注目を集める数々のブランドのディレクターを担当し、ヴィンテージショップのオーナーの経歴も持つ「アーカイブ&スタイル」の代表、坂田真彦。トラッドやアイビーといったアメリカのメンズファッションに精通する彼に、〈レイバン(Ray-Ban®)〉のアイコンモデル「ウェイファーラー」のオプティカルについて語ってもらった。
Photo_Tohru Yuasa
Text_Takano Fujii
ーまずは「ウェイファーラー」との出会いを教えてください。
坂田:そもそもサングラスを意識したのは小学校のときで、時代的にはツッパリ全盛でした。そのせいか、サングラスには不良のイメージが強かったんです。でも、1980年代に入って、日本人なら佐野元春や浜田省吾といったアーティストがサングラスを掛け始め、ボブ・ディランやジョン・F・ケネディが「ウェイファーラー」を愛用していたことを知り、サングラスに対する認識が変わりました。それまで、“サングラス=不良のアイテム” だったのが、ビートニクのようなメッセージを持っている、インテリジェントな人たちが纏うアイテムだと思うようになったんです。
ー音楽やカルチャーから「ウェイファーラー」に興味を持ったんですね。
坂田:そうですね。初めて購入したのは黒の「ウェイファーラー」で、フロントがブルーに切り替わっているタイプです。いま、愛用しているのは’80年代のヴィンテージ。ほかに「ウェイファーラーⅡ」というひと周りレンズの大きなヴィンテージも持っています。
写真左は、坂田さんの私物のヴィンテージの「ウェイファーラー」。
ー現行の「ウェイファーラー」と比べてどうですか?
坂田:これはヴィンテージ全般に言えることですが、僕はいまのものと昔のものを比べて「ここが違う」「ここが優れている」と、主張するのは好きじゃないんです。それよりも、「ウェイファーラー」なら、’50年代からあって、時代が変わりながらも現代にフィットしながらベストセラーであり続けている。それは完成されたデザインであったり、時代のアイコンが愛用していたりと、いろいろな理由があって脈々と続いてきたと思う。そういう支持され続けたところに興味があります。
ーつまり、〈レイバン〉というブランドの背景や歴史に興味があるんですね。では、実際に「ウェイファーラー」のオプティカルを掛けてもらえますか。
坂田:黒がいちばんオーソドックスでいいですね。僕はベタな日本人顔で鼻もそれほど高くないので、ノーズパッドのフィット感がいいのが嬉しいです。僕の持っているヴィンテージのサングラスはパッドが浅いので、それに比べると鼻にすんなりフィットしてズレにくい。
ー〈レイバン〉の品番の最後についている “F” は「フルフィットモデル」の意味で、このモデルは日本人が掛けやすいよう微妙に仕様を変更しています。海外旅行などで「ウェイファーラー」のサングラスを買ったのはいいけど、顔に合わないから、結局、あまり掛けていないという話はよく聞きますね。
坂田:そうでしょうね。洋服にもそういうところがありますが、我々アジア人と欧米人の体系や骨格は根本的に違いますから。でも、たとえ日本人向けの仕様になっていても、一目で「ウェイファーラー」と分かるのがいいですね。ヴィンテージに比べるとフォルムが少しシャープなイメージですが、その方がいまの時代に合っているのかもしれません。なにより、“流行ものじゃないスタンダードなものを身につける” のは素敵なことです。流行を超越したスタイルだから、たとえトレンドが変わっても関係ない。完成されたデザインを継承されているところに安心感を感じます。
ーでは、「ウェイファーラー」のオプティカルはどんな人にオススメでしょうか?
坂田:黒ぶちメガネの入門編に最適だと思います。例えば、いろいろなボタンダウンのシャツがあって何を買っていいか分からない人がいたときに、まず最初に “定番のブルックス ブラザーズで日本人だからスリムフィットをおすすめする” のと同じです。
RX5121F ¥22,000+TAX(Each Price)
ースタンダードなデザインで存在感も強いから、アイウェアビギナーでも飾らずに自分らしさを演出できそうですね。ちなみに、どんな服装にコーディネートするのがいいと思いますか?
坂田:Tシャツやジーンズ、ショーツなど、基本的にはなんでも合うと思いますが、いまはオーバーサイズのゆるい服が流行しているので、あえてシャープな感じの服を合わせるのがいいかな。最近、再びいいなと思っているのが、今日着ているジャケットのディアスキンとか、あとはスエードとか。’60年代後半から’70年代のファッションが復活している背景があるし、自分が「ウェイファーラーが気になっていた時代」と同じ時代の洋服に合わせるのが面白いと思います。
ー最後にご自身のヴィンテージとオプティカルを比べた感想をお願いします。
坂田:スタイルとしては変わっていないから、むしろ古いものを買わなくてもいいのかな(笑)。
坂田真彦
ファッションディレクター。1970年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所を卒業後、いくつかのコレクションブランドを渡り歩き、フリーランスのデザイナーとして活動を開始。2004年にデザインスタジオ「アーカイブ&スタイル」を設立。デザイン活動のほか、’06年から’13年まで青山でヴィンテージを扱う古着店を展開。近年は「タケオキクチ」のディレクションに参加。