンド」でありたい。

—昨今のファッション・マーケットはトレンドの回転が早くなっていると思います。そういった状況に対して、〈ギャップ〉のメンズデザイナーのバイスプレジデントとしてどんなことを考え、ブランドの舵取りを行なっていますか?

トニー:現代を生きる上で、インターネットの存在は欠かせないものになっています。それにより、世界はさまざまな情報で溢れかえっている。それがトレンドの回転を早くさせている要因のひとつだと考えています。たくさんの情報を仕入れ頭の中にインプットすることは、デザイナーとして欠かすことができない作業です。しかし、そこで仕入れた情報をフィルターにかけ、適正なものへと変換することを私は常に心掛けています。トレンドの傾向を自分なりに解釈して、素材、縫製、パターン、ディテールなどに落とし込む。いま話した“自分なりの解釈”という部分に信念を持って作業を行なうことが一番重要だと考えています。

—立場上、“自分なりの解釈”が結果として“ギャップらしさ”にも繋がると思うのですが、それは具体的にどんなものなのでしょうか?

トニー:〈ギャップ〉のアイテムはすべての人々に親和的であるべきだと考えています。概念的なことなので説明するのが難しいのですが、心を許すことができるベストフレンドのような存在でありたい。友達と一緒にいると、愉快で楽しい時間を過ごせますよね? それと同じように、〈ギャップ〉のアイテムを身に纏うことで、カスタマーの気分を高揚させ幸せにしたい。そして、時代とともに一緒に成長し合える存在になりたいんです。

—お店を拝見していても、友達の家に訪れたような親近感を感じます。

トニー:ありがとうございます。でも、ただ身近な存在でいるだけでは、退屈させてしまうかもしれない。そうさせないために、サプライズも用意するようにしているんです。

—サプライズというのは?

トニー:エッジの効いたデザイン性の強いアイテムを展開することで、お客様に心地よい刺激を与えられるようにしています。ベストフレンドであり続けるには、クラシックとモダンという2つの異なった要素を併せ持って共存していなければいけません。

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—冒頭で情報をインプットすることが欠かせないと仰っていましたが、デザイナーとして普段どんなところから情報を集め、トレンドをキャッチしているんですか?

トニー:音楽や映画、アートやストリートなど、あらゆるカルチャーから情報を吸収する事を心掛けています。私にとってはどれも大切な情報源ですね。アパレルに関しても、メンズのトレンドを注目するのはもちろんの事ですが、ウィメンズのファッションシーンも常に気にする様にしています。というのも、ウィメンズのトレンドは時代の先端を走っていると思うし、メンズファッションに与える影響も大きい。ウィメンズの傾向を大々的に取り入れるのではなく、あくまでトレンドを認識し、常に自分の感性を刺激し続けるという意味でとても効果的なことなんです。

—他にはどんなところから情報を得ていますか?

トニー:実は日本のファッションシーンからも大きな影響を受けています。どこの国の人々よりも、日本の男性の着こなしはスタイリッシュで、時代を先行している。日本に訪れるたびに、これから起こるであろう流行の兆しをみつけることができる。みんなそれぞれ自分のスタイルを持っているし、着こなしがユニーク。訪れるたびに刺激を受けています。

—今回来日して、なにか収穫はありましたか?

トニー:ちょうどいま進行中のプロジェクトがあり、それが間違ったクリエーションでないことを確信することができました。現在ウィメンズのみで展開しているエクササイズライン〈ギャップ フィット〉のメンズをローンチしようと準備を進めているところなんです。日本のストリートでは、アクティブやアスレチックといったスポーティーな要素と、それぞれのライフスタイルが密接かつ巧みに融合し、機能性とデザインを兼ね備えたスタイルを見ることができる。東京のショップでもそういった傾向が顕著に表れていました。

—日本で注目しているショップやブランドはありますか?

トニー:ビームス、ユナイテッドアローズ等の日本発のセレクトショップが好きで、いつも拝見しています。モダンで洗練されたスタイルがベースとしてあり、その上にトラッドや、カジュアル、アクティブといった、それぞれが得意とするエッセンスを加えて独自のスタイルを築きあげているところが良いですね。ブランドでは、ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン、N.ハリウッド、GYAKUSOUなんかも好きですね。日本のデザイナーたちは、クラシックなアイテムに捻りを利かせて、モダンなものへと昇華させるのが実にうまい。そういったアイデアだったり、技術にいつも驚かされています。

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