〈ピガール〉のようなコミュニティとしての強さを感じた。(小木)
-バイヤーとして数えきれないほどの展示会に足を運んでいる小木さんが、なぜ〈Sunny C Sider〉という決して大きくもなく、歴史も浅いブランドに出向いたのでしょうか。
小木:なによりもNAOKIさんの真面目な人柄が大きいですね。どんなスタンスで服と向き合っているのか、純粋に興味があったんです。あと、ショップの雰囲気がとにかく良かったのも理由の1つ。僕が若い頃に憧れていた東京の空気感が、ショップの節々から見て取れるんですよ。ただ、お店だけ格好良くて、服はイマイチというブランドもあったりするので、きちんと服とお店のバランスを確認したかったんです。
-〈Sunny C Sider〉は立ち上げから間もないブランドです。なんでまたお店まで作ったのでしょうか?
NAOKI:ストリートファッションが低迷していくなかで、他と同じことをやっても一緒に落ちていくだけじゃないですか。だったら、たとえ経済的に苦しくても、やってやろう、逆境に立ち向かってやろうと思いました。近郊の卸先との関係もきちんと筋を通して、なんとかオープンすることができたんですけど、そっからがまた大変で。作った以上は、結果を出さなきゃいけないですからね。それでも、こうやってユナイテッドアローズとの取引きのきっかけになったのであれば、作った甲斐があったのかなと。
小木:お店があることで、コミュニティとしての強さを感じますよね。パリの〈ピガール〉の新しいコンセプトショップの前にバスケットコートが出来たじゃないですか。あれってキッズたちにとっては近寄りがたい一方で、憧れにもなる。メンズファッションにおいて、そういう感情って大事だと思うんです。〈Sunny C Sider〉のショップも、それに近い役割があるんじゃないですか。




NAOKI:確かにそうかもしれない。実際に近寄りがたいですし(笑)。若い頃、勇気を振り絞って、一歩踏み出した瞬間って思い出としてずっと残りますからね。ショップの店員さんも、話してみたら良い人だった、みたいな。かつての90年代はそんなショップばかりでしたよね。そういった態度に良し悪しもあるけど、僕らのショップを通じてその息吹をうまく伝えていけたら本望ですね。
-初めて〈Sunny C Sider〉のコレクションの見たときの感想を教えてください。
小木:手を抜いたらいけない本質的な部分と、作り込まないでいい部分、双方のバランスがとにかく良かったのが印象的でした。すべてをオリジナルで作るのではなく、ときにはボディメーカーを利用しながらも、グラフィックはインディペンデントやナイキの広告なども手がけるシージェー・ダンにお願いしていたり。あとはサーフィンやスケートボード、バイク、ヒップホップやロックといったさまざまなカルチャーのディープな部分を触れているのに、どこかに傾倒していないんですよ。〈Sunny C Sider〉というベースのうえで、すべてが成り立っているんです。
NAOKI:そういったさじ加減は気をつけるようにしています。もちろんすべてのカルチャーに対してリスペクトはあります。けれど、僕らはスケートブランドでもサーフブランドでもない。あくまでも〈Sunny C Sider〉というストリートブランド。そこありきで物づくりをすることを心がけています。
-ブランドとして強い意思があるからこそ、さまざまなカルチャーを柔軟に取り入れることができるわけですね。
NAOKI:もちろん、若い頃は僕もいろんなスタイルに流されていましたよ。だからこそコアな部分に触れることもできましたし。ただ、こうやってブランドを始めてからは、自分のスタイルは一切曲げていません。もちろん年齢や経験を重ねて、考え方が変わっていくこともあるかもしれない。ただ、ブレちゃいけない部分ってあるじゃないですか、譲れない部分というか。そこが自分で見えているからこそ、さまざまなカルチャーに踏み込むこともできるんです。