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MASUNAGA meets good thing “Made in JAPAN”がもたらした邂逅。

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世界に誇るメガネの産地・福井。

視力を補う道具として、またあるときはファッションの一部として、メガネは日々の生活の中で欠かすことのできない存在となっています。そんな私たちの日常を支えるメガネですが、世界のメガネフレーム生産量のうち約20%が日本で作られているのを知っていますか? しかも、その中の約90%は、福井県で製造されています。日本が世界に向けて発信する福井のメガネ。そこに関わるひとつの企業の社是に、こんな言葉があります。

「当社は、良いめがねをつくるものとする。出来れば利益を得たいが、やむを得なければ損をしてもよい。しかし常に良いめがねをつくることを念願する」

ものづくりに対して並大抵ならぬこだわりを感じさせるこの言葉は、福井県福井市に拠点を置く増永眼鏡株式会社の社是です。1905年に創業したこの会社の長い歴史により培われた技術と哲学が注がれたメガネは、その品質の高さから愛好家を中心に多くのファンを魅了しています。いまでこそ、ここ日本で隆盛を極めるメガネ産業ですが、その背景を紐解くには、この増永眼鏡の存在なくして語ることはできません。

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はじまりは村興しのために。

創業者である増永五左ヱ門は、1871年に足羽郡麻生津村生野(現在の福井市生野町)で生まれました。庄屋の息子として生まれた五左ヱ門は、頼もしい性格で村人から愛され、28歳で村会議員となりました。この村には主な特産物はなく、冬になると雪が降って農業もできないため、とても貧しい村だったとか。そんな村の経済状況を克服したいと思った矢先に、転機が訪れました。

日露戦争の戦火があがる1904年、大阪に出稼ぎへと出掛けていた五左ヱ門の弟・幸八が村に戻ってきたのです。彼は開口一番、五左ヱ門にメガネ作りを勧めたそう。というのも、幸八は大阪でメガネケースの製造業に携わり、これからの日本は教育が普及し文字を読む人が増えるから、メガネは生活に欠かせないものとなる、と言うのです。

それを聞いた五左ヱ門は、情報収集を行ない熟慮の末、村一番の大工である増永末吉を口説きます。そしてふたりはメガネ作りの手ほどきを受けるため、当時メガネ作りが盛んであった大阪へと向かったのです。しかし、手ほどきを受けて二十日ほど経ち、福井で本格的にメガネを作るならば、村に職人を呼ぶほうが先決であることに行き当たりました。五左ヱ門は村に帰ると、一緒にメガネ作りを手伝ってくれる若者を募集するとともに、大阪の職人・米田与八を呼び寄せ、ついに1905年6月、福井でメガネ作りをスタートさせたのです。

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受け継がれる技術。

米田は真鍮を中心とした安物専門のメガネ職人だったため、募集で集まった“増永一期生”と呼ばれる4名の弟子たちは、すぐにその技術を習得してしまったといいます。五左ヱ門は、もっと上質なメガネをつくらなくてはいけないという思いから、名工と呼ばれる豊島松太郎を村へ呼び寄せました。豊島は当時の先端技術を弟子たちに伝授し、東京や大阪で人気のあった「銀縁枠」や「赤銅枠」といったメガネの作り方を教えたそうです。

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当時の工場の様子。真摯にメガネ作りに取り組む姿勢は、いまでも受け継がれている。

こうして時間の経過とともに商品の品質はどんどん向上していきましたが、五左ヱ門たちが一番苦労したのは販路の獲得だと言われています。工場を拡張し、たくさんのメガネを作れるようになっても、良いものでないと売れない。そこで五左ヱ門は「帳場制」と呼ばれる制度を設けました。高い技術の継承を受けた増永一期生たちをそれぞれ責任者として任命し、その下に弟子たちを置くというシステム。五左ヱ門から与えられた注文を、それぞれの責任者が請け負うことで無駄がなくなったとともに、製造に関わる全ての人が仕事へ精を出し、切磋琢磨して技術を磨いたことで、商品の品質が飛躍的に伸びたと言われています。

大正時代に入ると独立し新たな工場を構える職人も出てきて、福井の眼鏡産業の礎が築かれていったのです。いまや世界にも輸出するほど大きな産業となったのは、「良いめがねを作りたい」という当時の職人たちの熱意、そして五左ヱ門の「村の生活を豊かにしたい」という情熱がなければ叶わなかったことでしょう。

ブランドのシンボル「MASUNAGA G.M.S.」

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クラシックなフォルムが特徴的な型。フロントはプラスチック、テンプルは軽くて丈夫なチタンを使用。GMS-810-59 ¥39,960(TAX in)
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角のない柔らかな印象のフォルム。こちらの素材も、フロントはプラスチック、テンプルとブリッジはチタンを採用している。GMS-812-13 ¥39,960(TAX in)

高品質のメガネを作り続ける増永眼鏡は、創業から100年以上経過した現在でも「品質第一」の姿勢は変わっていません。現在はクオリティーだけでなく、ニーズに合わせた幅広いコレクションもファンを魅了する要素のひとつ。そのラインナップは、スタンダードなアイテムはもちろん、伝統を感じるクラシックなフレームから、現代的なフォルムの逸品まで様々です。

1933年に昭和天皇への献上品としてデザインされたものを復刻したコレクション「MASUNAGA G.M.S.」。特徴のあるクラシックなフォルムが、知的で落ち着いた印象をもたらします。「G=Gozaemon」、「M=Masunaga」、「S=Spectacles」という名前の通り、ブランドのシンボルとして人気のモデルです。

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